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新大陸と出会いですか?
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アリスとミライの戦いだったが、ミライが戦意を消失したことでアリスの勝ちとなった。
その後、地獄耳のミゲールに
「おいおい少年、アリスの何が見えて戦う気がなくなったんだ? このこの!」
とミライをからかっている姿を何度か見かけたが、アリス本人には何のことかわからなかった。
「それじゃ、負けた俺を総本山に送り帰すわけか?」
そうミライは言い出したが……
「いや、お前が持っているのは水の紋章だろ? 正直に言えば、実力が知りたかっただけだ。 わざわざ、海の旅で水属性を追い返す馬鹿はいないだろ?」
そう言うミゲールの言葉に、「納得いかねぇ!」とミライは叫ぶのだった。
―――そして一週間が経過した――――
「いやぁ……いろいろあったね」とミゲールは船の上。
目前に見える大陸に感慨深い言葉を呟いた。
「襲い掛かって来る巨大な船の正体がミミックだったり、空を飛ぶ幽霊船団、海の魔物を操る少女――――」
「全部、先生がぶん殴って倒してしまいましたね」とアリス。
「よせやい、誉めるね。世界が脆すぎるだけだぜ」
「いや、誉めてるわけじゃないと思うぜ……」とミライは呟いた。
「そんなことよりも……」と興奮を隠せ切れていないのはヨルマガだ。
「皆さん、新大陸が見えてきましたよ!」
前人未踏のはずの『新大陸』 皆、感動がないわけではないが……
「さすがに、どこかの船が国旗を突き刺して帰ったって形跡はないか……」
ミゲールの言う通りだ。『前人未踏』は形だけ、非公式なら漁船団は海が続く限り、どこまでも船を進ませる。
「当初の計画通り、新大陸ならでは食材を採取でも行くかぁ」
そう言って、船から陸地に飛び降りようとするミゲールにヨルマガが待ってをかけた。
「おい、なんだよ。人がやる気になっているのによ」
「今回、依頼をしたのは晩餐会で出す料理の食材です。過去に例のない料理への挑戦として『新大陸』で……」
「あ~ いかにも、新大陸にしかいませんって言い訳できない獲物は都合が悪い……そう言う事か?」
「はい」とヨルマガが頷く。
「それじゃ、今回の獲物は――――」
「新大陸付近の魚介系がメインになります」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「どうよ? この日のために新調した釣り竿は?」
ミゲールが見せびらかす釣り竿。 その見た目から「本当に釣り竿か? 武器じゃなくて?」なんて思わなくもないが、誰も口に出さない。
「糸は鉄性だ。簡単にゃ切れやしない。竿も国一番の剣匠に、無理を言って作って貰った……糸は切れない。釣り竿を折れない……コイツは無敵だぜ?」
ミゲールはご機嫌で餌を付けると、海に向かって――――
30分後
「釣れねぇな……」
そう呟く、ミゲールの周囲。 アリスも、ミライも、ヨルマガも普通に釣れていた。
「ヨルマガさん、この魚はどうですか? 新種ですか?」
「う~ん、新種ではありませんが、非情に珍しい魚ですね」
釣りに必要なのは忍耐力……だけではない。 時間帯、水面の気温によって魚は移動する。
魚の動きを想像して、その居場所を狙うのだが……
「暇だ。飽きちまったぜ。どうせなら、潜って直接、魚を掴んで……」
そんな時だった。 ミゲールの釣り竿がしなった。
「――――ッ! コイツは大物だぜ。特別性の釣り竿が撓《しな》ってやがる」
こうなると釣りは競技《スポーツ》だ。 魚の動きに逆らわず、体力勝負に持ち込む。
駆け引き、人間と魚の心理戦だ。そして――――
水面に徐々に、黒い魚影が見えて来た。
「オラっ!」とかけ声と共にミゲールは釣り竿を上に跳ね上げさせた。
そこで初めて見えた獲物の正体は――――人間だった。
いや、正確には人間ではない。
亜人だ。なぜなら、下半身は魚……人魚《マーメイド》だ。
「……」と人魚を目を合わせたミゲール。 予想外の出来事に思考が停止した。
だから、反応が遅れる。 人魚の腰、鱗の隙間に釣り針が引っかかっていた。
そこを人魚は手にしていた武器――――三又の槍――――で糸を斬る。
鉄でできた糸だ。 簡単には切断できないはず。 しかし、水面で何度も抵抗していたのだろう。
何度も斬撃を受けていたと思える鉄糸は、ついに切れた。 自由になった人魚は水面に逃げ込んでいく。
「させるか!」とそれを追ってミゲールは水中に向かって飛び込んだ。
水に入るよりも早く獣の紋章を使っている。 ミゲールの魔法は変身魔法。
彼女も追跡する対象である人魚と同じ姿に変身を終えていた。
そして始まったのは水中の鬼ごっこ。
(やっぱり本物の人魚――――こっちが想像していたよりも、数段速いぜ。けど、私だって!)
距離に差が生まれていた両者。ここでミゲールは加速を始めた。
そもそも――――なぜ、ここまでミゲールが必死なのか?
それには、深い理由があった。
その後、地獄耳のミゲールに
「おいおい少年、アリスの何が見えて戦う気がなくなったんだ? このこの!」
とミライをからかっている姿を何度か見かけたが、アリス本人には何のことかわからなかった。
「それじゃ、負けた俺を総本山に送り帰すわけか?」
そうミライは言い出したが……
「いや、お前が持っているのは水の紋章だろ? 正直に言えば、実力が知りたかっただけだ。 わざわざ、海の旅で水属性を追い返す馬鹿はいないだろ?」
そう言うミゲールの言葉に、「納得いかねぇ!」とミライは叫ぶのだった。
―――そして一週間が経過した――――
「いやぁ……いろいろあったね」とミゲールは船の上。
目前に見える大陸に感慨深い言葉を呟いた。
「襲い掛かって来る巨大な船の正体がミミックだったり、空を飛ぶ幽霊船団、海の魔物を操る少女――――」
「全部、先生がぶん殴って倒してしまいましたね」とアリス。
「よせやい、誉めるね。世界が脆すぎるだけだぜ」
「いや、誉めてるわけじゃないと思うぜ……」とミライは呟いた。
「そんなことよりも……」と興奮を隠せ切れていないのはヨルマガだ。
「皆さん、新大陸が見えてきましたよ!」
前人未踏のはずの『新大陸』 皆、感動がないわけではないが……
「さすがに、どこかの船が国旗を突き刺して帰ったって形跡はないか……」
ミゲールの言う通りだ。『前人未踏』は形だけ、非公式なら漁船団は海が続く限り、どこまでも船を進ませる。
「当初の計画通り、新大陸ならでは食材を採取でも行くかぁ」
そう言って、船から陸地に飛び降りようとするミゲールにヨルマガが待ってをかけた。
「おい、なんだよ。人がやる気になっているのによ」
「今回、依頼をしたのは晩餐会で出す料理の食材です。過去に例のない料理への挑戦として『新大陸』で……」
「あ~ いかにも、新大陸にしかいませんって言い訳できない獲物は都合が悪い……そう言う事か?」
「はい」とヨルマガが頷く。
「それじゃ、今回の獲物は――――」
「新大陸付近の魚介系がメインになります」
・・・
・・・・・・
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「どうよ? この日のために新調した釣り竿は?」
ミゲールが見せびらかす釣り竿。 その見た目から「本当に釣り竿か? 武器じゃなくて?」なんて思わなくもないが、誰も口に出さない。
「糸は鉄性だ。簡単にゃ切れやしない。竿も国一番の剣匠に、無理を言って作って貰った……糸は切れない。釣り竿を折れない……コイツは無敵だぜ?」
ミゲールはご機嫌で餌を付けると、海に向かって――――
30分後
「釣れねぇな……」
そう呟く、ミゲールの周囲。 アリスも、ミライも、ヨルマガも普通に釣れていた。
「ヨルマガさん、この魚はどうですか? 新種ですか?」
「う~ん、新種ではありませんが、非情に珍しい魚ですね」
釣りに必要なのは忍耐力……だけではない。 時間帯、水面の気温によって魚は移動する。
魚の動きを想像して、その居場所を狙うのだが……
「暇だ。飽きちまったぜ。どうせなら、潜って直接、魚を掴んで……」
そんな時だった。 ミゲールの釣り竿がしなった。
「――――ッ! コイツは大物だぜ。特別性の釣り竿が撓《しな》ってやがる」
こうなると釣りは競技《スポーツ》だ。 魚の動きに逆らわず、体力勝負に持ち込む。
駆け引き、人間と魚の心理戦だ。そして――――
水面に徐々に、黒い魚影が見えて来た。
「オラっ!」とかけ声と共にミゲールは釣り竿を上に跳ね上げさせた。
そこで初めて見えた獲物の正体は――――人間だった。
いや、正確には人間ではない。
亜人だ。なぜなら、下半身は魚……人魚《マーメイド》だ。
「……」と人魚を目を合わせたミゲール。 予想外の出来事に思考が停止した。
だから、反応が遅れる。 人魚の腰、鱗の隙間に釣り針が引っかかっていた。
そこを人魚は手にしていた武器――――三又の槍――――で糸を斬る。
鉄でできた糸だ。 簡単には切断できないはず。 しかし、水面で何度も抵抗していたのだろう。
何度も斬撃を受けていたと思える鉄糸は、ついに切れた。 自由になった人魚は水面に逃げ込んでいく。
「させるか!」とそれを追ってミゲールは水中に向かって飛び込んだ。
水に入るよりも早く獣の紋章を使っている。 ミゲールの魔法は変身魔法。
彼女も追跡する対象である人魚と同じ姿に変身を終えていた。
そして始まったのは水中の鬼ごっこ。
(やっぱり本物の人魚――――こっちが想像していたよりも、数段速いぜ。けど、私だって!)
距離に差が生まれていた両者。ここでミゲールは加速を始めた。
そもそも――――なぜ、ここまでミゲールが必死なのか?
それには、深い理由があった。
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