魔法令嬢アリスは星空に舞いたい

チョーカ-

文字の大きさ
上 下
5 / 42

第5話 剣聖オスカー登場

しおりを挟む
「どうも、お困りでしょうか?」

 新しい人物の声。 声と同時に現れたのは大人の男だった。

 白い髪を腰まで伸ばしてる細身の男性。

「この少年は、クロ。私の弟子であり、怪しい人物ではないと証明いたしましょう」

「――――どなたでしょうか?」とメイは、さらに警戒心を強める結果になった。しかし――――

「おやおや、私もまだ無名でしたか。それでは、これならどうでしょうか?」

 男は帯びている剣を腰から外して、その鞘を見せる。 正確には、鞘に刻まれた紋章を……

「そ、その紋章は、剣聖オスカーさまの――――そんな、本物!?」

 メイは驚き、視線をクロに向けた。

「そ、それでは、この少年は――――」

「えぇ、私の弟子は1人だけ……彼の名前はエドワード・オブ・ブラック。すなわち、エドワード皇太子ですよ」   

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 屋敷に戻ったアリスたち。 

 応接間にはアリスの両親。その向いには、クロが師匠のオスカーと並んで座っている。 メイは、扉の横に控えている。

「エドワード王子、うちのメイドが失礼をしました。どうやら娘を助けてくださったそうで、感謝してもしきれません」 

 アリスの父親の言葉。 エドワード王子――――クロは緊張した顔を見せながら。

「いえ、偶然です」とだけ答えた。その様子に彼の師匠は苦笑しながら、

「マクレイガー公爵、すでに2人は、親交を結んでいる様子。どうでしょうか? 2人の方が気兼ねなく話せるみたいですが?」

「おっと、これは私としたことが気がつかず……そうですな。ここは若い2人に任せますかな」

 そんな、よくわからない事を言いながら大人たちは部屋を出て行った。

 2人だけになったアリスとクロは――――

「クロ、王子様だったの?」

「うん、まぁそんな感じ」

「どうして教えてくれなかった」

「俺は、自分が王子なんて自覚がないんだ」

 それに……と彼は話を続ける。

「王位継承権も高くない。生まれた時には魔法の才能も期待されていたけど、紋章が宿るほどの才能もなく――――中途半端な魔法剣士になった。……いや、なるしかなかった」

「中途半端? そんなことない。クロは凄かったよ? 私を助けてくれたんだもん」

「そう言ってくれるとありがたいけど、違うんだよ」とクロは首を左右に振った。

「魔法剣士ってのは魔法の研鑽に費やせば、剣の鍛練はおろそかに、剣の鍛練に費やせば、魔法の鍛練はおろそかに……そう言われてる」

「じゃ、剣と魔法の両方を頑張ってみたら?」

「────」とクロは言葉を失った。

 アリスの表情は純粋な疑問。彼女は信じている。
 クロなら、それができると信じている。

 それがクロ自身にも伝わり────

「……そう、だな。やってみるか」

「うん、クロならできるよ。きっと!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

処理中です...