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第2章

第73話 エルフの決闘 ユウトVSダレス その②

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「ダレスお兄さま。貴方が拒んで蔑んでらした外の世界。そこは――――早かったです」

 エルフの剣士であるダレスは、魔法使いであるユウトに剣の勝負で圧倒されていた。

 それをメイヴは当然のことのように受け止めていた。

「私が外に出て200年、貴方が言う只人たちが恐ろしい速度で発達していくのを見てきました。 それは、戦闘の術も同じ――――貴方の剣技はユウトに取って200年も昔の古い剣技でしかないのです」

 エルフの剣豪は、外の世界では珍しくない。 1000年も2000年も生きる彼等が剣などの武に興味を持てば、剣の達人になるために100年くらいの鍛錬は容易い。

 だから、エルフの剣は只人たちにとって研究され尽くされた武。

 剣の流派によっては、対エルフの型ですら生まれている。

 接近戦。 しかし、間合いの短いユウトの方が有利。

 少し距離を取れば良いものの、頭に血が上っているダレスは接近戦に拘るように攻撃を続け――――

 攻撃を流され、バランスを前に崩されたダレス。 そのまま、背後から肩と首を木刀で抑えられて、両手を地面に突いた。

(くっ! こんな屈辱的な姿を――――動けぬ。なぜ、肩と首を押さえられただけで、動けぬ!)

「――――まだ、続けます?」と冷たい言葉をユウトは浴びせた。

「まだ、俺がこの程度で負けるはずない」

「そう……ですか」と固めていた技を解いて下がるユウト。

 しかし、ダレスの様子がおかしい。

「俺が、この俺が只人ごときに負けるなぞ、あり得ぬ」

 再び、対峙する両者。しかし、ダレスは何かを投げ捨てた。

(……小瓶? 回復薬《ポーション》ではないみたいだが、なんだ?)

 ダレスの様子がおかしい。 

 血走った眼。 荒い呼吸。 なにより、体が大きくなっている。

 そこで気がついた。 似ている――――と。

(似ている。いや、あの時のミカエルに起きた変化と全く同じだ。それじゃ裏にレインが関わっているのか?)

 だが、それ以上の思考ができない。

(――――ッ! ダレスの動きが速くなっている。やはり、あの時と同じ物か!)

「只人が! ここで死ね!」

 受けたユウトの体が浮き上がり、背後に吹き飛ばされる。

 それに追い打ちを狙って、ダレスは前に出て来る。

「エルフの――――いや、この俺の里を我が物顔で歩き回り! メイヴと共に俺を里長から追い出すつもりか!」

「何を錯乱して、怒鳴っている。お前の里でもなければ、まだ里長じゃないだろ? お前?」

「黙れ! 黙れ! 黙れ!」と叫び散らすダレス。 その腕に魔力が灯る。

「魔法が使えたのか? ――――いや、魔法の使用は規則《ルール》違反じゃないのか?」

「黙れ! ――――『蒼き炎ケルレウス・イグニス』」   

「青い炎の魔法攻撃? 初めてみる魔法だが?」

 魔法の専門家であるユウトですら、初めて見る魔法。どういう効果かわからない。
 
(気にはなるが、わざと受けてやるわけにはいかないよな)   

『炎壁《イグニスムルス》』 

 防御壁を魔法で作り、防御する。 しかし――――

「甘いぞ、ユウト!」とダレスが前に出る。

(――――魔法と剣の同時攻撃のつもりか? いや、これは!)

 防御壁から伝わる衝撃。それに異変を感じた。 ダレスの魔法―――― 『蒼き炎ケルレウス・イグニス』」

 防御壁を迂回して、本体であるユウトを狙うように動き始めた。

「――――っ! 誘導効果が付加された攻撃魔法だって!」

 防御壁を解除すると同時に『蒼き炎』を回避する。

 しかし、ユウトの背後まで通過して行った魔法が、空中で方向転換した。

 背後から誘導性攻撃魔法。前方からダレスの剣撃が迫って来る。

(しまった。せめて盾があれば、もう少し楽に戦えたが……)

 ダレスの剣撃を剣で防御する。 背後から迫り来る魔法に対して、ユウトは振り向きもせずに――――

大地の震えテラトレメンス

 今度は魔法の防御壁ではなく、地面から土を突き上げ、『蒼き炎』  
 にぶつけた。

「この魔法使いが!」とダレスは叫ぶ。

 剣と剣を交らせて、力勝負になる。 レインの薬で強化されているダレスの腕力。

 エルフとは思えない剛剣になっていた。

 一気にユウトは押し込まれていく。

「――――この!」とユウトは、逆に力を抜いた。 力に逆らずに相手の力を利用した投げを繰り出す。

 力を利用されたダレスは宙を舞い、受身も取れずに地面に衝突した。

 このタイミング、ユウトは狙いを定めていた。

『炎剣《イグニスグラディウス》』 

 放ってからユウトは「あっ!」と気づいた。

 投げられた衝撃で、ダメージを受けていたダレスは、防御も回避も間に合わない。

 それを見たユウトは―――― 

「手加減を忘れていた」  
 
 
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