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第2章
第59話 武装トロールとの戦い
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武装トロールの一撃。 鈍器をギリギリで躱す。
背中に破壊の衝撃を受けながら前に飛び込み――――
『炎剣《イグニスグラディウス》』
魔法を放つ。
直撃した武装トロールは大きく仰け反る。
「よし! もう一度!」と2度、3度と至近距離での火炎魔法の連続打ち。
明らかな手ごたえ。大きくダメージを与えているのがわかる。
しかし、ユウトの足元に影が差す。 武装トロールの武器に意識をしていたばかりに予想外の攻撃に反応が遅れる。
その攻撃とは――――頭突き。
頑丈な防具である兜を武器に、地面を砕くような頭突きをユウトに叩き込んだ。
防御。
逃げ場もなく、盾を構えて受けたユウトだったが、全身に衝撃。
(――――ツ! 一撃で幾つかの関節を痛めつけられたか。痛みは動けないほどではないが……)
明らかにユウトの動きが鈍る。 武装トロールは、その隙に――――
「なっ! 魔力を使用!? トロールが!」
ユウトは驚きの声を上げた。 武装トロールは魔力を使い、武器を強化した。
より速く振えるように軽く―――― それでいて、より強い一撃を放てるように重く――――
その矛盾を解決するように武器への魔法強化。 加えて――――
「付加魔法《エンチャント》! それも炎を纏わせるって……俺の炎剣を真似したのか? それとも元々使えたのか?」
炎。
それは原始的な恐怖を呼び起こす。 鈍器に炎を身に纏わせて、ユウトに向けて強打を放つ。
「――――っ!? 熱い! アッツ!」と転がりながら、物理的衝撃と熱の苦しみから逃れるユウト。
それだけではない。 一瞬の攻防で、溢れ落ちたのは大量の汗。
猛熱によって体力が削られた実感を受ける。
(長期戦はまずい。ここからは短期決戦――――威力を重視した魔力を叩き込む!)
そう決めてからのユウトは早かった。 距離を取るために後ろに下がる。
それを追うように前に走り出す武装トロール。
だが、ユウトが欲しかったのは詠唱の時間。
『大地の震え』
強制的に地形を変える魔法を使用。 バランスを大きく崩した武装トロールは転倒。
立ち上がろうとするトロールの目前、掌を構えたユウトが待ち構えている。
「これは、俺の経験則なんだが……その人間離れした巨体。立ち上がるには時間が必要だろう?」
反射的に立ち上がる事よりも攻撃を優先したのだろう。力のまま、武装トロールは手を振り回す。
しかし、ユウトの攻撃の方が――――いや、詠唱を終える方が速かった。
「詠唱 凍てつく極寒の風よ 静かに我の敵を閉ざせ――――冬嵐《ヒエムステンペスタス》」
炎に対して、氷の魔法。 敵の動きを封じ込める氷結の魔法を叩き込んだ。
武装トロールの手に持つ炎の鈍器。 轟々と威圧をするように音を立てていた武器ですら、炎を消し去り氷漬けにしていく。
炎の武器ですら、それなのだ。
本体である武装トロールはどうなったのか? 語る必要があるだろうか?
「やれやれ、何とか勝てたが……主の前に苦戦しすぎたかな?」
倒した武装トロールは、今までの通り霧散して消えていく。
(今まで通り……それなら、奇妙な武器をドロップしてくれるはずだけどな)
主の前に出現する『門番』とも言える強敵。 ユウトの言う通り、倒せば武器がその場に残った。
最初の幽霊騎士なら、透明な弓
2回目の蛇女《ラミア》なら、猛毒のナイフ
(そう言えば、まだ自分で試した事もなければ、鑑定に出してもないな……)
帰宅後にドワーフ少女が看板娘として働いている店で鑑定を頼もう。そんな事を考えていると――――
「あった。でも……これか」と落胆したユウトの声。
武装トロールが消滅した後に残った武器は、彼が振り回してた炎の鈍器だ。
それはユウトの体よりも大きく。とても1人ではもって動きないように思えた。
しかし――――
「いや、見た目よりも軽いのか? 異常に振り回す速度が速すぎるとは思っていたけど……」
何とか持ち上がる重さ。 もって帰れそうではある。
「う~ん……この武器を素材として作り直せば、炎が付加《エンチャント》できる魔法の武器が何個か作れそうだな」
そう言って、ダンジョンの壁に立てかけた。
この先、通路の奥に光が漏れている。 あそこには、ダンジョンの主――――蜘蛛女《アラクネ》のシルキアや人馬《ケンタウロス》のニクシア。
彼女たちと同等の存在が待ち受けているのだ。
まさか、この巨大武器を担いだまま行って、奇襲攻撃を受けるわけにはいかない。
ユウトは警戒心を強め、光りの先に向けて歩みを進めた。
背中に破壊の衝撃を受けながら前に飛び込み――――
『炎剣《イグニスグラディウス》』
魔法を放つ。
直撃した武装トロールは大きく仰け反る。
「よし! もう一度!」と2度、3度と至近距離での火炎魔法の連続打ち。
明らかな手ごたえ。大きくダメージを与えているのがわかる。
しかし、ユウトの足元に影が差す。 武装トロールの武器に意識をしていたばかりに予想外の攻撃に反応が遅れる。
その攻撃とは――――頭突き。
頑丈な防具である兜を武器に、地面を砕くような頭突きをユウトに叩き込んだ。
防御。
逃げ場もなく、盾を構えて受けたユウトだったが、全身に衝撃。
(――――ツ! 一撃で幾つかの関節を痛めつけられたか。痛みは動けないほどではないが……)
明らかにユウトの動きが鈍る。 武装トロールは、その隙に――――
「なっ! 魔力を使用!? トロールが!」
ユウトは驚きの声を上げた。 武装トロールは魔力を使い、武器を強化した。
より速く振えるように軽く―――― それでいて、より強い一撃を放てるように重く――――
その矛盾を解決するように武器への魔法強化。 加えて――――
「付加魔法《エンチャント》! それも炎を纏わせるって……俺の炎剣を真似したのか? それとも元々使えたのか?」
炎。
それは原始的な恐怖を呼び起こす。 鈍器に炎を身に纏わせて、ユウトに向けて強打を放つ。
「――――っ!? 熱い! アッツ!」と転がりながら、物理的衝撃と熱の苦しみから逃れるユウト。
それだけではない。 一瞬の攻防で、溢れ落ちたのは大量の汗。
猛熱によって体力が削られた実感を受ける。
(長期戦はまずい。ここからは短期決戦――――威力を重視した魔力を叩き込む!)
そう決めてからのユウトは早かった。 距離を取るために後ろに下がる。
それを追うように前に走り出す武装トロール。
だが、ユウトが欲しかったのは詠唱の時間。
『大地の震え』
強制的に地形を変える魔法を使用。 バランスを大きく崩した武装トロールは転倒。
立ち上がろうとするトロールの目前、掌を構えたユウトが待ち構えている。
「これは、俺の経験則なんだが……その人間離れした巨体。立ち上がるには時間が必要だろう?」
反射的に立ち上がる事よりも攻撃を優先したのだろう。力のまま、武装トロールは手を振り回す。
しかし、ユウトの攻撃の方が――――いや、詠唱を終える方が速かった。
「詠唱 凍てつく極寒の風よ 静かに我の敵を閉ざせ――――冬嵐《ヒエムステンペスタス》」
炎に対して、氷の魔法。 敵の動きを封じ込める氷結の魔法を叩き込んだ。
武装トロールの手に持つ炎の鈍器。 轟々と威圧をするように音を立てていた武器ですら、炎を消し去り氷漬けにしていく。
炎の武器ですら、それなのだ。
本体である武装トロールはどうなったのか? 語る必要があるだろうか?
「やれやれ、何とか勝てたが……主の前に苦戦しすぎたかな?」
倒した武装トロールは、今までの通り霧散して消えていく。
(今まで通り……それなら、奇妙な武器をドロップしてくれるはずだけどな)
主の前に出現する『門番』とも言える強敵。 ユウトの言う通り、倒せば武器がその場に残った。
最初の幽霊騎士なら、透明な弓
2回目の蛇女《ラミア》なら、猛毒のナイフ
(そう言えば、まだ自分で試した事もなければ、鑑定に出してもないな……)
帰宅後にドワーフ少女が看板娘として働いている店で鑑定を頼もう。そんな事を考えていると――――
「あった。でも……これか」と落胆したユウトの声。
武装トロールが消滅した後に残った武器は、彼が振り回してた炎の鈍器だ。
それはユウトの体よりも大きく。とても1人ではもって動きないように思えた。
しかし――――
「いや、見た目よりも軽いのか? 異常に振り回す速度が速すぎるとは思っていたけど……」
何とか持ち上がる重さ。 もって帰れそうではある。
「う~ん……この武器を素材として作り直せば、炎が付加《エンチャント》できる魔法の武器が何個か作れそうだな」
そう言って、ダンジョンの壁に立てかけた。
この先、通路の奥に光が漏れている。 あそこには、ダンジョンの主――――蜘蛛女《アラクネ》のシルキアや人馬《ケンタウロス》のニクシア。
彼女たちと同等の存在が待ち受けているのだ。
まさか、この巨大武器を担いだまま行って、奇襲攻撃を受けるわけにはいかない。
ユウトは警戒心を強め、光りの先に向けて歩みを進めた。
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