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第38話 景虎対ドラゴン戦
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ドラゴンとは怪物である。
何を当たり前のことを――――そう思うなら、再考してもらいたい。
ドラゴンを怪物と呼んでいるは、魔物を殺す事を生業としている者たちなのだから……
(まだ、こっちを気づいていない。 地下牢に閉じ込められて、人の臭いが抜けているのか?)
魔物が持つ人間を察知する能力。それ野生の獣と同等だ。
ならば、参考にすべきは獣を狙う狩人だろう。
人間として清潔な生活すれば、山には存在しない匂いを身に纏う事になり、野生の獣――――魔物に発見されやすくなる。
加えて――――
(連戦で汚れた小刀も幸いしている。どうやら、鉄の臭いというのは魔物にとって激しい異臭と同じらしいからな)
岩影に隠れ、離れた場所にいるドラゴンを観察する。
「随分と……大きなサイズでござるな」と思わず呟きを漏らす。
以前、戦ったドラゴンは、少し大きな民家程度の巨体。
無論、通常の家よりも大きい生物と戦うのは、難易度が高い話しではあるが……
「あの大きさは、ドラゴンでも巨体に入る部類。 高さも、長さも通常の倍以上ではござらんか?」
ドラゴンは、ダンジョンにおいて最強格の魔物である。
単純に巨体の生物は強い。 その巨体にしては速い動きを見せ、あまつさえ空を飛ぶ。
全身の鱗は鎧のようで堅固。 さらに牙と爪は剣のように鋭い。
それだけで強い。 それだけでも強いにもかかわらず……ドラゴンは知能指数が高い。
知能が高いという事は、魔法が使える。 つまり、ドラゴンという魔物は――――
巨大であり、堅固であり、高い攻撃を持ちながら、人間の魔法使いと同等――――いや、それ以上の魔力を振るう。
ドラゴンこそ、最強の魔物であると言う者が多いのは、そういう理由だ。
少なからず、個体差はあるにしても……だ。
「さて、竜退治の武器として心許ない獲物。どう攻めるべきか」
不慣れな金棒を使うのは諦める。 一撃を受ければ即死の戦いで、素早さを殺す武器は選べない。
「ならば――――武器は小刀のみになるでござるな」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
ドラゴンは何も気づかない。 圧倒的な強者ゆえに油断、隙が大きい。
最も、強者の慢心が本当に油断や隙と言えるのか? そこら辺は、人によりけりではあるが……
景虎は高所から、ドラゴンの頭部に飛び乗る事に成功した。
「まずは一撃――――奇襲をかけさせてもらうでござる!」
十分な余裕をもって、足元――――頭部の鱗。その隙間を狙って、小刀を突き刺した。
「GROOOOOOOOOOOOOOO……!?!?」
奇襲を受けたドラゴンは雄たけびを上げる。 痛みによる叫びだ。
「さすがに致命傷とはいかないまでも、頭部を刺されれば、鋭い痛みは走るであろう」
痛みに暴れるドラゴンの頭部から振り落とされながらも、奇襲に成功した景虎は満足していた。
着地と同時に、ドラゴンと目が合った。明確な怒り――――ドラゴンは景虎を排除すべき敵だと認識しているのがわかる。
ドラゴンは顎を開く。 その口内には魔力が渦巻き、炎が生まれて留まっている。
「ブレスか?」とその攻撃を察した景虎は駆ける。
ドラゴンのブレスは、魔力による炎を放つ広範囲攻撃。その威力は、城すら落とす。
「受ければ焼け死ぬ。ただし、食らわなければ意味はない……でござる」
景虎の動きは疾った。 重量感のある巨大な日本刀を武器とする彼は、武器を小刀に変えた事で、駆けまわる速度は異常と言えるほどだった。
どれくらい逃げ回ったのか? ドラゴンのブレス攻撃が終わった。
(ドラゴンの魔力が尽きたか? それとも、ただ炎で燻ることを諦めたか? ……おそらく後者であろう)
ドラゴンの魔力は無尽蔵だ。
それは一瞬の時間? あるいは無限に等しい時間?
わからないが、景虎が逃げ回った時間程度で魔力切れを起こすとは思えない。
「もっとも、生物である以上は呼吸も必要であろう。炎を吐き続けて、文字通りの息切れでござろうか?」
見た目から判断は難しい。 しかし、スタミナが――――肉体的なスタミナではなく、呼吸器官によるスタミナ切れが起きたなら、動きは鈍る。
「この隙を狙わせていただく! 狙いは――――」
彼の狙いは、ドラゴンの足。 巨体が持つ機動力は、戦いにおいて脅威。
「ならば、機動力を削るのが定石でござるよ」
鱗が歪になる場所。鋭い爪の付け根を差し込むように刃物を滑らすように刺し込んでいく。
「GROORRRRRRRLLLLLL……!?!?」
ドラゴンは頑丈な生物。 生きる中で外敵の戦闘経験を少なくはない……はず。
しかし、ここまで鋭い痛みを味わった事はないだろう。ドラゴンは未知の攻撃、未知の痛みに困惑を隠せずにいた。
そこに勝機を見出した景虎は――――
「ドラゴンよ、これから拙者は激しい痛みを伴う場所――――神経が走っているであろう場所に当たりをつけて、徹底的に狙う。それが拙者の勝機でござる。ここからは地獄の痛みを与える……それが嫌なら逃げるがいいでござる」
何を当たり前のことを――――そう思うなら、再考してもらいたい。
ドラゴンを怪物と呼んでいるは、魔物を殺す事を生業としている者たちなのだから……
(まだ、こっちを気づいていない。 地下牢に閉じ込められて、人の臭いが抜けているのか?)
魔物が持つ人間を察知する能力。それ野生の獣と同等だ。
ならば、参考にすべきは獣を狙う狩人だろう。
人間として清潔な生活すれば、山には存在しない匂いを身に纏う事になり、野生の獣――――魔物に発見されやすくなる。
加えて――――
(連戦で汚れた小刀も幸いしている。どうやら、鉄の臭いというのは魔物にとって激しい異臭と同じらしいからな)
岩影に隠れ、離れた場所にいるドラゴンを観察する。
「随分と……大きなサイズでござるな」と思わず呟きを漏らす。
以前、戦ったドラゴンは、少し大きな民家程度の巨体。
無論、通常の家よりも大きい生物と戦うのは、難易度が高い話しではあるが……
「あの大きさは、ドラゴンでも巨体に入る部類。 高さも、長さも通常の倍以上ではござらんか?」
ドラゴンは、ダンジョンにおいて最強格の魔物である。
単純に巨体の生物は強い。 その巨体にしては速い動きを見せ、あまつさえ空を飛ぶ。
全身の鱗は鎧のようで堅固。 さらに牙と爪は剣のように鋭い。
それだけで強い。 それだけでも強いにもかかわらず……ドラゴンは知能指数が高い。
知能が高いという事は、魔法が使える。 つまり、ドラゴンという魔物は――――
巨大であり、堅固であり、高い攻撃を持ちながら、人間の魔法使いと同等――――いや、それ以上の魔力を振るう。
ドラゴンこそ、最強の魔物であると言う者が多いのは、そういう理由だ。
少なからず、個体差はあるにしても……だ。
「さて、竜退治の武器として心許ない獲物。どう攻めるべきか」
不慣れな金棒を使うのは諦める。 一撃を受ければ即死の戦いで、素早さを殺す武器は選べない。
「ならば――――武器は小刀のみになるでござるな」
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ドラゴンは何も気づかない。 圧倒的な強者ゆえに油断、隙が大きい。
最も、強者の慢心が本当に油断や隙と言えるのか? そこら辺は、人によりけりではあるが……
景虎は高所から、ドラゴンの頭部に飛び乗る事に成功した。
「まずは一撃――――奇襲をかけさせてもらうでござる!」
十分な余裕をもって、足元――――頭部の鱗。その隙間を狙って、小刀を突き刺した。
「GROOOOOOOOOOOOOOO……!?!?」
奇襲を受けたドラゴンは雄たけびを上げる。 痛みによる叫びだ。
「さすがに致命傷とはいかないまでも、頭部を刺されれば、鋭い痛みは走るであろう」
痛みに暴れるドラゴンの頭部から振り落とされながらも、奇襲に成功した景虎は満足していた。
着地と同時に、ドラゴンと目が合った。明確な怒り――――ドラゴンは景虎を排除すべき敵だと認識しているのがわかる。
ドラゴンは顎を開く。 その口内には魔力が渦巻き、炎が生まれて留まっている。
「ブレスか?」とその攻撃を察した景虎は駆ける。
ドラゴンのブレスは、魔力による炎を放つ広範囲攻撃。その威力は、城すら落とす。
「受ければ焼け死ぬ。ただし、食らわなければ意味はない……でござる」
景虎の動きは疾った。 重量感のある巨大な日本刀を武器とする彼は、武器を小刀に変えた事で、駆けまわる速度は異常と言えるほどだった。
どれくらい逃げ回ったのか? ドラゴンのブレス攻撃が終わった。
(ドラゴンの魔力が尽きたか? それとも、ただ炎で燻ることを諦めたか? ……おそらく後者であろう)
ドラゴンの魔力は無尽蔵だ。
それは一瞬の時間? あるいは無限に等しい時間?
わからないが、景虎が逃げ回った時間程度で魔力切れを起こすとは思えない。
「もっとも、生物である以上は呼吸も必要であろう。炎を吐き続けて、文字通りの息切れでござろうか?」
見た目から判断は難しい。 しかし、スタミナが――――肉体的なスタミナではなく、呼吸器官によるスタミナ切れが起きたなら、動きは鈍る。
「この隙を狙わせていただく! 狙いは――――」
彼の狙いは、ドラゴンの足。 巨体が持つ機動力は、戦いにおいて脅威。
「ならば、機動力を削るのが定石でござるよ」
鱗が歪になる場所。鋭い爪の付け根を差し込むように刃物を滑らすように刺し込んでいく。
「GROORRRRRRRLLLLLL……!?!?」
ドラゴンは頑丈な生物。 生きる中で外敵の戦闘経験を少なくはない……はず。
しかし、ここまで鋭い痛みを味わった事はないだろう。ドラゴンは未知の攻撃、未知の痛みに困惑を隠せずにいた。
そこに勝機を見出した景虎は――――
「ドラゴンよ、これから拙者は激しい痛みを伴う場所――――神経が走っているであろう場所に当たりをつけて、徹底的に狙う。それが拙者の勝機でござる。ここからは地獄の痛みを与える……それが嫌なら逃げるがいいでござる」
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