魔法令嬢アリスは星空に舞いたい

チョーカ-

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第6話 クロに芽生えた夢と希望

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 いつの間にか、時間は夕方の近くになる。

 クロの身分は王子。

 流石に、真夜中に馬車を走らせるのは、安全と言えない。

 アリスの家の周囲は森ということもある。

「次はいつ来るの?」とアリスの声。 

 彼女の両親は少し驚いたようだった。

「あんなにもお見合いを嫌がっていた娘が、エドワード王子を気に入っている!」

 しかし、当の本人は「お見合い?」とキョトンとした表情。

 アリスは、クロと遊んで友達になった感覚なので、これがお見合いだということを完全に失念していたのだ。

「じゃ、来週……月に2回くらいは遊びに来るよ」

 クロはアリスと同じ8歳。8歳とはいえ、王子という身分は忙しい。

 それを無理してでもアリスに会いに来るという意味。それは――――

 両家の関係者は喜びをみせた。

 別れ、それから――――

 ゆっくりと揺れる馬車の中。剣聖オスカーはクロに訊ねる。

「クロ、いかがでしたか? マクレイガー公爵のご息女は?」

「不思議な子だった。なんて言うか……うん、やる気にさせてくれる」 

「ずいぶんと気に入った様子ですね」

「そうだな……」とクロは今日の出来事を思い返しているように見えた。

 それから、おもむろにクロはオスカーの顔を真剣に見た。

「相談がある。この国で一番の魔法剣士を剣の師匠に……オスカーと別の師匠を迎えたい。どう思うか?」

「私以外ですか? それは構いませんが、理由を聞いてもよろしいでしょうか?」

「20年……いや、10年以内で国内最強の魔法剣士の技を全て修得する」

「ほう……」 

「俺が10代で最強の魔法剣士になって、さらに魔法と剣を磨いて――――なおも、魔法剣士が中途半端と笑う奴がいるかな?」

「いませんね」とオスカーは、どこか楽しそうに答える。

「それともう1つ。どうしても欲しい物がある」

「それは何でしょう? 私が差し上げれる物ならいいのですが」

「魔剣だ」

 クロは短く答える。 

「持ち主の心を狂気によって支配すると言われる魔剣。それを抑え込む事ができた者は――――」

「あなたは最強になれる」

 それは、他ならぬ剣聖であるオスカーの言葉、太鼓判である。

 この日――――近い将来に行われる王位継承戦を勝ち抜き、『魔剣帝』と呼ばれる英雄王が誕生する。間違いなく、その転機となったのは、アリスとの出会いに間違いはない。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・ 

 アリスとクロのお見合いから数日後。

 マクレイガー公爵家を「困った、困った」と呟いた歩き回る女性がいた。

 彼女の名前はモズリー。 アリスの家庭教師だ。

 ただの家庭教師ではない。魔法を教える専門の教師。
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