32 / 42
第32話 PvP坂本竜馬戦 終了
しおりを挟む
織田信長はダンジョンからの恩賞により500年生きている。
柴田勝家は、人間性を奪われて兵器として500年保管されていた。
幕末に生きた新選組は、150年以上生き続けている理由は不明。
では坂本龍馬は? 織田信長幕僚である彼が長寿を許されているのはわかる。
しかし、彼が岡田以蔵に変身したのは?
魂の融合――――死者として岡田以蔵。それを坂本竜馬に体内に封じている。
その結果、寿命を倍以上に伸ばすことに成功した。 つまり――――実験だ。
有能な人間を長く生かし、その実験観測を将軍である織田信長に還元されている。
「皮肉でござるな。彼女――――飛鳥シノを名乗った彼女。ほんの僅かに世界がズレていたら――――」
魔に飲まれて、消えた彼女。 愛する家族の死者蘇生に人生を賭けた者。
僅かな1日の付き合いであったが……悲しみ。 黙とうを贈り、閉じた瞳を開くと、戦闘に精神を切り替えた。
さて――――問題は目前の岡田以蔵だ。
「二刀流……左腕に刀。右手にモーニングスター……流石に対峙するのは初めてでござる」
景虎は上段からの一撃。 岡田以蔵は左手の刀を防御にまわす。
強烈な一撃。しかし、以蔵は技を使う。 技を使えば、剣の軌道を逸らすのは容易い。
景虎の剣は滑るように逸らされた。 この瞬間、無防備になる。
右手に握られたモーニングスターが腹部に向かって振る。
「――――っ!」と躱す。
(リーチが長い日本刀だから避けられた。しかし、今の攻防で間合いを調整された。次は修正してくるだろう。そうなれば――――)
しかし、景虎の心を乱す声が聞こえた。
「拙者を、拙者を使いなされ、景虎どの!」
「その声は『日向守惟任』――――明智光秀か!」
脳裏に浮かぶのは、あの戦いだった。 柴田勝家との戦い。
始めて使用した魔剣の威力。それは想像を絶する威力だった。
ダンジョンそのものを穿つ破壊力。 それは、王殺しの魔剣の名前に負けないものだった。
「もう二度と決闘で使う事はないでござるよ」
「そのような、ご無体な――――」という言葉を遮って、『日向守惟任』を入れているふところに手を伸ばして、奥に押し込んだ。
「ずいぶんと余裕じゃな。そいつがウワサの王殺し魔剣か?」
「あぁ、心配無用でござる。この決闘で使うことはない」
「そうかい、それは残念じゃな。それじゃ、もっと真剣に遊べや!」
岡田以蔵は間合いを潰す。 接近戦が有利なのは言うまでもない。
だが、それを阻止するように刀が振るわれた。 景虎の一撃……しかし、それは逸らされ、岡田以蔵に当たる事はなかった。
景虎は無防備。がら空きになった腹部を晒す。
「その腹、貰ったぜよ!」と彼はモーニングスターを振る。
棘のついた鉄球が、景虎の腹部に吸い込まれるように叩き込まれた。
「その命――――取ったぜよ!」
景虎の腹部に直撃する。 肉を潰して、骨を砕く一撃だ。
受けて生きてる者はいないだろう。 しかし――――
(なんじゃ、この手ごたえは――――まさか!)
「まさか! お主、さっきの動きで!」
「あぁ、ふところの『日向守惟任』を腹部に押し込んでいた……でござるよ」
先ほどのやり取り、自然と『日向守惟任』の位置を狙ってくるだろう場所に移動させたのだ。
そうやって防具として、岡田以蔵のモーニングスターを受けた。
景虎は両手を刀から離すと、岡田以蔵の襟を掴む。 今度こそ、彼の柔術が炸裂した。
景虎の投げ。ダンジョンを揺らすほどの衝撃。
岡田以蔵の体はそれ以上、動かなかった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「僕は……いや、僕と以蔵さんも負けたみたいだね」
坂本竜馬は坂本龍馬に戻っていた。
「良い戦いでござったよ」
「そうかい。そう言ってもらえると嬉しいな。さて、僕は――――」
言いかけた竜馬が止まる。 代わりに出現したのは岡田以蔵だった。
「どアホ、竜馬。お前、国に帰ったら処刑されるだろう」
「以蔵さん……勝手に決闘して負けちゃったからね。仕方がない」
坂本竜馬と岡田以蔵が交互に出現する。 その光景は異常だった。
「仕方がないがあるか! お前が死んだら、ワシも死ぬんじゃぞ!」
「あー それはごめん」
「竜馬、脱藩は初めてじゃないだろ。ここで生きてみろ」
「ここで?」
「応よ。竜じゃ、馬じゃと言われたお前が囚われてどうする。坂本竜馬は、どこまでも自由じゃから坂本竜馬なんじゃ」
「……」と竜馬は黙りこくった。 それから答えを口にしようとした瞬間だった。
奥から男の声が轟いた。
「脱藩はよくない。連れ戻しにきた」
よく通る声だった。 一体、何者か?
一同が視線を向ける先――――立っていたのは織田信長本人だった。
柴田勝家は、人間性を奪われて兵器として500年保管されていた。
幕末に生きた新選組は、150年以上生き続けている理由は不明。
では坂本龍馬は? 織田信長幕僚である彼が長寿を許されているのはわかる。
しかし、彼が岡田以蔵に変身したのは?
魂の融合――――死者として岡田以蔵。それを坂本竜馬に体内に封じている。
その結果、寿命を倍以上に伸ばすことに成功した。 つまり――――実験だ。
有能な人間を長く生かし、その実験観測を将軍である織田信長に還元されている。
「皮肉でござるな。彼女――――飛鳥シノを名乗った彼女。ほんの僅かに世界がズレていたら――――」
魔に飲まれて、消えた彼女。 愛する家族の死者蘇生に人生を賭けた者。
僅かな1日の付き合いであったが……悲しみ。 黙とうを贈り、閉じた瞳を開くと、戦闘に精神を切り替えた。
さて――――問題は目前の岡田以蔵だ。
「二刀流……左腕に刀。右手にモーニングスター……流石に対峙するのは初めてでござる」
景虎は上段からの一撃。 岡田以蔵は左手の刀を防御にまわす。
強烈な一撃。しかし、以蔵は技を使う。 技を使えば、剣の軌道を逸らすのは容易い。
景虎の剣は滑るように逸らされた。 この瞬間、無防備になる。
右手に握られたモーニングスターが腹部に向かって振る。
「――――っ!」と躱す。
(リーチが長い日本刀だから避けられた。しかし、今の攻防で間合いを調整された。次は修正してくるだろう。そうなれば――――)
しかし、景虎の心を乱す声が聞こえた。
「拙者を、拙者を使いなされ、景虎どの!」
「その声は『日向守惟任』――――明智光秀か!」
脳裏に浮かぶのは、あの戦いだった。 柴田勝家との戦い。
始めて使用した魔剣の威力。それは想像を絶する威力だった。
ダンジョンそのものを穿つ破壊力。 それは、王殺しの魔剣の名前に負けないものだった。
「もう二度と決闘で使う事はないでござるよ」
「そのような、ご無体な――――」という言葉を遮って、『日向守惟任』を入れているふところに手を伸ばして、奥に押し込んだ。
「ずいぶんと余裕じゃな。そいつがウワサの王殺し魔剣か?」
「あぁ、心配無用でござる。この決闘で使うことはない」
「そうかい、それは残念じゃな。それじゃ、もっと真剣に遊べや!」
岡田以蔵は間合いを潰す。 接近戦が有利なのは言うまでもない。
だが、それを阻止するように刀が振るわれた。 景虎の一撃……しかし、それは逸らされ、岡田以蔵に当たる事はなかった。
景虎は無防備。がら空きになった腹部を晒す。
「その腹、貰ったぜよ!」と彼はモーニングスターを振る。
棘のついた鉄球が、景虎の腹部に吸い込まれるように叩き込まれた。
「その命――――取ったぜよ!」
景虎の腹部に直撃する。 肉を潰して、骨を砕く一撃だ。
受けて生きてる者はいないだろう。 しかし――――
(なんじゃ、この手ごたえは――――まさか!)
「まさか! お主、さっきの動きで!」
「あぁ、ふところの『日向守惟任』を腹部に押し込んでいた……でござるよ」
先ほどのやり取り、自然と『日向守惟任』の位置を狙ってくるだろう場所に移動させたのだ。
そうやって防具として、岡田以蔵のモーニングスターを受けた。
景虎は両手を刀から離すと、岡田以蔵の襟を掴む。 今度こそ、彼の柔術が炸裂した。
景虎の投げ。ダンジョンを揺らすほどの衝撃。
岡田以蔵の体はそれ以上、動かなかった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「僕は……いや、僕と以蔵さんも負けたみたいだね」
坂本竜馬は坂本龍馬に戻っていた。
「良い戦いでござったよ」
「そうかい。そう言ってもらえると嬉しいな。さて、僕は――――」
言いかけた竜馬が止まる。 代わりに出現したのは岡田以蔵だった。
「どアホ、竜馬。お前、国に帰ったら処刑されるだろう」
「以蔵さん……勝手に決闘して負けちゃったからね。仕方がない」
坂本竜馬と岡田以蔵が交互に出現する。 その光景は異常だった。
「仕方がないがあるか! お前が死んだら、ワシも死ぬんじゃぞ!」
「あー それはごめん」
「竜馬、脱藩は初めてじゃないだろ。ここで生きてみろ」
「ここで?」
「応よ。竜じゃ、馬じゃと言われたお前が囚われてどうする。坂本竜馬は、どこまでも自由じゃから坂本竜馬なんじゃ」
「……」と竜馬は黙りこくった。 それから答えを口にしようとした瞬間だった。
奥から男の声が轟いた。
「脱藩はよくない。連れ戻しにきた」
よく通る声だった。 一体、何者か?
一同が視線を向ける先――――立っていたのは織田信長本人だった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
神々に天界に召喚され下界に追放された戦場カメラマンは神々に戦いを挑む。
黒ハット
ファンタジー
戦場カメラマンの北村大和は,異世界の神々の戦の戦力として神々の召喚魔法で特殊部隊の召喚に巻き込まれてしまい、天界に召喚されるが神力が弱い無能者の烙印を押され、役に立たないという理由で異世界の人間界に追放されて冒険者になる。剣と魔法の力をつけて人間を玩具のように扱う神々に戦いを挑むが果たして彼は神々に勝てるのだろうか
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
科学チートで江戸大改革! 俺は田沼意次のブレーンで現代と江戸を行ったり来たり
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第3回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
天明六年(1786年)五月一五日――
失脚の瀬戸際にあった田沼意次が祈祷を行った。
その願いが「大元帥明王」に届く。
結果、21世紀の現代に住む俺は江戸時代に召喚された。
俺は、江戸時代と現代を自由に行き来できるスキルをもらった。
その力で田沼意次の政治を助けるのが俺の役目となった。
しかも、それで得た報酬は俺のモノだ。
21世紀の科学で俺は江戸時代を変える。
いや近代の歴史を変えるのである。
2017/9/19
プロ編集者の評価を自分なりに消化して、主人公の説得力強化を狙いました。
時代選定が「地味」は、これからの展開でカバーするとしてですね。
冒頭で主人公が選ばれるのが唐突なので、その辺りつながるような話を0話プロローグで追加しました。
失敗の場合、消して元に戻します。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる