上 下
101 / 118
第2章

第101話 『強欲』の攻略法?

しおりを挟む
「俺が、下に飛び降りて、どのくらい時間が経過した?」  

 真剣な表情のユウト。

「えっと、一瞬だけ。飛び降りと思ったら、次の瞬間に戻ってきたようですが?」

 そう答えたメイヴは続けて、様子のおかしいユウトに問う。

「一体何があったのですか?」

「ちょっと見てな」とユウトは床の穴に対して、体の一部だけ入れる。
 
 具体的には頭だけ、上半身だけ逆さになり、落ちないように足を引っかけている。

 それから――――『炎剣《イグニスグラディウス》』

 魔法を放った。

 他の面子も、興味深く様子をうかがっている。すると――――

 宙を走る炎の魔法。それが、急加速を始めて、肉眼で捉えれない速度になったかと思うと――――突き当りの壁にぶつかる音が聞こえた。

「わかったか? この通路は、時間が加速している」

 ユウトの言葉に、メリスも反応する。 

「時間が加速している……時間操作系の魔法? 膨大な魔力が必要だけど……」

「いや、待ちなさい。つまり――――どういう事?」とレインは口をはさんできた。

「よくあるだろ? 奇妙な場所に潜り込んだ冒険者が、何日も彷徨って救出されたら、数年も経過していたって話」

「……よくある怪談話ね。え? 嘘話じゃなくて、実際にあるの?」

「魔法的には、可能かな? 魔導書の力を使って意図的に作ったのだろうな」

「よくわからないわ。時間の進みがおかしい通路を作って何の意味があるの?」

「おそらくだが――――」とユウトは少し考えた。

「防衛のためだな。ここを攻め込んで、『強欲』を倒そうとするだけで、数年も経過するとしたら?」

「下手をしたら『強欲』を倒してる間に戦争が終わっているかもしれないわね」

 レインは納得したようだ。

「でも、問題はそれだけじゃないと思いますよ」とメリス。

「時間操作を使用して、おそらく地下の中心にいる『強欲』は、何か魔素を集めている。巨大な儀式魔法を使おうしている可能性はあるわ」

「なるほど」とユウトは考える。

 このまま、強引に『強欲』を倒すために地下を進むと、討伐に成功しても、魔法によって数年が無駄に経過してしまう。

(何か、正攻法以外に攻略法を考えないと――――)

「なら、簡単だろ?」

 そう言ったのはインファだった。 彼は、こう続ける。

「時間の経過なぞ、歯牙にもかけない種族の者が2人いるだろ?」

「――――おまえ」とユウトは気づく。

 インファが言っている事は、メイヴとメリスの事だ。

 長寿のエルフなら、何年も彷徨っても大した事ではない。そう言っているのだ。

「怒っているのか? だが、現実的にはどうする? どうやって攻略する?」

「――――」とユウトは答える事ができなかった。

 しかし、当事者であるメイヴとメリスの表情は変わらない。

 ――――いや、何かを探っているように見える。

 彼女たちは、魔力と風の流れを読むことに長けている種族。もしかしたら、攻略法を見つけ出しているのかもしれない。

 やがて、彼女たちは――――

「わかりました。魔導書の力を使えば、一時的に時間操作の魔法を無効化することをできるかもしれません」

 彼女の提案。 ユウトやインファの自身を強化する魔導書使いに対して、操作系魔導書使いが、時間操作系の魔法攻撃を防御するように支援。

 そうする事で短時間であるが、時間操作系の攻撃を無効化できる――――はず。

「最大の問題は、本来なら敵同士の相手を信頼できるか……って所ね」とメリスは、そうに言った。     

  
  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

奴隷と呼ばれた俺、追放先で無双する

宮富タマジ
ファンタジー
「レオ、お前は奴隷なのだから、勇者パーティから追放する!」 王子アレンは鋭い声で叫んだ。 奴隷でありながら、勇者パーティの最強として君臨していたレオだったが。 王子アレンを中心とした新たな勇者パーティが結成されることになり レオは追放される運命に陥った。 王子アレンは続けて 「レオの身分は奴隷なので、パーティのイメージを損なう! 国民の前では王族だけの勇者パーティがふさわしい」 と主張したのだった。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...