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第24話 飛鳥シノからの依頼

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「有村さまと見受けいたしましたが……」

「その通り、拙者は有村景虎でござる。それで、そなたは何者でござろうか?」

「私は――――」と西洋甲冑は紙を取り出した。

「ほう……これが名刺でござるか? なるほど、大学教授。つまりは偉い学者さまでござるな」

「その通り、名前は飛鳥シノ。 実は、君に依頼があってね」

「依頼? 依頼ならば……」

「ダメダメ、この依頼は守秘義務ってのがあるからね」

「ギルドにも秘密の依頼でござるか? 以前、拙者も闇の仕事を請け負っていたので察しは良いつもりでござる」

「実は私が所属している大学に政府からの鑑定の仕事があってね。君たちの世界から送られた魔力を凝縮した結晶体――――つまりはクリスタルの鑑定でね」

「なるほど、それは貴重品でござるな……。しかし、輸入輸出の貿易ができている事に驚いた」

「……それは、さておき」と飛鳥シノは誤魔化した。

「問題が起きた。鑑定の担当者がクリスタルを持ってダンジョンに逃げた」

「なに? あれを個人が持っても、何の意味もない物では?」

 結晶体《クリスタル》 魔力を凝縮して個体になった物。

 だから、使い方は限られている。 合戦のような膨大な人数の魔法使いが魔力を回復するため。 あるいは――――

「儀式? 本来は複数人で行う大がかりな儀式を1人で行うつもりで盗まれた?」

「えぇ」と飛鳥は頷いた。

「到底、個人が私利私欲で行ってはならない規模の儀式魔法。それを阻止する依頼をお願いしたいのです」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 景虎は飛鳥とダンジョンにいた。 廃墟になった教会のような場所。

 墓場が並んでいる。

 果して、ダンジョンで教会を作った者がいるのか? しかも、墓場まで……

 そんな疑問の残る場所だが……

 どうやら、この場所に逃げ込んだ大学教授が隠れているらしい。 

 そこで儀式を行う前に、逃げた大学教授を捕まえなければなければならない。

「さて、説明する必要はないだろうけど、これは秘密の依頼だ。できれば、政府にバレる前に穏便に済ませたい。誰にも秘密、ダンジョン配信も現金だよ」

「裏の仕事は心得ている。他言無用という事でござろう?」

「理解が早くて助かるよ。今度、うちの大学に遊びに来て欲しい。良い生徒になるよ」

「……拙者、勉強は苦手でござるので」

 そんな会話をしていると魔物が現れた。 

 幽霊のような姿。

 半透明の肉体で足はない。 顔は悪鬼羅刹のソレである。

「どうやら、魑魅魍魎の部類。 さて、刀で斬り捨てることはできるかな?」

 斬―――――

 景虎は幽霊の魔物――――レイスに斬った。

「ふむ、手ごたえはなし。しかし、斬り殺すことは可能のようでござるな」

 アッサリと倒した。

「随分と無茶をしますね。物理攻撃が効かなければどうするつもりだったのです?」

「その時は、別の方法を試すまで――――しかし、怨念で活動する魔物なら、拙者の強い意思で倒すことも可能のはずでござろう」

「本当に無茶苦茶を言う。そんな事が可能なら――――いや、できるのか?」

 景虎自身、冗談のつもりだった。「うむ?」と疑問符を浮かべた。

 しかし、飛鳥シノは何かを考え込んでるらしい。

 そんな間に2匹目のレイスが出現した。 出現と同時に景虎は斬り倒された。

 さらに3匹目――――4匹目はゾンビだった。

「むっ! 死人も出現するのでござるか!? しかし、問題なし!」

 ゾンビは、強い魔物だ。

 生物ならば致命傷を負っても、構わず動き続けて攻撃をしてくる。

 つまりは――――

 恐怖心もなく、痛みを感じないので、怯む事がない。 

 なにより、ゾンビに噛まれれば、ゾンビになる。

 そんな強い魔物を一太刀、二太刀、三太刀とバラバラにすると動かなくなった。

「やはり、どの世界でも死人は生命力が凄い。厄介な魔物でござるな」

 そうやって、魔物を出現するたびに倒して進む。遠くに見えていた廃墟になった教会の前に到着した。

 心あらずだった、飛鳥シノも正気を取り戻したようだ。

「さて、この教会に逃亡者が隠れているようだが……気配がない」

「油断されるな。あの教授はダンジョンの研究者だ。何か我々のわからない方法で潜んでいるかもしれない」

「うむ、では油断せずに――――」

「まってください! 景虎さん、何をする気ですか?」

「なにを? 火をつけるつもりでござるが?」

「火を!」

「古来より、籠城する敵には火矢を打ち込んで誘い出すのが定石でござる。根城に火を付けられれば敵は――――」

「いや、万が一にもクリスタルを持ったまま火事で死んでしまうと困るのですが?」

「真正面から攻めるのでござるか? あそこは見かけだけが教会で、もはや敵の砦に作り変えられていると思ったほうが良いのだが……」

「せめて、様子を窺いましょうよ? 敵以外に人が入り込んでいるかもしれませんよ」

「人以外に魔物だけになっているかもしれないが……行くか?」

「まずは斥候として様子見する必要があるでしょ」

「なるほど、一理ある」と景虎は教会に近寄っていった。

「ちなみにですが、景虎さん。斥候の経験は?」

「乱波の経験はある。しかし、斥候と乱波のやり方は違うのでござろう?」

 景虎は正面の扉を迂回した。 途中、頭上からスライムが落下してきた。

 気配は読めていたのだろう。スライムの落下攻撃を下から剣の突き上げで倒す。

「偶然か? それとも――――」

「魔物を使った罠ではないようですね」と飛鳥

「そういう悪質な事をする人ではありませんよ。教授は」

「親しい間柄だったのでござるか?」

 言いながら、景虎は落ちていた木の棒を拾った。

 それを割れた窓の間に入れる。 

 よくある罠だ。容易に手を伸ばすとワイヤーが腕に絡みついて、きつく縛られることになる。
 
「まず窓に罠はないようだ」と言いながら、そのまま棒で窓を開く。 

 そのまま、中に向かって棒を投げ込む。 どうやら、何かに当たった。

「人――――いや、人型の魔物だな。あいにく、目的の教授とやらではないようだ」

 こうなっては罠を下がるまでもない。 教会の中を破壊しながら、戦闘する事が決まったのだから……

 だから「窓を刀で切り裂く……ついて来いでござるよ」と言葉通りに刀を振った景虎。

 窓と言うか、壁を切り裂いて新しい入口を作ってみせた。 こうなると窓に他の罠が仕込まれていても関係はないだろう。

「――――中は想像以上に暗いな。灯りを」

「わかった」と飛鳥は魔法を唱える。 その手に生まれた小さな火が浮き上がり、照明に変わった。

 灯りで姿がハッキリと見えた人型の魔物。 その魔物の名前と正体を飛鳥シノが教えてくれた。

「あれは――――

 闇神官《ダークシャーマン》

 嘘か、誠か、闇に落ちた神官が魔物化した姿と言われています」 
 
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