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第28話 悪魔は真の姿を現しましたが……
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アリスは一時的に結界魔法を解除する。
その身に新鮮な風を受ける。 そして、風の流れを掌握した。
彼女の腕に刻まれた紋章が輝く。 ただし、それは風の紋章だ。
「ん? 待てアリス。 なぜ、風属性の魔法を使う? ここは聖属性の出番だろ」
「先生、待ってください。これはまだ下準備です」
初めて発動する聖の紋章。 他者から譲渡された紋章――――それをアリスは、
(やっぱり、まだ馴染みません。使い勝手がわかりません。だから、無理やり馴染ませます!)
アリスの魔力が含まれた魔力が、風魔法として周囲に広がって行く。それに――――
(風魔法で空間を支配して――――聖魔法に切り替えます!)
一度、空間に広がった魔力の種類が『風』から『聖』に塗り替わっていく。
離れていた悪魔たちにも異変が起きている。
(効いてる。悪魔たちの動きが鈍い……まるで毒を打ち込まれたようだ)
ミゲールは状況を把握すると――――
「よし、流石は私の弟子だぜ、アリス。決着に行ってくるぞ!」
3体の悪魔の前に飛び出した。
「苦しんでいる時にすまねぇが……ここからは手加減抜きで行かせてもらうぜ」
悪魔の1体が投擲用の槍をミゲールに向ける。 しかし、投げれない。
彼女に威圧されて、体が動かなかったのだ。
「これは別世界の言葉らしいが……死中に活って知ってるかい? やっぱり、弟子を強制的に成長を促すには実戦だ」
それは、アリスを鍛えるために全力で戦っていなかったことを告白を意味する。
「悪いが今までは3割の力。これからは全力で行かせてもらう――――わかるか? 今から私は、3倍以上は強くなるってことだぜ!」
彼女の威圧を振り払い、悪魔たちは一斉に槍を投げた。
連続で迫り来る槍を躱す。そのうち1本を彼女は掴む。
掴むことで起きる力の消失《ロス》を最小限に抑えるように――――その場で回転。
力を増した槍を投げ返され、悪魔の左胸に突き刺さった。
(左胸。 こしもこれが人間ならば、心臓が無事でも、左肺は全損。致命傷になるはずだが……やっぱり、悪魔は動き続ける。なら!)
一気に接近したミゲールは、蹴り――――刺さっている槍の持ち手を蹴り込む。
蹴られた槍は、悪魔の肉体を貫通。 そのまま悪魔の背後へ飛んで行く。
さらに蹴り。空中二段蹴りで悪魔の顎を蹴り砕いた。
1体の悪魔は戦闘不能と言えるダメージを受け、その場に倒れ込む。
攻撃を終えたミゲール。そのタイミングを狙い、側面から次の悪魔が接近する。
しかし、攻撃を狙っていたはずの悪魔が動きを止める。 それどころか、ダメージを受けたように顔を後ろに反った。
ミゲールの土属性魔法。 魔力で構成された極小の砂を使って、悪魔の目を叩いたのだ。
「目潰し……3対1で卑怯とかいうなよ。そもそも、卑怯は悪魔の専売特許だろ?」
目を傷めた悪魔は、さきほどの戦闘でミゲールで腕を折られた個体らしい。
捻じ曲がっている腕とは別の腕。ミゲールは、それを掴むと関節技。4本腕の悪魔は2本目の腕を破壊された。
しかし――――
追撃は狙えなかった。 顎を砕いて倒れていた最初の悪魔が立ち上がり、ミゲールを掴みかかろうとしてきた。
それを投げ返すと――――
(妙だな。いくら、なんでも回復が早すぎる。胸を貫通させられ、顎を砕かれているんだぜ?)
見れば、腕を破壊した悪魔も、緩やかであるが回復傾向が見えた。
(……なるほどな。魔力が膨大な悪魔だもんな。回復魔法くらい使えるか!)
戦闘に参加していない3体目の悪魔。 すこし離れた場所で立っていた。
武器を投げ捨て、4本ある腕の掌と掌を合わせている。 明らかに魔法の使用――――回復魔法だ。
「はい、そこまで。残念賞」とミゲールは、回復役の悪魔に接近すると合わせている腕を引き剥がす。
だが、悪魔は4本腕。自由のきく腕でミゲールを引き離そうとするも――――
「そう簡単にさせねぇよ!」
頭突きを叩き込んだ。
3体の悪魔相手に本気を出したミゲールは圧倒する。
しかし、防戦一方だった悪魔たちに変化が起きた。
悪魔たちは逃げるように立ち回ると――――3体が重なり合う。
やがて、輪郭がぼやけ始める。 個体から液体に変化するように1つに収束。
「へぇ合体するのか。悪魔合体……いや、そっちの姿が本来の姿か?」
悪魔たちは合体した分、サイズが大幅に巨大化。
腕は8本。頭が3つ。 グロテスクな怪物に変化していった。
それを見上げるミゲールは笑う。
「コイツはヤバいね……ところで、私は全力でいかせてもらうって言ったが――――あれは嘘だ」
ミゲールの紋章。
『土』の紋章が『獣』の紋章へ変化を遂げる。
「ここらは本気中の本気だぜ? しかも、お前の力を学習させてもらった」
彼女の変身が始まる。
頭には大きな角《つの》が生えていく。 背中には黒い翼。
そして、肩から新しい腕が生えてくる。
悪魔の姿。 それをミゲールは自身の魔法によって再現した。
膨大な魔力と強靭な肉体。 変身以前から保有していたソレは、遥かに跳ね上がっている。
「へぇ……さすがは悪魔さまさまだぜ。ちょっとした物真似レベルでも戦闘力と闘争心が高まって行く」
その言葉と姿に、悪魔本人もたじろいでいるのがわかる。
それほどまでに悪魔とミゲールの間に戦闘能力が差が生まれてしまっているのだ。
その身に新鮮な風を受ける。 そして、風の流れを掌握した。
彼女の腕に刻まれた紋章が輝く。 ただし、それは風の紋章だ。
「ん? 待てアリス。 なぜ、風属性の魔法を使う? ここは聖属性の出番だろ」
「先生、待ってください。これはまだ下準備です」
初めて発動する聖の紋章。 他者から譲渡された紋章――――それをアリスは、
(やっぱり、まだ馴染みません。使い勝手がわかりません。だから、無理やり馴染ませます!)
アリスの魔力が含まれた魔力が、風魔法として周囲に広がって行く。それに――――
(風魔法で空間を支配して――――聖魔法に切り替えます!)
一度、空間に広がった魔力の種類が『風』から『聖』に塗り替わっていく。
離れていた悪魔たちにも異変が起きている。
(効いてる。悪魔たちの動きが鈍い……まるで毒を打ち込まれたようだ)
ミゲールは状況を把握すると――――
「よし、流石は私の弟子だぜ、アリス。決着に行ってくるぞ!」
3体の悪魔の前に飛び出した。
「苦しんでいる時にすまねぇが……ここからは手加減抜きで行かせてもらうぜ」
悪魔の1体が投擲用の槍をミゲールに向ける。 しかし、投げれない。
彼女に威圧されて、体が動かなかったのだ。
「これは別世界の言葉らしいが……死中に活って知ってるかい? やっぱり、弟子を強制的に成長を促すには実戦だ」
それは、アリスを鍛えるために全力で戦っていなかったことを告白を意味する。
「悪いが今までは3割の力。これからは全力で行かせてもらう――――わかるか? 今から私は、3倍以上は強くなるってことだぜ!」
彼女の威圧を振り払い、悪魔たちは一斉に槍を投げた。
連続で迫り来る槍を躱す。そのうち1本を彼女は掴む。
掴むことで起きる力の消失《ロス》を最小限に抑えるように――――その場で回転。
力を増した槍を投げ返され、悪魔の左胸に突き刺さった。
(左胸。 こしもこれが人間ならば、心臓が無事でも、左肺は全損。致命傷になるはずだが……やっぱり、悪魔は動き続ける。なら!)
一気に接近したミゲールは、蹴り――――刺さっている槍の持ち手を蹴り込む。
蹴られた槍は、悪魔の肉体を貫通。 そのまま悪魔の背後へ飛んで行く。
さらに蹴り。空中二段蹴りで悪魔の顎を蹴り砕いた。
1体の悪魔は戦闘不能と言えるダメージを受け、その場に倒れ込む。
攻撃を終えたミゲール。そのタイミングを狙い、側面から次の悪魔が接近する。
しかし、攻撃を狙っていたはずの悪魔が動きを止める。 それどころか、ダメージを受けたように顔を後ろに反った。
ミゲールの土属性魔法。 魔力で構成された極小の砂を使って、悪魔の目を叩いたのだ。
「目潰し……3対1で卑怯とかいうなよ。そもそも、卑怯は悪魔の専売特許だろ?」
目を傷めた悪魔は、さきほどの戦闘でミゲールで腕を折られた個体らしい。
捻じ曲がっている腕とは別の腕。ミゲールは、それを掴むと関節技。4本腕の悪魔は2本目の腕を破壊された。
しかし――――
追撃は狙えなかった。 顎を砕いて倒れていた最初の悪魔が立ち上がり、ミゲールを掴みかかろうとしてきた。
それを投げ返すと――――
(妙だな。いくら、なんでも回復が早すぎる。胸を貫通させられ、顎を砕かれているんだぜ?)
見れば、腕を破壊した悪魔も、緩やかであるが回復傾向が見えた。
(……なるほどな。魔力が膨大な悪魔だもんな。回復魔法くらい使えるか!)
戦闘に参加していない3体目の悪魔。 すこし離れた場所で立っていた。
武器を投げ捨て、4本ある腕の掌と掌を合わせている。 明らかに魔法の使用――――回復魔法だ。
「はい、そこまで。残念賞」とミゲールは、回復役の悪魔に接近すると合わせている腕を引き剥がす。
だが、悪魔は4本腕。自由のきく腕でミゲールを引き離そうとするも――――
「そう簡単にさせねぇよ!」
頭突きを叩き込んだ。
3体の悪魔相手に本気を出したミゲールは圧倒する。
しかし、防戦一方だった悪魔たちに変化が起きた。
悪魔たちは逃げるように立ち回ると――――3体が重なり合う。
やがて、輪郭がぼやけ始める。 個体から液体に変化するように1つに収束。
「へぇ合体するのか。悪魔合体……いや、そっちの姿が本来の姿か?」
悪魔たちは合体した分、サイズが大幅に巨大化。
腕は8本。頭が3つ。 グロテスクな怪物に変化していった。
それを見上げるミゲールは笑う。
「コイツはヤバいね……ところで、私は全力でいかせてもらうって言ったが――――あれは嘘だ」
ミゲールの紋章。
『土』の紋章が『獣』の紋章へ変化を遂げる。
「ここらは本気中の本気だぜ? しかも、お前の力を学習させてもらった」
彼女の変身が始まる。
頭には大きな角《つの》が生えていく。 背中には黒い翼。
そして、肩から新しい腕が生えてくる。
悪魔の姿。 それをミゲールは自身の魔法によって再現した。
膨大な魔力と強靭な肉体。 変身以前から保有していたソレは、遥かに跳ね上がっている。
「へぇ……さすがは悪魔さまさまだぜ。ちょっとした物真似レベルでも戦闘力と闘争心が高まって行く」
その言葉と姿に、悪魔本人もたじろいでいるのがわかる。
それほどまでに悪魔とミゲールの間に戦闘能力が差が生まれてしまっているのだ。
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