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第2章

第85話 魔導書の料理 『讃岐うどん』 その②

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 出されたのは、天ぷらの山。

 その全てが、美しい黄金の衣に包まれている。

 食べるのはどれからか? 順番に迷う。

「ん~ まずは野菜か」とユウトが手を伸ばしたのは、

『野菜のあげ揚げ』

 まずは、大きさに驚く。 

「凄い、立体の食べ物だぁ。どうなっているんだ、これ?」

 そう立体なのだ…… 芸術作品のような高さを誇っていた。

 芸術品というなら、この盛り付け。どうやったら、油で揚げる時に崩れないのか?

 よほど、丁寧に組み合わされているのか?

 皿の上には、野菜が美しく積み重ねられた状態で揚げられている。

 その高さはまるで小さな塔のようだ。キャベツ、にんじん、玉ねぎなどの野菜が一つずつ重なり合い、衣の層が交互に現れていた。

 まず、作り方の想像が難しい。

「どうやって、どこから食べようか」と迷いながら、ゆっくりと口に運ぶ。その味は――――

「まずは……衣。口に近づくにつれて香ばしさが漂ってきた。その表面はサクサクとした食感が楽しめた」

 外側はサクサク、内側はふんわり。

「味そのものは、野菜の旨味と甘み――――うん、素材の美味しさがしっかりと感じられる」

 手を伸ばしたの天つゆ。 黒い調味料に興味がでた。

 味を変化させるために、浸していく。

「果たして、どんな感じで味に変化が訪れたのか?」

 サクサクとした衣に天つゆが浸透していく。 素朴な野菜の味に、程よい甘さとしょっぱさが加えられる。

 しっとりとした食感に変化――――

  さっぱりとした天つゆにより、揚げたての野菜の油っぽさを引き締められている。

 口の中で花が咲くような美しい体験であった。

「次は――――エビかな?」

『大海老天』

 皿の上には2本のエビが乗っている。

 それが、大海老天だ。赤い尻尾が可愛らしく見えている。

 肉厚な身を口に運ぶ。

 まずはプリプリとした食感。 衣の中にはジューシーな旨味が閉じ込められいた。

 柔らかさと甘みが感じられる。身がふっくらとしており、一口食べると口いっぱいに広がるエビの旨味が堪能できた。

『ちくわの磯辺揚げ』

 そもそも磯辺揚げの磯辺ってなんだ?

 店主に訊ねてみる。帰ってきた答えは――――

 どうやら、磯辺は「海岸の周辺」を意味してるらしい。

 要するに海岸で獲れる魚や海産物を使用した料理だ。衣をつけた食材を揚げる際に、香りや風味を引き立てるために、海藻や塩などの磯辺をまぶすことが特徴。

(なるほど、俺たちはついつい忘れてしまう。ちくわとは―――― ちくわの正体は―――魚料理だ!)

 ちくわの原料は魚。 魚のすり身を加工した物がちくわなのだ。

 磯辺の風味。 真ん中に穴が空いている事で独特の弾力。

  味蕾に広がり、舌の上で調和する。

 『とり天』

 白い淡白な鶏肉に黄金の衣。

 他の天ぷらよりも白い存在として目立っている。

 その特徴的な味わいは、淡白でありながらも繊細さを持っているのだ。

 淡白な味わい……? 淡白な味わいとは、鶏肉本来の旨みが活かされていることを指すそうだ。

 とり天は鶏肉の風味を重視しており、あえて濃厚な味付けやソースを加えずに、素材の持つ自然な旨みを楽しむことができるらしい。

「だが、ここで天つゆを投入だ!」 

 素材の旨味を味わえと言わんばかりの美しい白を、黒い天つゆで暴虐していく。
 
 もうわかっている。 この組み合わせは――――

「絶対にうまいに決まっている!」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

「ふぅ……」と満足したようにお腹をさするユウト。 その前に――――

一杯のかけうどんが置かれた。 最初に食べたうどんと同じに見える。

「これは?」と店主に確認すると――――

「天ぷらの食べ方は、1種類だけじゃねぇ。 うどんの上に乗せてみろ……飛ぶぞ!」

 自信満々の店主。ここで断る理由はない。

 倍だ…… 2倍楽しめる事にユウトは感謝した。

 だが、これだけではない。 

『かけうどん』と『冷かけ』

 これはうどんの基本である。この2種類と天ぷらだけで終わるはずもなく……

 さらに新しいうどんが準備されていく。

 
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