魔法令嬢アリスは星空に舞いたい

チョーカ-

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第2話 クロとの出会い

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「どうせ20歳までの短い人生! 人の5倍は楽しまないと!」

 それを信念に生きる事にしたのだ。 

 そうして、トテトテと彼女は歩く。屋敷を囲む森の中を……
 

(あれれ、どこか変。魔法の精霊さんが騒いでる感じがする)

 アリスには風の精霊が見える……わけではない。 なんとなく、その存在を感じる事ができるだけなのだが……

 普段とは違う精霊たち。 妙な不安を感じていると……

「あら?」と人の気配に気づいた。

(珍しいわね、こんな森の中に人がいるなんて……もしかしたら、悪い人が隠れているのかもしれない)

 ゆっくりと、様子を窺う。すると、川辺で釣りをしている少年がいた。

 よく見ると釣り竿を石と木で固定していて、横になっていた。

「寝ているの? こんな場所で、よく寝れるわね」

 アリスは少年を真似をして、自分も横になった。

(あら、意外とお日様の光が気持ち良いわ。洋服が汚れてしまうかもしれないけど……)

 目を閉じて、ウトウトと自分も睡眠へ――――

 でも、その時だった。 少年の釣り竿が撓《しな》り始める。

「ちょっと、ちょっと君! 起きなさいよ。魚が釣れているわよ!」

「……ん? 何? 君は……誰?」

「いいから! アレ、アレ! あれを見てよ」

「おっと!」と少年は、釣り竿を手に取った。

「これは大物だぞ!」

 興奮状態の少年だが、その小さな体が振り回されているように見えたアリスは――――

「ん? いや、お前!? な、なに抱きついてきてるんだよ!」

「い、いいから、釣りに集中しなさい! 私の力を貸してあげるから」

「力ってお前何を言って……いや、お前の体を光が包んで……これは魔力?!? お前、魔法使いか!」

「そうよ! 風の力で助けてあげる」

「……(風が後押ししてくれてる? なんて精密な魔力操作。何者だ?)」

「いいから、釣りに、魚に集中してよ!」

「あぁ、そうだな! タイミングを合わせて……ここだ!」

 水面から魚が姿を現した。

 その魚は、大きい。もしかしたら8歳のアリスよりも大きいかもしれない。
 
 少年は「えいッ!」と声をあげると一気に釣り上げてみせた。 ピチピチと地面を叩くように暴れる魚。

 それを見たアリスは少年と見つめ合うと、互いに笑い合った。

「俺の名前はエドワード……本名で呼ばれるのは少し嫌いなんだ……そうだな。仲が良い奴にはクロって呼ばれている。アンタもそう呼んでくれたら嬉しい」

 クロと名乗る少年は、右手を差し出した。 それを握手だと理解したアリスは握り返すと――――

「私はアリス。アリス・マグレガーよ。この先に家があるの……そうね、名前は好きに呼んで頂戴」
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