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第2章
第78話 VS『色欲』のメリス
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メリスは構える。
だが――――
それは、戦いの構えではない。魔導書を片手で持ち、ページを開く。
それが魔導書使いの戦闘スタイル……なのかもしれない。そんな彼女が呆れたように言う。
「なんで怒ってるのか、まったく理解できないわ。あなたって普段から、魔物を倒している冒険者なんでしょ? コイツ等、人間みたいな見た目をしているだけで同じ魔物じゃない?」
だが、ユウトはそれに論じるつもりはないらしい。
「黙れ――――俺がお前を気に入らないだけだ」
それだけだ。 それだけで、言葉を無理やり終わらせた。
「なに、会話が通じないだけど」とメリスは笑う。
魔導書の力が発動した。すると、蒼い炎が彼女の体を覆う。
「それは、ダレスの時と同じ……?」
「そうよ、私の力を彼に貸してあげただけ……ただし、私の炎はダレスの力とは別物よ?」
メリスは手をユウトに向けると――――『蒼き炎』
その名の通り、蒼い炎が2つ。 ユウトを狙って放たれた。
避けるために駆けだしたユウト。
魔法使いのカン。それが、彼女《メリス》の言う通りダレスの魔法と別物だと告げている。
(この魔法、確かに攻撃を受けるとまずい。 だが、誘導性魔法。避けても追いかけて来る……なら!)
『炎剣《イグニスグラディウス》』
接近してくるメリスの魔法 『蒼き炎』
その速度は遅いと判断して、ユウトは『炎剣』を連射。 彼女の魔法を追撃した。
だが、それで終わらせない。
『炎剣《イグニスグラディウス》』と本体であるメリスに攻撃を放った。
「――――っやるじゃないの。流石、冒険者って職業だね」と直撃を受けたメリスだが、ダメージを受けた痕跡はない。
「なに! ……そうか、攻撃だけではなく防御魔物も兼ねているのか」
彼女の身を纏う蒼い炎が、ユウトの攻撃魔法を防御したのだろう。
(攻防一体の魔法。厄介だな……)
そう分析する一方で、決定打に欠けるのはメリスも同じだ。
彼女の魔法 『蒼き炎』は魔導書によるもの。
その効果は、ダメージを与えるだけではない。
ダメージを受けた対象の殺意や敵意をコントロールする事ができる。
打ち抜いた者を戦意喪失に――――あるいは逆に、別の者へ殺意や敵意を誘導する事ができる。
そういう魔法だ。
ダレス・ブラックウッドが過剰な敵意をメイヴとユウトに向けていた理由は、彼女の魔法によって支配下になっていたからだ。
もっとも――――
(もっとも、この魔法は魔導書使い同士の戦いには不利。 魔導書使いには操作系攻撃は通じない。 だから、支配下の手駒を相手にぶつけるのが鉄則なのよね)
彼女《メリス》は、ここで切り札を使う。
彼女が持つ魔導書が輝くと同時、同じ輝きが彼女の足元に円を描いた。
「魔法陣? 召喚魔法か!」
ユウトは気づくも阻止はできなかった。 彼女の全身は魔法によって防御されているからだ。
そして、彼女の召喚魔法は、彼女の支配下にある者を呼び出すもの。
つまり、この場合……
召喚されたのは――――
「ダレス・ブラックウッド……だと!?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
召喚魔法によって魔法陣から現れたダレス。
本来の彼は、エルフの里で牢に入れられているはず。
しかし、彼は完全に武装した状態で召喚されている。
その血走った眼は冷静さを失っている。むしろ、その瞳には狂気が宿っている。
メリスの魔導書『色欲』によって、殺意や敵意が倍増されてユウトに集中している。
それは、まさに狂戦士のように変貌であった。
美しきエルフの騎士。 その姿は、どこにもない。
まるでオークの戦士のような荒々しい雰囲気を身に付けていた。
「ぐぅぅぅ、ユウトおぉ!」と今にも飛び掛かってこようとする殺意。
そしてそれは――――
「行って良いわよ、ダレス。 貴方の怨敵を破壊しなさい」
メリスの命令によって動き出した。
ユウトに接近するダレス。その歩行術には予備動作というものがない。
つまり、地面を滑るように動き、体のブレがない。
一体、どのような筋肉を使えば可能だろうか?
「――――っ!(ノーモーションの動き。接近するタイミングも、攻撃してくるタイミングを読みずらい!)」
剣の間合い。 ダレスの斬撃を飛び込むように掻い潜り、避ける。
避けると当時にカウンターの―――――『炎剣』
炎の斬撃が確かに、ダレスに叩き込まれた。 しかし、そのダメージは――――
「ダメージがない! 傷すらもないのか!」
おそらく、メリスの蒼い炎。 ユウトの斬撃を受ける直前、防御魔法としてダレスを守ったのだろう。
「接近戦でダメージが与えれないとまずいなぁ」とユウトは下がって距離を取った。
ユウトだって、元後衛職だ。 巨大魔物を一撃倒すために、強力な魔法は持っている。
しかし、それは接近をしながら、同時に使用できるようなものではない。
長い詠唱と魔力を制御する集中力。 それらは接近戦を行いながら、同時にできるものではない。
要するに――――
「勝つための攻撃が思い浮かばない」
だが――――
それは、戦いの構えではない。魔導書を片手で持ち、ページを開く。
それが魔導書使いの戦闘スタイル……なのかもしれない。そんな彼女が呆れたように言う。
「なんで怒ってるのか、まったく理解できないわ。あなたって普段から、魔物を倒している冒険者なんでしょ? コイツ等、人間みたいな見た目をしているだけで同じ魔物じゃない?」
だが、ユウトはそれに論じるつもりはないらしい。
「黙れ――――俺がお前を気に入らないだけだ」
それだけだ。 それだけで、言葉を無理やり終わらせた。
「なに、会話が通じないだけど」とメリスは笑う。
魔導書の力が発動した。すると、蒼い炎が彼女の体を覆う。
「それは、ダレスの時と同じ……?」
「そうよ、私の力を彼に貸してあげただけ……ただし、私の炎はダレスの力とは別物よ?」
メリスは手をユウトに向けると――――『蒼き炎』
その名の通り、蒼い炎が2つ。 ユウトを狙って放たれた。
避けるために駆けだしたユウト。
魔法使いのカン。それが、彼女《メリス》の言う通りダレスの魔法と別物だと告げている。
(この魔法、確かに攻撃を受けるとまずい。 だが、誘導性魔法。避けても追いかけて来る……なら!)
『炎剣《イグニスグラディウス》』
接近してくるメリスの魔法 『蒼き炎』
その速度は遅いと判断して、ユウトは『炎剣』を連射。 彼女の魔法を追撃した。
だが、それで終わらせない。
『炎剣《イグニスグラディウス》』と本体であるメリスに攻撃を放った。
「――――っやるじゃないの。流石、冒険者って職業だね」と直撃を受けたメリスだが、ダメージを受けた痕跡はない。
「なに! ……そうか、攻撃だけではなく防御魔物も兼ねているのか」
彼女の身を纏う蒼い炎が、ユウトの攻撃魔法を防御したのだろう。
(攻防一体の魔法。厄介だな……)
そう分析する一方で、決定打に欠けるのはメリスも同じだ。
彼女の魔法 『蒼き炎』は魔導書によるもの。
その効果は、ダメージを与えるだけではない。
ダメージを受けた対象の殺意や敵意をコントロールする事ができる。
打ち抜いた者を戦意喪失に――――あるいは逆に、別の者へ殺意や敵意を誘導する事ができる。
そういう魔法だ。
ダレス・ブラックウッドが過剰な敵意をメイヴとユウトに向けていた理由は、彼女の魔法によって支配下になっていたからだ。
もっとも――――
(もっとも、この魔法は魔導書使い同士の戦いには不利。 魔導書使いには操作系攻撃は通じない。 だから、支配下の手駒を相手にぶつけるのが鉄則なのよね)
彼女《メリス》は、ここで切り札を使う。
彼女が持つ魔導書が輝くと同時、同じ輝きが彼女の足元に円を描いた。
「魔法陣? 召喚魔法か!」
ユウトは気づくも阻止はできなかった。 彼女の全身は魔法によって防御されているからだ。
そして、彼女の召喚魔法は、彼女の支配下にある者を呼び出すもの。
つまり、この場合……
召喚されたのは――――
「ダレス・ブラックウッド……だと!?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
召喚魔法によって魔法陣から現れたダレス。
本来の彼は、エルフの里で牢に入れられているはず。
しかし、彼は完全に武装した状態で召喚されている。
その血走った眼は冷静さを失っている。むしろ、その瞳には狂気が宿っている。
メリスの魔導書『色欲』によって、殺意や敵意が倍増されてユウトに集中している。
それは、まさに狂戦士のように変貌であった。
美しきエルフの騎士。 その姿は、どこにもない。
まるでオークの戦士のような荒々しい雰囲気を身に付けていた。
「ぐぅぅぅ、ユウトおぉ!」と今にも飛び掛かってこようとする殺意。
そしてそれは――――
「行って良いわよ、ダレス。 貴方の怨敵を破壊しなさい」
メリスの命令によって動き出した。
ユウトに接近するダレス。その歩行術には予備動作というものがない。
つまり、地面を滑るように動き、体のブレがない。
一体、どのような筋肉を使えば可能だろうか?
「――――っ!(ノーモーションの動き。接近するタイミングも、攻撃してくるタイミングを読みずらい!)」
剣の間合い。 ダレスの斬撃を飛び込むように掻い潜り、避ける。
避けると当時にカウンターの―――――『炎剣』
炎の斬撃が確かに、ダレスに叩き込まれた。 しかし、そのダメージは――――
「ダメージがない! 傷すらもないのか!」
おそらく、メリスの蒼い炎。 ユウトの斬撃を受ける直前、防御魔法としてダレスを守ったのだろう。
「接近戦でダメージが与えれないとまずいなぁ」とユウトは下がって距離を取った。
ユウトだって、元後衛職だ。 巨大魔物を一撃倒すために、強力な魔法は持っている。
しかし、それは接近をしながら、同時に使用できるようなものではない。
長い詠唱と魔力を制御する集中力。 それらは接近戦を行いながら、同時にできるものではない。
要するに――――
「勝つための攻撃が思い浮かばない」
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