最新の侍『異世界日本』でダンジョン配信者になる 「この明智光秀もおりますぞ~!」

チョーカ-

文字の大きさ
上 下
23 / 42

第23話 大型クラブ討伐と味噌汁と

しおりを挟む
「魔法とは、すなわり切り札……はたして鬼が出るか? 蛇が出るか?」

 魔法を使う者、魔法使いは窮地を脱する強烈な一撃を使う。

 だが、それだけではない。 

 彼ら魔法使いの強みは、機転を利かせ、戦術的な知恵を発揮する点にもある。

 魔法使いは、戦場において予測困難かつ変幻自在な存在であり、状況に応じて柔軟に対応し、相手を惑わせることで、戦闘の舞台を常に有利に進めることができるのである。

 だが、そんなに凄い魔法の力。 魔法を使うのは人間だけではない。

 同じ力を持った魔物もいるのだ。 特に強敵と言われる魔物には魔法攻撃を使って来る者が多い。

「――――ならば、この大型クラブもあるのだろう。魔法攻撃が!」

 全身が魔力に包まれた『強敵《ボス》』大型クラブ。

 対峙する景虎は警戒を強めて、距離を取る。 

 景虎はサムライだ。 無論、サムライの中でも魔法を得意とする者もいる。

「拙者がいた世界では、魔法を使う者を妖術師と呼んでいたが――――あいにく、拙者に魔法の力はなし……剣術で対処させてもらうでござるよ!」

 有村景虎には魔法の才はない――――いや、あったのかもしれないが、それを不要とするのが有村の技だった。 

 それは代々、親から子に伝える相伝の技だからこそ……

 魔法とは個人の才能に大きく左右される。 その個人の才を技術として組み込む事を拒否するのは当然なのかもしれない。。 
 
 そして―――――大型クラブの魔法が発動した。

 「むっ!」と景虎は警戒を強める。 

 (どうやら、瞬時に強烈な魔法を放つ攻撃ではないようでだが……)

 大型クラブは、魔力を泡に変換させて空中にばら撒いていった。

「魔力を泡に閉じ込めた爆破魔法? あるいは猛毒の効果を付加させたか?」

 泡から脅威を感じ、景虎はさらに距離を取る。

 彼には、毒を含めて状態異常を引き起こせる攻撃に強い耐性がある。 

(どのような効果があるにしても、わざわざ受けてやる道理はない)

 しかし、コメントの反応は逆だった。

『距離を取ったらダメ!』

『接近して魔法を潰さないと!』

『あの魔法の効果は――――』

『『『すっごい滑るよ』』』

「――――なに?」と景虎は反応に困った。 その意味はすぐに分かる事になる。

 大型クラブの魔法。 複数の泡が地面に落ちると――――

「魔力が地面に浸透していく? まさか、地形に特殊効果を付加する魔法か?」

 景虎の足元にまで魔法が届いた。

(殺意や悪意のある魔法なら反応もできた。だが、地形変化は――――)

 その直後だ。コメントと同じ効果が起きた。

「なっ!」と景虎は立っているだけで足を滑らせた。  倒れるギリギリでバランスと取る。

 体勢を低く、地面に片手をつく。 

 まだ戦いの最中だ。 大型クラブは接近してきている。

(なるほど、あの細い足……地面に突き立てながら歩いてるのか)

 大型クラブの足は、まるで杭のようだった。

 攻撃が飛んで来る。 大きな鋏が迫って来る。

 防御。 刀で受けた。

「ぬっ! これは!」と景虎は驚く。

 足の踏ん張りが効かない。 攻撃の衝撃。景虎の体は後方に滑っていく。

「なるほど、こうやって敵を壁に叩きつけるわけでござるな!」

 壁とぶつかる直前、刀を地面に突き立てる。 それで体の動きを止めれるはずもない。

 その常軌を脱した切れ味のため、刀は地面を切り裂いていく。

「けど、これで十分でござる!」 

 重心の全てを刀に乗せる。 腕力――――腕の力のみで景虎は刀を手にしたまま飛び上がる。

 垂直の壁に両足で着地。 そのまま、今度は大型クラブに向かって、景虎は大きく跳んだ。

 大型クラブは反応する。 対空攻撃のつもりか? 景虎に刺突の鋏を向けた。

 鋏は左右の二段攻撃。 それを弾いた景虎は、大型クラブの頭上に飛び乗った。

 大型クラブは暴れる。 どうやら、鋏攻撃も魔法も自身の頭上にいる相手には使えないようだ。

「おぉ! まるで暴れ牛でござるな! どうどう、落ち着くでござる。落ち着いた――――素直に倒されるがよかろう!」

 その刀を頭上に突き刺した。 

 だが、大型クラブは暴れるのを止めない。むしろ、暴れる力が増している。

「むむむ! これは死の直前――――最後の力というわけでござろう」

 その言葉通りだった。長い時間、大型クラブは暴れて、暴れて、倒れた。

 黒いモヤに包まれて、大型クラブは消滅していったが――――

「おぉ!これは! 狙いの素材が大量に手に入ったでござる!」

 ・・・
 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 素材を集め終えた景虎は『ギルド』に戻った。

 依頼を受けた受付嬢からは、

「3日は想定していたのに、こんなに早く終わったのですか! さすが、注目度№1と言われているダンジョン配信者 有村景虎さんですね!」

 絶賛され、報酬としての金銭を渡される。

「これは、どのくらいの価値でござる? まだ貨幣価値というものに慣れてないので……」

「え? 景虎さんって、サムライのキャラ作りじゃなかったのですか? それじゃ、ウワサ通り……ダンジョンの奥は別の世界に繋がっているって」

 ダンジョンの受付嬢とあって、そういう噂を見聞きしているのだろう。

 それでも彼女は半信半疑といった感じだが……

「さて、どうだろうな?」と景虎は惚けてみせた。

 手渡された金額。この周辺のマンションなら1か月分の家賃になる金額と言われた。
 
「よかった。ノア殿に渡すとして、その前に――――」

 景虎は受付嬢から

「え!? 本当に蒼月ノアさんと同棲を!」

 ―――――と驚かれたがうまく誤魔化した。

 少なくとも、景虎本人は誤魔化せたつもりだ。

 しかし、この受付嬢は、どうやらウワサ好きのようだ。

 しばらく、この界隈にそう言うった話が流れる事になるだろう。
  
「さて……」と景虎は椅子に座った。 場所は『ギルド』に隣接している食堂。

 かつて、こういう場所は場所は酒場だったのが、お約束だった。

 酒とたばこと喧嘩……しかし、現在はどれも御法度となる。

 有名なファーストフード店とコーヒーショップが並んでいる。

 少しだけサムライ姿は、浮いている。 しかし、そんなことは気にしない彼は、

「すまないが、蟹の味噌汁を所望いたしたい」

 場所は有名ファースト点だ。 店員さんは苦笑いを浮かべている。

「生憎、当店では……」と断られる雰囲気だった。しかし、

「待ちな!」と奥から野太い声。 大柄の男が出てきた。

「店長!?」

「ここは『ギルド』前店だ。命賭けの戦いから戻って来た戦士に出す料理。客の要望に応えるのが料理人ってわけだ」

「店長……ここはハンバーガー屋ですよ? フランチャイズ店で好き勝手にやってると、また本社からの指導が……」

「何が本社だ。アメリカからマニュアルを持って殴り合いに来やがれ!」

「店長!」となぜか、店長と店員は涙を流して抱き合い始めた。

「拙者は、一体何を見せられているのでござろう?」

 そんな事を呟いていると、「はい、お待ち。蟹の味噌汁だよ」と別の店員が運んできた。

「べ、別に店長が作るのではないのでござるな……」

 改めて、出てきた蟹の味噌汁を見る。 

 見た目は豪快だ。

 蟹の身がそのまま盛り付けられ、その深い赤色が温かな出汁に映えている。さらに緑の葱や新鮮な海藻がアクセントとして添えられ、食欲をそそられた。

 まずは思い浮かべてほしい。 夕暮れの海辺で漁師たちが収めた新鮮な蟹を。

 お椀から立ち上る湯気。 そこからは、優雅な香りが漂っていた。

 香りは、まさに新鮮な海の風味と蟹の甘みが絶妙に調和したもの。空気中に広がり、鼻に届くと胃袋をくすぐって来る。

 景虎はお椀を口に進める。 まずは一口……さすれば、その旨みが口いっぱいに広がった。

「うん……蟹の殻から抽出された濃厚でコクのある蟹味噌。見事に温かな出汁に溶け込んでいる」

 それは、潮の香りと海の深みが凝縮されたような濃厚な旨味だった。

「蟹の深い味わい。まるで海の深海から抽出したような贅沢さでござるな!」
 
 暖かい味噌汁は、すぐにサムライの体内に広がっている感覚。

 ホロリと涙すら流しそうになっている。

「まさに味噌汁は、日本人の心そのものでござるな……それで、どなたかな?」

 景虎は、隣に座った人物に問いかけた。 奇妙なことに、その人物は街中にも関わず西洋甲冑を着込んでいた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...