4 / 34
第4話 異能バトル『スキル』
しおりを挟む「お二人は今どうしているのですか?」
「施設に入って治療中だ。長年の薬が体に染み込んでいるからね。簡単には体から抜けないみたいだ」
「そうですか……」
「カレン、今まですまなかった」
兄様は頭を深々と下げた。
「助け出してくれた時に謝罪は受け入れたわ。それにもう説明は要らないわ。ほとんどキャサリン様が説明してくれたもの」
兄様に前世の記憶の話はしていない。
と言うかどう説明したらいいのかわからないもの。
オスカー殿下がわたしの息子のミハインだったなんて……
彼は前世の記憶がある人をはっきり把握していた。わたしなんてあの場にいなければまだ思い出すこともなかっただろう。ただ王都はあまり居たくない場所で、飛び降りる夢はいつも見る悪夢でしかなかったはず……
頭の中はぐるぐる。考えがあっちに行ったりこっちに行ったりして、自分自身でもどうしていいのかわからない。
「俺は王太子殿下に相談していたんだ。両親の行動は異常過ぎた。さらにキャサリンの言動もおかしい。それに俺自身もキャサリンといるとカレンに対して悪感情が湧いてくる。
それで調べ始めたんだ、キャサリンの実家のことを……そしたら怪しい香油を外国から手に入れていたことがわかった」
「カレンの知らない両親の過去なんだーーー」
そう言って両親の『真実の愛』の話を語られた。
なんて馬鹿らしい話を聞かされるのだろう。そう思いながらも前世の記憶の陛下とセリーヌ様のことを思い出した。
お二人もまた『真実の愛』で結ばれていたのかもしれない。
「キャサリンは男爵家の養女なんだ。たぶん公爵家に出入りさせるために明るくて可愛らしい向上心の高い女の子を養女にしたんじゃないかと思っている」
「そう」
ーーーそんなこともうどうでもいいわ。
「ダルト男爵は大切な幼馴染を亡くしているんだ。それが父上の元婚約者なんだよ」
「それは?」
その言葉には驚いた。
ーーーあの二人は他人を不幸にしてまで結ばれていたの?
「王太子殿下に聞いたんだが両親の結婚は自殺者まで出しての結婚だったからその当時はかなり問題視されたらしい。それにその揉め事の中生まれたのが俺だったんだ。
男爵がどんな気持ちでそんなことをしたのかは今捕まえて取り調べているから後日わかると思う」
兄様は大きな溜息をついた。そして一口だけ紅茶を飲むと話を続けた。
「『魅了の香油』はあの二人にだけ効いたみたいなんだ。カレンに罪悪感を抱きながらも今更素直に娘と向き合えずにいたからつけ入りやすかったんだと思う」
「ふふっ、我が子に愛情すらかわかない親だから?産まれてきた我が子が嫌いな義母に似ているから可愛くなかったから?罪悪感を抱く?あり得ないわ」
「それは……確かにそうかもしれないが、なんとか修復しようとしてはいたと思うんだ……」
そして香油の話になり、
「その香油がこの国に出回ると困るから色々調べることになった。王太子殿下も協力してくれたんだ。カレンへの仕打ちは酷いものだったけど君が領地へ行ってくれたのでとりあえず要観察になったんだ。
それから俺は殿下の協力のもと、青い薔薇の香油について調べる事になった」
ーーー青い薔薇?
前世でも見たことがある。確か離宮でセリーヌ様が大切に育てていたわ。
「そして今年になってカレンは一年に一度だけ王都に来ていただけだったのに両親が王都の学校へ通わせると言い出した。
それは魅了されているからか、魅了が解けている時にそう思ったのかよくわからなかった。
俺はこの香油の魅了を解くための薬を探して回っていたから、屋敷にはあまり近寄らなかったんだ。
両親は長年の香油で、ほとんどキャサリンを愛して娘のように扱ってカレンを嫌っていた。
嫌っているのに会いたがり、嫌っているのにそばに置きたがる。完全に魅了されているわけではない。
キャサリンに会わない時には、カレンの写真をじっと見つめている姿を何度となく見ていたからね。だけどキャサリンに会うと、またカレンに対して憎悪が湧くようだった。
そんな二人を俺はどうすることもできなかった」
「兄様……キャサリン様の魅了の所為だけじゃないわよね?公爵夫婦はわたしが嫌いだった。そこが根底にあるから二人がわたしを嫌い疎んじた。それだけの話だと思います」
ーーー今更なのよ。
そして前世での青い薔薇の記憶も今更だわ。
あの青い薔薇はもう王城にはないのだろう。あれば王太子殿下も兄様も何か言ったはずだもの。
陛下はもしかしたら………魅了されていたの?
もう今になってはわからない。ただの憶測でしかないわ。
兄様の話は最後の方はうわの空で聞いていた。
キャサリン様のしたことはもうどうでもいい。もちろんマキナ様としては考えないといけないかもしれないけど。
それよりも……ううん、もう前世のこと。今更なのよ。
だけど、わたしはこれからどう生きたらいいのだろう。
カレンとして生きてきた。前世なんて関係ない?そうは思えない。だってずっと北の塔のこと夢で見てきたもの。この王都にいるのが嫌だったのも前世の記憶の所為だったし。
エマが心配して何度か部屋を覗いてくれた。
「心配しないで」
わたしはそう言って作り笑いで返すしかなかった。
明日の学校、セルジオとオスカー殿下に会いに行こう。
そう決心して眠れぬ夜を過ごした。
「施設に入って治療中だ。長年の薬が体に染み込んでいるからね。簡単には体から抜けないみたいだ」
「そうですか……」
「カレン、今まですまなかった」
兄様は頭を深々と下げた。
「助け出してくれた時に謝罪は受け入れたわ。それにもう説明は要らないわ。ほとんどキャサリン様が説明してくれたもの」
兄様に前世の記憶の話はしていない。
と言うかどう説明したらいいのかわからないもの。
オスカー殿下がわたしの息子のミハインだったなんて……
彼は前世の記憶がある人をはっきり把握していた。わたしなんてあの場にいなければまだ思い出すこともなかっただろう。ただ王都はあまり居たくない場所で、飛び降りる夢はいつも見る悪夢でしかなかったはず……
頭の中はぐるぐる。考えがあっちに行ったりこっちに行ったりして、自分自身でもどうしていいのかわからない。
「俺は王太子殿下に相談していたんだ。両親の行動は異常過ぎた。さらにキャサリンの言動もおかしい。それに俺自身もキャサリンといるとカレンに対して悪感情が湧いてくる。
それで調べ始めたんだ、キャサリンの実家のことを……そしたら怪しい香油を外国から手に入れていたことがわかった」
「カレンの知らない両親の過去なんだーーー」
そう言って両親の『真実の愛』の話を語られた。
なんて馬鹿らしい話を聞かされるのだろう。そう思いながらも前世の記憶の陛下とセリーヌ様のことを思い出した。
お二人もまた『真実の愛』で結ばれていたのかもしれない。
「キャサリンは男爵家の養女なんだ。たぶん公爵家に出入りさせるために明るくて可愛らしい向上心の高い女の子を養女にしたんじゃないかと思っている」
「そう」
ーーーそんなこともうどうでもいいわ。
「ダルト男爵は大切な幼馴染を亡くしているんだ。それが父上の元婚約者なんだよ」
「それは?」
その言葉には驚いた。
ーーーあの二人は他人を不幸にしてまで結ばれていたの?
「王太子殿下に聞いたんだが両親の結婚は自殺者まで出しての結婚だったからその当時はかなり問題視されたらしい。それにその揉め事の中生まれたのが俺だったんだ。
男爵がどんな気持ちでそんなことをしたのかは今捕まえて取り調べているから後日わかると思う」
兄様は大きな溜息をついた。そして一口だけ紅茶を飲むと話を続けた。
「『魅了の香油』はあの二人にだけ効いたみたいなんだ。カレンに罪悪感を抱きながらも今更素直に娘と向き合えずにいたからつけ入りやすかったんだと思う」
「ふふっ、我が子に愛情すらかわかない親だから?産まれてきた我が子が嫌いな義母に似ているから可愛くなかったから?罪悪感を抱く?あり得ないわ」
「それは……確かにそうかもしれないが、なんとか修復しようとしてはいたと思うんだ……」
そして香油の話になり、
「その香油がこの国に出回ると困るから色々調べることになった。王太子殿下も協力してくれたんだ。カレンへの仕打ちは酷いものだったけど君が領地へ行ってくれたのでとりあえず要観察になったんだ。
それから俺は殿下の協力のもと、青い薔薇の香油について調べる事になった」
ーーー青い薔薇?
前世でも見たことがある。確か離宮でセリーヌ様が大切に育てていたわ。
「そして今年になってカレンは一年に一度だけ王都に来ていただけだったのに両親が王都の学校へ通わせると言い出した。
それは魅了されているからか、魅了が解けている時にそう思ったのかよくわからなかった。
俺はこの香油の魅了を解くための薬を探して回っていたから、屋敷にはあまり近寄らなかったんだ。
両親は長年の香油で、ほとんどキャサリンを愛して娘のように扱ってカレンを嫌っていた。
嫌っているのに会いたがり、嫌っているのにそばに置きたがる。完全に魅了されているわけではない。
キャサリンに会わない時には、カレンの写真をじっと見つめている姿を何度となく見ていたからね。だけどキャサリンに会うと、またカレンに対して憎悪が湧くようだった。
そんな二人を俺はどうすることもできなかった」
「兄様……キャサリン様の魅了の所為だけじゃないわよね?公爵夫婦はわたしが嫌いだった。そこが根底にあるから二人がわたしを嫌い疎んじた。それだけの話だと思います」
ーーー今更なのよ。
そして前世での青い薔薇の記憶も今更だわ。
あの青い薔薇はもう王城にはないのだろう。あれば王太子殿下も兄様も何か言ったはずだもの。
陛下はもしかしたら………魅了されていたの?
もう今になってはわからない。ただの憶測でしかないわ。
兄様の話は最後の方はうわの空で聞いていた。
キャサリン様のしたことはもうどうでもいい。もちろんマキナ様としては考えないといけないかもしれないけど。
それよりも……ううん、もう前世のこと。今更なのよ。
だけど、わたしはこれからどう生きたらいいのだろう。
カレンとして生きてきた。前世なんて関係ない?そうは思えない。だってずっと北の塔のこと夢で見てきたもの。この王都にいるのが嫌だったのも前世の記憶の所為だったし。
エマが心配して何度か部屋を覗いてくれた。
「心配しないで」
わたしはそう言って作り笑いで返すしかなかった。
明日の学校、セルジオとオスカー殿下に会いに行こう。
そう決心して眠れぬ夜を過ごした。
10
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる