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第2章
第94話 『憤怒』のインファの変身
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『憤怒』のインファ。 その背後を取ったのは――――
『色欲』のメリスだった。
「お前は『色欲』の魔導書使いか。減退した力が少し戻って調子に乗ったのか?」
「そうね。調子に乗って――――勝たせてもらうわ!」
メリスの体を青い炎が包む。 それは、ただの攻撃魔法ではない。
相手を操作する魔法――――当たれば、それで勝敗が決する。
だが――――
「放ってみるがいい。俺には無意味だ」
「何を――――強がりを言って!」
メリスは魔法を放つ――――『蒼き炎』
しかし、「無意味と言ったはずだ」とインファは、こともあろうに素手でメリスの魔法を掴んだ。
「なっ! 魔法を――――掴んだ!」
「なんだ、知らないのか? お前ら操作系は同じ魔導書使いには効果がない。加えて、お前よりも強い魔法で防御すれば――――」
余裕を見せるインファだった。 しかし、最後まで喋らせないと攻撃の影――――それはメイヴだった。
「斬っ!」と剣を振るう。 インファは武器である鎌で受けた。
しかし、その表情に余裕は消えていた。
「ぬっ! 自力で魔導書使いの戦いに乱入するか!」
対するメイヴは、どこか拍子抜けしたように、
「こんなものですか……魔導書使いの力量は?」
「おのれ! 自惚れを――――なっ!」と驚きで止まるインファ。
メイヴは魔法剣士。 役割としては前衛となる事が多い。
では、後衛は?
彼女の影から飛びだしてきたのは、ユウトだ。
詠唱の準備も万全の状態。 インファの目前で――――
「詠唱 我が手に宿る炎の力よ 今こそ力を見せて焼き払え――――『炎剣《イグニスグラディウス》』」
赤い炎がインファに直撃した。
ユウトの一撃――――受けたインファの体が衝撃で吹き飛ぶ。
「手ごたえは、十分なはずなんだが……」
それでも油断はできない。 それほどまでに、インファの力量は――――
「いや、インファの圧力が増している。 アイツ……力を押さえていたのか?」
「見事だ」と立ち上がるインファ。 その体は轟々と炎に包まれている。
なぜ、周囲の空気も燃えているはずなのに声が聞こえてくるのか?
そんな疑問もでないほどに、インファは圧力を放つ。
「では、そろそろ本気を――――いや、それは大人気ないか。では少しだけ、力を。力の片鱗を見せてやろう」
その手には魔導書。 なぜ、火が燃え移らないのか?
彼の宣言通り、輝きと共に魔力が灯る。
膨大な魔力。インファの全身を包み込み、彼の存在そのものを書き換えていく。
「これは――――変身?」とユウト。
確かに変身だ。 しかし、先ほどセリアが人間からハーピーの姿に変化した変身とは違う。
まるで物が違っている。その姿――――
モンド王が軍の撤退を決めた『憤怒』の力。 巨大な影の正体。
それは――――ドラゴンだった。
この幻想世界において最強の生物――――幻想種。
『憤怒』のインファ
彼が言う、その全力とは―――― ドラゴンの力を再現して全てを破壊する事だった。
「行くぞ、ここからが俺の、『憤怒』のインファが見せる本気の欠片だ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
3人は見上げる。 なぜなら、そこにドラゴンがいるからだ。
メイヴはドラゴンと戦った経験はある。
ユウトだって、A級冒険者だ。実は戦った経験がある。
メリスは……ないかもしれない。
しかし、彼等は本能で察する。
(これは違う。 これは自分の知るドラゴンと同一存在であって――――まるで別物だ)
最強の幻想種 ドラゴン。
その戦闘力の高さを熟知するメイヴもユウトも、目前の存在――――ドラゴンに変身したインファの強さ。
それは、通常のドラゴン以上の戦闘能力を有していると理解した。
「逃げるぞ」とユウトは呟く。
頷く2人だったが――――
「そう簡単に逃がすものか。啖呵を切った俺が恥ずかしいだろ?」
ドラゴンの巨体が、脱出の通路を塞ぐように素早く動いた。
「速い! あの巨体で!」
インファはユウトを踏み潰すように足を上げる。 その動作ですら速い。
回避も防御も不可能な速度で振り落とされた。
「ユウト!」とメイヴは叫ぶ。 しかし――――
「いや、大丈夫だ!」と踏み潰されたと思われていたユウト。
彼は――――
『炎壁《イグニスムルス》』
防御魔法で耐えきっていた。
巨大化しても熱さは感じるのだろう。 ドラゴンの顔でありながら、インファからは顔を顰めるような苦痛が見て取れる。
それをチャンスと思ったユウトの反撃。
反撃のために―――― 『炎剣《イグニスグラディウス》』」
彼は、炎の剣を放った。
『色欲』のメリスだった。
「お前は『色欲』の魔導書使いか。減退した力が少し戻って調子に乗ったのか?」
「そうね。調子に乗って――――勝たせてもらうわ!」
メリスの体を青い炎が包む。 それは、ただの攻撃魔法ではない。
相手を操作する魔法――――当たれば、それで勝敗が決する。
だが――――
「放ってみるがいい。俺には無意味だ」
「何を――――強がりを言って!」
メリスは魔法を放つ――――『蒼き炎』
しかし、「無意味と言ったはずだ」とインファは、こともあろうに素手でメリスの魔法を掴んだ。
「なっ! 魔法を――――掴んだ!」
「なんだ、知らないのか? お前ら操作系は同じ魔導書使いには効果がない。加えて、お前よりも強い魔法で防御すれば――――」
余裕を見せるインファだった。 しかし、最後まで喋らせないと攻撃の影――――それはメイヴだった。
「斬っ!」と剣を振るう。 インファは武器である鎌で受けた。
しかし、その表情に余裕は消えていた。
「ぬっ! 自力で魔導書使いの戦いに乱入するか!」
対するメイヴは、どこか拍子抜けしたように、
「こんなものですか……魔導書使いの力量は?」
「おのれ! 自惚れを――――なっ!」と驚きで止まるインファ。
メイヴは魔法剣士。 役割としては前衛となる事が多い。
では、後衛は?
彼女の影から飛びだしてきたのは、ユウトだ。
詠唱の準備も万全の状態。 インファの目前で――――
「詠唱 我が手に宿る炎の力よ 今こそ力を見せて焼き払え――――『炎剣《イグニスグラディウス》』」
赤い炎がインファに直撃した。
ユウトの一撃――――受けたインファの体が衝撃で吹き飛ぶ。
「手ごたえは、十分なはずなんだが……」
それでも油断はできない。 それほどまでに、インファの力量は――――
「いや、インファの圧力が増している。 アイツ……力を押さえていたのか?」
「見事だ」と立ち上がるインファ。 その体は轟々と炎に包まれている。
なぜ、周囲の空気も燃えているはずなのに声が聞こえてくるのか?
そんな疑問もでないほどに、インファは圧力を放つ。
「では、そろそろ本気を――――いや、それは大人気ないか。では少しだけ、力を。力の片鱗を見せてやろう」
その手には魔導書。 なぜ、火が燃え移らないのか?
彼の宣言通り、輝きと共に魔力が灯る。
膨大な魔力。インファの全身を包み込み、彼の存在そのものを書き換えていく。
「これは――――変身?」とユウト。
確かに変身だ。 しかし、先ほどセリアが人間からハーピーの姿に変化した変身とは違う。
まるで物が違っている。その姿――――
モンド王が軍の撤退を決めた『憤怒』の力。 巨大な影の正体。
それは――――ドラゴンだった。
この幻想世界において最強の生物――――幻想種。
『憤怒』のインファ
彼が言う、その全力とは―――― ドラゴンの力を再現して全てを破壊する事だった。
「行くぞ、ここからが俺の、『憤怒』のインファが見せる本気の欠片だ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
3人は見上げる。 なぜなら、そこにドラゴンがいるからだ。
メイヴはドラゴンと戦った経験はある。
ユウトだって、A級冒険者だ。実は戦った経験がある。
メリスは……ないかもしれない。
しかし、彼等は本能で察する。
(これは違う。 これは自分の知るドラゴンと同一存在であって――――まるで別物だ)
最強の幻想種 ドラゴン。
その戦闘力の高さを熟知するメイヴもユウトも、目前の存在――――ドラゴンに変身したインファの強さ。
それは、通常のドラゴン以上の戦闘能力を有していると理解した。
「逃げるぞ」とユウトは呟く。
頷く2人だったが――――
「そう簡単に逃がすものか。啖呵を切った俺が恥ずかしいだろ?」
ドラゴンの巨体が、脱出の通路を塞ぐように素早く動いた。
「速い! あの巨体で!」
インファはユウトを踏み潰すように足を上げる。 その動作ですら速い。
回避も防御も不可能な速度で振り落とされた。
「ユウト!」とメイヴは叫ぶ。 しかし――――
「いや、大丈夫だ!」と踏み潰されたと思われていたユウト。
彼は――――
『炎壁《イグニスムルス》』
防御魔法で耐えきっていた。
巨大化しても熱さは感じるのだろう。 ドラゴンの顔でありながら、インファからは顔を顰めるような苦痛が見て取れる。
それをチャンスと思ったユウトの反撃。
反撃のために―――― 『炎剣《イグニスグラディウス》』」
彼は、炎の剣を放った。
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