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第2章

第102話 攻略戦 時の回路

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再びユウトは、地下路に飛び込んだ。

 『強欲』に接近するほど時間操作の魔法がユウトを襲う。

 しかし――――

「なるほど、これなら問題はなさそうだ」

 ユウトの魔法――――魔導書の効果は肉体強化。

(意識を集中させると確かにわかる。俺の肉体に干渉しようする魔法、時間操作の効果)

 地上に残ったメリスからの支援魔法を受けて、彼の肉体強化の効果を上げている。同じ操作系であるレインも(嫌々ながら)支援の協力をしている。

 インファンは不参加。 彼は壁の寄りかかり、瞳を閉じている。

 休んでいるようにも、力を温存しているように見える。

 きっと、ユウトが作戦に失敗すると同時に、周辺ごと『強欲』に攻撃を開始するつもりなのだろう。

 この作戦に時間制限はある。

 インファンが痺れを切らしたタイミング……それもあるが、ユウトの肉体強化も効果が無限ではない。

 いずれ、時間操作の効果が貫通してくるだろう。

(それよりも早く『強欲』の元に駆け抜ける)

 その思い通り、ユウトは自身を加速される。しかし――――

「やっぱり、防御システムは時間操作の通路だけじゃないのか」

 目前に見えた人影。それはゴーレムだった。

「通常の魔物なら時間経過に耐えれないからな。自然にガーディアンはゴーレムになるわけか」

 ユウトは足を止めて杖を構える。 ゴーレムという魔物は強い。
 
 無機物……岩などでできた体。指一本の重さだけでも持ちあげれる人間は少ない。

 つまり、拳の重さで人を潰せる攻撃力。

 さらに岩の肉体は堅固。だからこそ、ゴーレムの弱点――――どこかに刻まれた魔法の命令を破壊しなければ動き続ける。

 無敵の魔物とされていた。

 もっとも――――

 おっと、ゴーレムの拳が振るわれた。それをユウトは避けると同時に魔法の反撃。
 
『炎剣《イグニスグラディウス》』 

 忘れていけない。彼は孤高特化型魔法使いなのだ。

 攻撃を防御あるいは回避して、カウンターには強烈な魔法を放つ。

 対ゴーレム戦闘に彼のスタイルは相性がよい。

「よし、撃破」とあっさり、ゴーレムを倒して先に進もうとする。

 しかし、異変を感じた。

「俺の体を覆っている強化系魔法に変化が……いや、周辺の時間を巻き戻して………」

 それ以上、ユウトは言えなかった。

 時間が巻き戻ったのは撃破されたゴーレム。完全復活した体で攻撃を再開してきた。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「火力でごり押しても、時間操作で復活するゴーレムか……それじゃ、基本に戻るか」

 ユウトは攻撃を掻い潜りながら、移動する。
 
 狙いはゴーレムの弱点。どこかに刻まれた魔法の文字。

 ゴーレムを作った者は、それを巧妙に隠しているつもりなのだろうが、どうしても見える正面より背中に隠したがる。

 背中の見えにくい場所……首筋の隙間。あるいは内股のような股座部分。

(性格の悪い奴は、足裏や手のひらに隠してたりもするが……今回は性格が良いパターンだったな)

 今回は首の隙間。ゴーレムが首を上下する事で僅かに見える魔法文字。

 そこを狙ってゴーレムの体を駆け登ったユウトは――――

『炎剣《イグニスグラディウス》』 

 今度は炎の魔剣と化したそれを降るって、魔法文字を削り取った。

「やったか!?」

 今度は勝利を確信したユウトだったが……

「こ、これでもダメか。まだ再生を始めてる」 

 ゴーレムは再生を開始する。

「もう面倒になってきたな」とユウトはゴーレムが再起動するよりも早く詠唱を始めた。

「詠唱 凍てつく極寒の風よ 静かに我の敵を閉ざせ――――冬嵐《ヒエムステンペスタス》」

 

 
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