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第11話 ゴブリン王討伐 そして刺客現る
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はや何合目かの討ち合い。 武器がぶつかり合う毎に火花が舞い散る。
いまだ有効打はなし。だが、先に一撃を受けていたゴブリン王は次第に、技のキレ味が失っていく。
(均衡は崩れた。このまま勝てる……はずだが?)
景虎は、勝機と同時に違和感を覚えた。 何かあるのではないか?
そして、それは次の瞬間に起きる。
「グゥオオオ!」と短くゴブリン王は吠えた。
その体から何かが飛び出す。 赤い液体……血液だ。
血液の循環速度。それをコントロールして、傷口から血を飛ばして見せたのだ。
もちろん、目的は――――
「目潰しでござるか!」
景虎の目に血が入る。
「うっ!」と不意を突かれ顔を仰け反った。
「グオッ!」とゴブリン王は槍斧を振り落とした。
しかし、景虎は前に飛び込んだ。 いや、正確には槍斧を避けるために斜め前――――
前進していくゴブリン王をやり過ごし、その背後を取る。
しかし、密着しすぎている。もはや武器の間合いではない。
ゴブリン王も背後を取られた事を嫌い、振り返りながら肘を放った。
それを避けて、景虎はゴブリン王の背後を維持する。
戦いに有利なポジショニングの奪い合いが始まった。
視聴者たちにも、どよめき、ざわめくが起きる。
『バックの取り合いだ! 』
『速い! まるでゼロ距離鬼ごっこだ!』
『狙う狙う狙う! 取れない!』
『これがゼロレンジの攻防か!』
『怖ぇ……見てるだけで吐きそうになるわ』
景虎とゴブリン王の両者が動きを止めた。
いつの間にか互いは正面を向いてる。だが、距離はそのまま――――
『おいおいおい……相撲よりも間合いが近いぜ?』
そんなコメントが流れていく。
確かに……今の両者は超至近距離だ。
ゆっくり、ゆっくりと武器の刃を相手に向けている。
僅かに速度を乱して、均衡が失われると即座に勝敗が決する。
そんな戦い方だ。 文字通り、互いの喉元に刃を突き立て合ってる状態での戦い。
「――――」
「――――」と両者が無言。
命がけの我慢比べ。 先に均衡を崩したのは――――傷を負っているゴブリン王だった。
ほぼ、景虎の首に押し当てている状態の槍斧に力を入れ、斬ろうとする。
だが、その瞬間に景虎の技――――柔術が炸裂した。
きっとゴブリン王は、自身がどのような技を受けたのか理解できないだろう。
確実に景虎の首を取ったと思えた勝機。きっと、それが消滅したことだけが分かったに違いない。
不思議な力によって体が浮き上がるような感覚。 その後、視点が上下逆転して地面に衝突した衝撃がゴブリン王の全身を襲った。
「これで終わりでござるな、ゴブリン王……」
柔術あるいは柔道は戦場格闘技である。サムライに取って柔術はベーシックなマーシャルアーツだ。
刀を持った状態で戦う事を前提とした殺しの技術。
例えば――――抑え込み。
柔道では寝技で30秒、相手を抑え込めば勝ちとなる。 なぜ、30秒なのか?
敵を寝技で30秒も動きを封じる事ができれば、首印を奪うには十分だからという理由らしい――――
斬ッ……
そして景虎は、ソレを行った。
「ゴブリン共、戦は終わりだ。そなたたちの君主――――討ち取ったり!」
勝敗は決した。
取り囲んでいたゴブリンたちは、しばらく膝を地面に付けていた。
見れば号泣している者もいたが、やがて去って行った。
一方、景虎のコメ欄は、彼を絶賛する言葉に溢れている。
『ダンジョンでの一騎打ちは、ダンジョン配信の醍醐味だよね』
『あのエピックな一騎打ちの瞬間、ワイは興奮しまくったで!景虎サムライ最強!』
『ゴブリン王、お前も立派な敵だった。景虎の名前は、今日からダンジョン内で響き渡ること間違いなし!』
『一騎打ちでゴブリン王との壮絶なバトル、アドレナリン全開だったわ! 景虎は本当にサムライのプロだね』
『ゴブリン王の包囲殲滅戦戦術、本当に楽しめたね。突破した景虎の技術もマジすごかった!』
『あなたの剣術は本当に素晴らしい。ゴブリン王に立ち向かって倒すとは、流石です(海外ニキです)』
流れて来る『流石!』や『お見事』という褒め称えるコメント。
どこか景虎には、現実感がなかった。 それは、まだ彼がダンジョン配信という仕事に慣れていないから? それとも……
ともあれ、残された景虎は――――
「むむむ! せっかくの大将首も塵芥に……消えていくのござるか?」
ゴブリン王の体は、他の魔物と同様に黒いモヤに包まれて消滅していった。
「まさに諸行無常でござるなぁ……む? これは?」
しかし、その後に緑色の鉱石が転がっていた。
「もしや、これはレア素材ではござらぬか?」と視聴者にわかるよう、ドローンのカメラに近づけた。
『何これ? 初めて見た』
『たぶん、ボスレアの部類。強敵を倒しても低確率でしか手に入らない』
『超レア……100万円コース』
「なんと100万でござるか!」と景虎は驚いた。それから、
「それはどれほどの金額なのでござる?」と首を傾げた。
現代の金銭感覚を持ち合わせていなかったからだ。
『100万円で何ができるか……意外と難しいなぁ』
『車……PC……どれも比較が現代になってしまう……』
『食事、1日豪遊して2万くらい。そう考えたら50日は飯に困らない』
『俺氏年収200万いかない……つまり、100万なら半年は暮らせる(1人暮らしに)』
『↑それだ!』
送られて来たコメントを確認して、
「なるほど、しばらくの生活の糧にはなるでござるな」
手にした鉱石を大切そうに、ふところに仕舞いこんだ。
すると、背後に気配。振り返れば、大きな狼が1匹。
ゴブリン王が騎乗していた狼だ。
「むっ? 何でござる? 主人の敵討ち……というわけでござらんな」
狼は口に武器を加えていた。 その武器は、ゴブリン王が使っていた槍斧と同じ物だった。
「先ほど、ゴブリン王と共に消滅したと思っていたが、予備がござったのか?」
狼は口から離してたと思うと、
すっすっすっ……と頭で押して、景虎に近づけてきた。
「倒した者に形見分けでござるか? もしや、そういう遺言が?」
コクコクと頭を下げる狼。 どうやら意思の疎通が可能のようだった。
「探索者から奪った武器だと思い込んでいたが、うむ……ダンジョンの七不思議でござるな」
たまにある。文明とは関わり合いのないと思われる魔物が、なぜか人の物と思われる武器と防具を装備している事。
景虎の世界では、これをダンジョン七不思議の1つに数えられていた。
「それで、お前はどうする? 一緒に来るか?」
景虎は、狼に話しかける。 主人亡き後に言いつけを守る姿に関心したからだ。
加えて、魔物を仲間にする者――――魔物使いは普通にいる。
だが、狼はブンブンと首を振って、そのまま立ち去って行った。
「見上げた忠義でござった。さて、これはどうしたものか?」と受け取った槍斧を持ち上げる。
試しに振ってみる。悪くはない。
「……悪くはないでござるが、やはり拙者には刀の方が良いでござるな」
試し振りを何度かした後――――
「待たせたでござるな……そこに隠れている者」
景虎の視線。その先に人が隠れていた。
「驚いたなぁ。気配は消したはずなんだけど……」
「気配は消せても死臭は隠せないでござるよ」
「なるほど、勉強になった。今度からは死臭も消して暗殺するよ」
そう言うって姿を現したのは――――サムライだった。
美しい藍染めの生地でできたダンダラ模様の羽織。 その姿は、誰もが知っているサムライ集団の制服であった。
その集団名は――――『新選組』
だから、きっと――――その背中には『誠』が刻まれているのだろう。
新選組が放った刺客。 美しい暗殺者。
彼は自分の名を名乗った。
「僕は新選組一番隊隊長 沖田総司。 故あって、正々堂々と決闘を申し込む」
いまだ有効打はなし。だが、先に一撃を受けていたゴブリン王は次第に、技のキレ味が失っていく。
(均衡は崩れた。このまま勝てる……はずだが?)
景虎は、勝機と同時に違和感を覚えた。 何かあるのではないか?
そして、それは次の瞬間に起きる。
「グゥオオオ!」と短くゴブリン王は吠えた。
その体から何かが飛び出す。 赤い液体……血液だ。
血液の循環速度。それをコントロールして、傷口から血を飛ばして見せたのだ。
もちろん、目的は――――
「目潰しでござるか!」
景虎の目に血が入る。
「うっ!」と不意を突かれ顔を仰け反った。
「グオッ!」とゴブリン王は槍斧を振り落とした。
しかし、景虎は前に飛び込んだ。 いや、正確には槍斧を避けるために斜め前――――
前進していくゴブリン王をやり過ごし、その背後を取る。
しかし、密着しすぎている。もはや武器の間合いではない。
ゴブリン王も背後を取られた事を嫌い、振り返りながら肘を放った。
それを避けて、景虎はゴブリン王の背後を維持する。
戦いに有利なポジショニングの奪い合いが始まった。
視聴者たちにも、どよめき、ざわめくが起きる。
『バックの取り合いだ! 』
『速い! まるでゼロ距離鬼ごっこだ!』
『狙う狙う狙う! 取れない!』
『これがゼロレンジの攻防か!』
『怖ぇ……見てるだけで吐きそうになるわ』
景虎とゴブリン王の両者が動きを止めた。
いつの間にか互いは正面を向いてる。だが、距離はそのまま――――
『おいおいおい……相撲よりも間合いが近いぜ?』
そんなコメントが流れていく。
確かに……今の両者は超至近距離だ。
ゆっくり、ゆっくりと武器の刃を相手に向けている。
僅かに速度を乱して、均衡が失われると即座に勝敗が決する。
そんな戦い方だ。 文字通り、互いの喉元に刃を突き立て合ってる状態での戦い。
「――――」
「――――」と両者が無言。
命がけの我慢比べ。 先に均衡を崩したのは――――傷を負っているゴブリン王だった。
ほぼ、景虎の首に押し当てている状態の槍斧に力を入れ、斬ろうとする。
だが、その瞬間に景虎の技――――柔術が炸裂した。
きっとゴブリン王は、自身がどのような技を受けたのか理解できないだろう。
確実に景虎の首を取ったと思えた勝機。きっと、それが消滅したことだけが分かったに違いない。
不思議な力によって体が浮き上がるような感覚。 その後、視点が上下逆転して地面に衝突した衝撃がゴブリン王の全身を襲った。
「これで終わりでござるな、ゴブリン王……」
柔術あるいは柔道は戦場格闘技である。サムライに取って柔術はベーシックなマーシャルアーツだ。
刀を持った状態で戦う事を前提とした殺しの技術。
例えば――――抑え込み。
柔道では寝技で30秒、相手を抑え込めば勝ちとなる。 なぜ、30秒なのか?
敵を寝技で30秒も動きを封じる事ができれば、首印を奪うには十分だからという理由らしい――――
斬ッ……
そして景虎は、ソレを行った。
「ゴブリン共、戦は終わりだ。そなたたちの君主――――討ち取ったり!」
勝敗は決した。
取り囲んでいたゴブリンたちは、しばらく膝を地面に付けていた。
見れば号泣している者もいたが、やがて去って行った。
一方、景虎のコメ欄は、彼を絶賛する言葉に溢れている。
『ダンジョンでの一騎打ちは、ダンジョン配信の醍醐味だよね』
『あのエピックな一騎打ちの瞬間、ワイは興奮しまくったで!景虎サムライ最強!』
『ゴブリン王、お前も立派な敵だった。景虎の名前は、今日からダンジョン内で響き渡ること間違いなし!』
『一騎打ちでゴブリン王との壮絶なバトル、アドレナリン全開だったわ! 景虎は本当にサムライのプロだね』
『ゴブリン王の包囲殲滅戦戦術、本当に楽しめたね。突破した景虎の技術もマジすごかった!』
『あなたの剣術は本当に素晴らしい。ゴブリン王に立ち向かって倒すとは、流石です(海外ニキです)』
流れて来る『流石!』や『お見事』という褒め称えるコメント。
どこか景虎には、現実感がなかった。 それは、まだ彼がダンジョン配信という仕事に慣れていないから? それとも……
ともあれ、残された景虎は――――
「むむむ! せっかくの大将首も塵芥に……消えていくのござるか?」
ゴブリン王の体は、他の魔物と同様に黒いモヤに包まれて消滅していった。
「まさに諸行無常でござるなぁ……む? これは?」
しかし、その後に緑色の鉱石が転がっていた。
「もしや、これはレア素材ではござらぬか?」と視聴者にわかるよう、ドローンのカメラに近づけた。
『何これ? 初めて見た』
『たぶん、ボスレアの部類。強敵を倒しても低確率でしか手に入らない』
『超レア……100万円コース』
「なんと100万でござるか!」と景虎は驚いた。それから、
「それはどれほどの金額なのでござる?」と首を傾げた。
現代の金銭感覚を持ち合わせていなかったからだ。
『100万円で何ができるか……意外と難しいなぁ』
『車……PC……どれも比較が現代になってしまう……』
『食事、1日豪遊して2万くらい。そう考えたら50日は飯に困らない』
『俺氏年収200万いかない……つまり、100万なら半年は暮らせる(1人暮らしに)』
『↑それだ!』
送られて来たコメントを確認して、
「なるほど、しばらくの生活の糧にはなるでござるな」
手にした鉱石を大切そうに、ふところに仕舞いこんだ。
すると、背後に気配。振り返れば、大きな狼が1匹。
ゴブリン王が騎乗していた狼だ。
「むっ? 何でござる? 主人の敵討ち……というわけでござらんな」
狼は口に武器を加えていた。 その武器は、ゴブリン王が使っていた槍斧と同じ物だった。
「先ほど、ゴブリン王と共に消滅したと思っていたが、予備がござったのか?」
狼は口から離してたと思うと、
すっすっすっ……と頭で押して、景虎に近づけてきた。
「倒した者に形見分けでござるか? もしや、そういう遺言が?」
コクコクと頭を下げる狼。 どうやら意思の疎通が可能のようだった。
「探索者から奪った武器だと思い込んでいたが、うむ……ダンジョンの七不思議でござるな」
たまにある。文明とは関わり合いのないと思われる魔物が、なぜか人の物と思われる武器と防具を装備している事。
景虎の世界では、これをダンジョン七不思議の1つに数えられていた。
「それで、お前はどうする? 一緒に来るか?」
景虎は、狼に話しかける。 主人亡き後に言いつけを守る姿に関心したからだ。
加えて、魔物を仲間にする者――――魔物使いは普通にいる。
だが、狼はブンブンと首を振って、そのまま立ち去って行った。
「見上げた忠義でござった。さて、これはどうしたものか?」と受け取った槍斧を持ち上げる。
試しに振ってみる。悪くはない。
「……悪くはないでござるが、やはり拙者には刀の方が良いでござるな」
試し振りを何度かした後――――
「待たせたでござるな……そこに隠れている者」
景虎の視線。その先に人が隠れていた。
「驚いたなぁ。気配は消したはずなんだけど……」
「気配は消せても死臭は隠せないでござるよ」
「なるほど、勉強になった。今度からは死臭も消して暗殺するよ」
そう言うって姿を現したのは――――サムライだった。
美しい藍染めの生地でできたダンダラ模様の羽織。 その姿は、誰もが知っているサムライ集団の制服であった。
その集団名は――――『新選組』
だから、きっと――――その背中には『誠』が刻まれているのだろう。
新選組が放った刺客。 美しい暗殺者。
彼は自分の名を名乗った。
「僕は新選組一番隊隊長 沖田総司。 故あって、正々堂々と決闘を申し込む」
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