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第42話 最後の戦い
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景虎は一撃を放った。
乾坤一擲。加えて――――裂帛の気合い。
その瞬間、景虎は見た。
正宗の反応が遅れた。 不思議と正宗は笑みを浮かべているのを――――
上段からの一撃。
タイミングが遅れれば、防御が万全とならず――――防御が遅れた正宗は力負けをする。
景虎の袈裟斬りが、防御を無視して正宗を切り裂いた。
「……なぜ 今の一撃は受けれたはずでござろう」
体を切り裂かれ、鮮血が流れ落ちている。 それでも彼は立っていた。
「景虎、気づかぬか? お前はすでに俺を越えている。だから、あの一撃――――俺には受けれなかった」
だから、彼は笑っていたのだ。 弟である景虎が自身を越えていた事への喜び。だから、笑みが零れ落ちた。
「お前が有村の家を出て、何年だろうか? ただ1人、魔物を倒す旅で磨き続けた技。それは既に有馬の技――――俺の実力を越えている。だから、俺は免許皆伝を申し出たのだ」
有村の技は一子相伝。 嫡男である正宗が継ぐの正統。
ただし、優れた者がいれば――――
「兄上。拙者は有村の技を継ぐつもりは――――」
「いや、お前は自由に生きろ。 俺は今から死ぬ。お前が正当な後継者だ。 門戸を広げるのも自由。このまま有村の技を途絶えさせるのも自由だ」
死を前に立ち続けている正宗は、安堵の表情を見せている。
それから、体から力が抜け落ちていく。
「兄上!」と体を支える景虎であったが――――
「見事であった」
まるで空間を切り裂くような声。 見れば、戦いを見守っていたはずの宮本武蔵も頭を下げ、声の主を向かえていた。
異常な存在感を放つ男――――どうして、男の存在に気づかなかったのか? それが不思議なほどであった。
男は織田信長だった。
「大義であったぞ有村正宗。約束通り、有村家からダンジョン大名を任を解く。
それに流石に、ここでお主を死なすわけにはいかぬわ」
その手に持つのは宝石――――いや、魔石の部類か?
それを正宗に向けて翳す。 それから――――
「これで命の心配は無用のはず」
致命傷のはずだった傷。それが修復されていく。
(熟練の治癒士の回復魔法以上の治癒力。 傷を癒すよりも、逆回転のように傷が戻っていく)
「光秀よ。息災であるか?」
景虎は、隠し持っていた『日向守惟任』を見た。 かつて、織田信長を見た明智光秀の暴走を思い出す。
景虎の腕。機械が浸食して、光秀の意思に操られるように暴走した。
(……再び、アレが行われると思ったら、随分と大人しいな)
「……」と光秀は無言をつき通していた。 それを織田信長はどう思ったのだろう
か?
しかし、すぐに興味を光秀から景虎へと戻したようだ。
「さて、有村景虎。そなたは兄である正宗を見事に打倒した。ならば、織田家に来ぬか?」
「なんと!」と景虎は心底驚いた。
「この景虎、王殺しの魔剣『日向守惟任』の持ち主。この明智光秀ごと用いると?」
「不思議か? 俺を殺しかねぬ存在なぞ、世界には数多といるでおろう? それに、明智光秀が再び部下に戻るのも一興というもの」
続けて、織田信長は2本の指を見せた。
「禄高二千石……それで織田に来ぬか?」
「に、二千石……」
それは現在で言えば、約1億円に相当する。流石に躊躇する景虎であったが……
「身に余る光栄というべきでござろう。しかし、今の拙者は異世界のダンジョン配信者。まだ、見たい景色があります」
「うむ……」と信長は苦く笑う。
「探索者の権化のような男だな。銭や禄では動かぬか……ならば、気が変わった時、いつでも安土に来い。いつであれ、用いてやろう」
「それから、光秀!」と急に声を上げた信長。 まるで空気が震えるようであり、怒気が込められていた。
思わず、身構える景虎であったが、続いた言葉が意外なものであった。
「そなたの出奔。認めようと思う」
どこか優しさと寂したが混じった声に変わった。 これが人を魅惑するカリスマというならば、そうなのだろう。
「……」と光秀は何も答えない。 しかし、持ち主である景虎には、その感情が伝わって来た。
「我が織田信長家臣団に置いて、司令官すら勤めたお前の才。この日本に置いて、貴様こそ最強を名乗っても許されよう。 例え、人の形を留まらなくなっても――――近くに置いていたいと思っていたが――――」
「――――この光秀。甘んじて、お受けさせていただきます」
「ならば、良し!」と話しを終えようとする信長であったが、まるで気が変わったように――――
「ところで、土産話が1つ欲しくないか?」
「……はっ?」と呆ける景虎であったが……
「最後に1度、この織田信長と剣を交えて見ぬか?」
そう言って彼は剣を抜いた。
うむを言わせぬ勢いで襲いかかる。 反射的に剣を抜いて受けた景虎。
その表情は強烈な笑みが張り付いていた。
乾坤一擲。加えて――――裂帛の気合い。
その瞬間、景虎は見た。
正宗の反応が遅れた。 不思議と正宗は笑みを浮かべているのを――――
上段からの一撃。
タイミングが遅れれば、防御が万全とならず――――防御が遅れた正宗は力負けをする。
景虎の袈裟斬りが、防御を無視して正宗を切り裂いた。
「……なぜ 今の一撃は受けれたはずでござろう」
体を切り裂かれ、鮮血が流れ落ちている。 それでも彼は立っていた。
「景虎、気づかぬか? お前はすでに俺を越えている。だから、あの一撃――――俺には受けれなかった」
だから、彼は笑っていたのだ。 弟である景虎が自身を越えていた事への喜び。だから、笑みが零れ落ちた。
「お前が有村の家を出て、何年だろうか? ただ1人、魔物を倒す旅で磨き続けた技。それは既に有馬の技――――俺の実力を越えている。だから、俺は免許皆伝を申し出たのだ」
有村の技は一子相伝。 嫡男である正宗が継ぐの正統。
ただし、優れた者がいれば――――
「兄上。拙者は有村の技を継ぐつもりは――――」
「いや、お前は自由に生きろ。 俺は今から死ぬ。お前が正当な後継者だ。 門戸を広げるのも自由。このまま有村の技を途絶えさせるのも自由だ」
死を前に立ち続けている正宗は、安堵の表情を見せている。
それから、体から力が抜け落ちていく。
「兄上!」と体を支える景虎であったが――――
「見事であった」
まるで空間を切り裂くような声。 見れば、戦いを見守っていたはずの宮本武蔵も頭を下げ、声の主を向かえていた。
異常な存在感を放つ男――――どうして、男の存在に気づかなかったのか? それが不思議なほどであった。
男は織田信長だった。
「大義であったぞ有村正宗。約束通り、有村家からダンジョン大名を任を解く。
それに流石に、ここでお主を死なすわけにはいかぬわ」
その手に持つのは宝石――――いや、魔石の部類か?
それを正宗に向けて翳す。 それから――――
「これで命の心配は無用のはず」
致命傷のはずだった傷。それが修復されていく。
(熟練の治癒士の回復魔法以上の治癒力。 傷を癒すよりも、逆回転のように傷が戻っていく)
「光秀よ。息災であるか?」
景虎は、隠し持っていた『日向守惟任』を見た。 かつて、織田信長を見た明智光秀の暴走を思い出す。
景虎の腕。機械が浸食して、光秀の意思に操られるように暴走した。
(……再び、アレが行われると思ったら、随分と大人しいな)
「……」と光秀は無言をつき通していた。 それを織田信長はどう思ったのだろう
か?
しかし、すぐに興味を光秀から景虎へと戻したようだ。
「さて、有村景虎。そなたは兄である正宗を見事に打倒した。ならば、織田家に来ぬか?」
「なんと!」と景虎は心底驚いた。
「この景虎、王殺しの魔剣『日向守惟任』の持ち主。この明智光秀ごと用いると?」
「不思議か? 俺を殺しかねぬ存在なぞ、世界には数多といるでおろう? それに、明智光秀が再び部下に戻るのも一興というもの」
続けて、織田信長は2本の指を見せた。
「禄高二千石……それで織田に来ぬか?」
「に、二千石……」
それは現在で言えば、約1億円に相当する。流石に躊躇する景虎であったが……
「身に余る光栄というべきでござろう。しかし、今の拙者は異世界のダンジョン配信者。まだ、見たい景色があります」
「うむ……」と信長は苦く笑う。
「探索者の権化のような男だな。銭や禄では動かぬか……ならば、気が変わった時、いつでも安土に来い。いつであれ、用いてやろう」
「それから、光秀!」と急に声を上げた信長。 まるで空気が震えるようであり、怒気が込められていた。
思わず、身構える景虎であったが、続いた言葉が意外なものであった。
「そなたの出奔。認めようと思う」
どこか優しさと寂したが混じった声に変わった。 これが人を魅惑するカリスマというならば、そうなのだろう。
「……」と光秀は何も答えない。 しかし、持ち主である景虎には、その感情が伝わって来た。
「我が織田信長家臣団に置いて、司令官すら勤めたお前の才。この日本に置いて、貴様こそ最強を名乗っても許されよう。 例え、人の形を留まらなくなっても――――近くに置いていたいと思っていたが――――」
「――――この光秀。甘んじて、お受けさせていただきます」
「ならば、良し!」と話しを終えようとする信長であったが、まるで気が変わったように――――
「ところで、土産話が1つ欲しくないか?」
「……はっ?」と呆ける景虎であったが……
「最後に1度、この織田信長と剣を交えて見ぬか?」
そう言って彼は剣を抜いた。
うむを言わせぬ勢いで襲いかかる。 反射的に剣を抜いて受けた景虎。
その表情は強烈な笑みが張り付いていた。
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