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第16話 ジャングルを進みます
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「よし! 飛べ!」
「……はい」とアリスは死んだ目で答える。
彼女の周囲には、ミゲールが用意した荷物が大量に散らばっている。
加えて、ミゲール本人は豪華な椅子に座っている。
アリスは風の紋章に力を込める。
結界魔法と同じで、彼女の周囲は風で覆われていく。 違うのは、彼女の体が浮いていくこと――――いや、それだけではない。
ミゲールも椅子に座ったまま浮き上がる。 彼女の荷物も同様だ。
「そうだな。目的地の方向は――――あっちだったな」
「本当に大丈夫です?」
「心配するな、地図は持ってる」
「……世界地図じゃないですか!」
「あん? 当たり前だろ? 国内のダンジョンで手軽に済ますとでも思っていたのかよ」
「か、海外旅行! 許可は取っているのですか!?」
ミゲールは宮廷魔法使い。
アリスは公爵家の1人娘。
勝手に海外に行くのはまずい……というよりも、
「……と言うよりも、私が魔法で国を越えたら不法入国になるのでは?」
「細かい事は良いんだよ! 金がない時は、走って、泳いで海外の古代遺跡までいってたんだぞ!」
「無茶しすぎでは!」
「構わねぇよ。目的地の王族は、だいたい私のダチみたいなもんだ。捕まっても、釈放される」
「捕まることが既に嫌なんです!」
そんなやり取りを繰り広げていたが、口でアリスはミゲールは勝てない。
「――――わかりました。飛びます……」
アリスは納得してない。 納得してないが、あきらめてミゲールに従う事にした。
風魔法を使用して、浮き上がった体を高速で飛ばす。
「やっほー!」とミゲールは楽し気に声を上げた。
それから彼女は鉱石ラジオから流れる音楽を楽しみながら――――やがて、寝ていた。
彼女の様子は、優雅な旅行そのもの……
「人に働かせて、自分は惰眠を貪る……師匠でなければ殴ってるところですよ!」
ブルブルと拳を握りながら言う、アリスの言葉は聞こえてないだろう、きっと……
それから2、3時間の飛行時間。 超高速で飛んでいたアリスは国を越えて、あさっさりと海外に到着する。
「もう到着か。風属性の連中は、移動に使えて便利だな!」
到着した場所はジャングルだ。
視界には森林が広がる。人間の気配がなくなった。
人工物……それも建設物は見えない。
「本当に、ここが目的地なんですか? 古代迷宮なんて見当たりませんよ?」
「いやいや」とミゲールは首を振り、こう続けた。
「旅行ってのは、自分の足で歩かないとな。まだ若いのに楽なんてしちゃいけないぜ!」
「よく言えます。2時間以上も私に飛行魔法を使わせておいて……今、旅行って言いませんでしたか?」
後半の疑問を無視しながらミゲールは、
「私から言わせてもらうと、お前こそ、『よく言えますね』って感覚だぜ。2時間どころか2日は空を飛べるくせに――――今だって、結界魔法を利用しながら、同時に飛行魔法で浮いてるじゃねぇか」
「魔法の燃費が良すぎて、反論できない自分の才能が憎い――――でもでも、結界と飛行を同時で使ってるのは自衛のためですよ。こんな軽装でジャングルを進んで、変な虫や獰猛な魔物に襲われたらどうするんですか?」
「まぁ、環境に適応できなきゃ死ぬだけだからな。私の弟子なら、そのくらい覚悟してついてきな!」
「はいはい」とアリスはミゲールの後ろをついてジャングルを進んで行く。すると――――
「おっと……良い物を発見したぜ。コイツは私の好物だ!」
「好物? 何のことですか?」
「アリス、お前はそこで止まっていろ。私はちょっと、おやつタイムだ」
「おやつ? ここら辺でおやつと言うと自然の果実でも発見しましたか?」
「果実とか上等な物じゃないさ。知らなかったのか? 私は意外と悪食なんだぜ」
ミゲールは足を高く上げる。
「一体、なにを――――」とアリスは最後まで言えなかった。
ミゲールは勢いよく、地面を踏み抜いた。
地震。
彼女の脚力で大地が揺れる。 どれほど鍛えれば、足で地震が起こせるようになるのか? そんな疑問は彼女の前では、虚しい。
暫くすると、ミゲールの頭上に何かが落ちて来る。黒い何か……ポタポタと振って来る。
「黒い雨?」
「違うぜ、アリス……こいつは黒い雨じゃない。蟻《あり》だ!」
大量の蟻を雨のように頭上に浴びて、彼女の全身は見えなくなっている。
「ぎゃあ!」と異常な光景にアリスは悲鳴をあげる。
「気をつけな。こいつは、大食いだ。巨大なトロールだってコイツ等に囲まれたら秒で骨になっちまう。 それに多くて小さいから、お前の結界魔法の隙間から中に入り込んでくるかもしれないぜ」
「トロールですら食べてしまう蟻って……大丈夫なんですか! いや、大丈夫そうですね! 私は、頭がおかしくなってしまいそうなんですが???」
「私をトロールと同じ程度の生物だと思っているのかい? お前の師匠を信じろ……私は、コイツ等より大食いだぜ?」
「まさか、そんな……ミゲール先生? もしかして、蟻を食べてません?」
「あぁ、基本的に酸っぱいのに、意外と甘い個体もいて……お前も食べてみるか? 癖になる味だぜ?」
「結構です!」
「ちぇ」と悪戯を叱られた子供のように舌打ちをするミゲール。
「本当に美味しいのにな」なんて呟きながら
「瓶詰めにしてお土産にしようと思ってるのに、これじゃ手伝ってくれなそうだ」
ミゲールは、おやつタイムが終わると、本当に荷物から瓶を取り出して蟻を詰め始めた。
アリスはドン引き状態だ。
そんなやり取りもありながら、ジャングルを進むと目的地が見えた。
古代遺跡。
石造りの建設物。 建設されて、数千年は経過しているように見える。
要するにピラミッドとか言われる建物だった。
「……はい」とアリスは死んだ目で答える。
彼女の周囲には、ミゲールが用意した荷物が大量に散らばっている。
加えて、ミゲール本人は豪華な椅子に座っている。
アリスは風の紋章に力を込める。
結界魔法と同じで、彼女の周囲は風で覆われていく。 違うのは、彼女の体が浮いていくこと――――いや、それだけではない。
ミゲールも椅子に座ったまま浮き上がる。 彼女の荷物も同様だ。
「そうだな。目的地の方向は――――あっちだったな」
「本当に大丈夫です?」
「心配するな、地図は持ってる」
「……世界地図じゃないですか!」
「あん? 当たり前だろ? 国内のダンジョンで手軽に済ますとでも思っていたのかよ」
「か、海外旅行! 許可は取っているのですか!?」
ミゲールは宮廷魔法使い。
アリスは公爵家の1人娘。
勝手に海外に行くのはまずい……というよりも、
「……と言うよりも、私が魔法で国を越えたら不法入国になるのでは?」
「細かい事は良いんだよ! 金がない時は、走って、泳いで海外の古代遺跡までいってたんだぞ!」
「無茶しすぎでは!」
「構わねぇよ。目的地の王族は、だいたい私のダチみたいなもんだ。捕まっても、釈放される」
「捕まることが既に嫌なんです!」
そんなやり取りを繰り広げていたが、口でアリスはミゲールは勝てない。
「――――わかりました。飛びます……」
アリスは納得してない。 納得してないが、あきらめてミゲールに従う事にした。
風魔法を使用して、浮き上がった体を高速で飛ばす。
「やっほー!」とミゲールは楽し気に声を上げた。
それから彼女は鉱石ラジオから流れる音楽を楽しみながら――――やがて、寝ていた。
彼女の様子は、優雅な旅行そのもの……
「人に働かせて、自分は惰眠を貪る……師匠でなければ殴ってるところですよ!」
ブルブルと拳を握りながら言う、アリスの言葉は聞こえてないだろう、きっと……
それから2、3時間の飛行時間。 超高速で飛んでいたアリスは国を越えて、あさっさりと海外に到着する。
「もう到着か。風属性の連中は、移動に使えて便利だな!」
到着した場所はジャングルだ。
視界には森林が広がる。人間の気配がなくなった。
人工物……それも建設物は見えない。
「本当に、ここが目的地なんですか? 古代迷宮なんて見当たりませんよ?」
「いやいや」とミゲールは首を振り、こう続けた。
「旅行ってのは、自分の足で歩かないとな。まだ若いのに楽なんてしちゃいけないぜ!」
「よく言えます。2時間以上も私に飛行魔法を使わせておいて……今、旅行って言いませんでしたか?」
後半の疑問を無視しながらミゲールは、
「私から言わせてもらうと、お前こそ、『よく言えますね』って感覚だぜ。2時間どころか2日は空を飛べるくせに――――今だって、結界魔法を利用しながら、同時に飛行魔法で浮いてるじゃねぇか」
「魔法の燃費が良すぎて、反論できない自分の才能が憎い――――でもでも、結界と飛行を同時で使ってるのは自衛のためですよ。こんな軽装でジャングルを進んで、変な虫や獰猛な魔物に襲われたらどうするんですか?」
「まぁ、環境に適応できなきゃ死ぬだけだからな。私の弟子なら、そのくらい覚悟してついてきな!」
「はいはい」とアリスはミゲールの後ろをついてジャングルを進んで行く。すると――――
「おっと……良い物を発見したぜ。コイツは私の好物だ!」
「好物? 何のことですか?」
「アリス、お前はそこで止まっていろ。私はちょっと、おやつタイムだ」
「おやつ? ここら辺でおやつと言うと自然の果実でも発見しましたか?」
「果実とか上等な物じゃないさ。知らなかったのか? 私は意外と悪食なんだぜ」
ミゲールは足を高く上げる。
「一体、なにを――――」とアリスは最後まで言えなかった。
ミゲールは勢いよく、地面を踏み抜いた。
地震。
彼女の脚力で大地が揺れる。 どれほど鍛えれば、足で地震が起こせるようになるのか? そんな疑問は彼女の前では、虚しい。
暫くすると、ミゲールの頭上に何かが落ちて来る。黒い何か……ポタポタと振って来る。
「黒い雨?」
「違うぜ、アリス……こいつは黒い雨じゃない。蟻《あり》だ!」
大量の蟻を雨のように頭上に浴びて、彼女の全身は見えなくなっている。
「ぎゃあ!」と異常な光景にアリスは悲鳴をあげる。
「気をつけな。こいつは、大食いだ。巨大なトロールだってコイツ等に囲まれたら秒で骨になっちまう。 それに多くて小さいから、お前の結界魔法の隙間から中に入り込んでくるかもしれないぜ」
「トロールですら食べてしまう蟻って……大丈夫なんですか! いや、大丈夫そうですね! 私は、頭がおかしくなってしまいそうなんですが???」
「私をトロールと同じ程度の生物だと思っているのかい? お前の師匠を信じろ……私は、コイツ等より大食いだぜ?」
「まさか、そんな……ミゲール先生? もしかして、蟻を食べてません?」
「あぁ、基本的に酸っぱいのに、意外と甘い個体もいて……お前も食べてみるか? 癖になる味だぜ?」
「結構です!」
「ちぇ」と悪戯を叱られた子供のように舌打ちをするミゲール。
「本当に美味しいのにな」なんて呟きながら
「瓶詰めにしてお土産にしようと思ってるのに、これじゃ手伝ってくれなそうだ」
ミゲールは、おやつタイムが終わると、本当に荷物から瓶を取り出して蟻を詰め始めた。
アリスはドン引き状態だ。
そんなやり取りもありながら、ジャングルを進むと目的地が見えた。
古代遺跡。
石造りの建設物。 建設されて、数千年は経過しているように見える。
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