53 / 118
番外編
第53話 2人との遭遇
しおりを挟む
「ちょっと聞きたい事がある」とユウトは店主を呼び止めた。
「なんだ。今は忙しい時間帯だぞ」
「そう言うなよ」とユウトは店主に、紙幣を握らせた。
「……何が知りたい?」
店主は情報屋の副業をしていた。
元冒険者である店主の元には、町の情報が自然と集まっている……らしい。
「昨日、今日で町であったスリ行為。犯人を捕まえた女性の情報を知りたい」
「……町の北側。その女性が宿を取っている」
「ありがとう。やっぱり困った時には店主だな」
「おだてても、何も出さねぇぞ」と店主は仕事に戻って行った。
「さて、居場所はわかった。ケイデンも一緒に行くか?」
しかし、彼は「……」と首を横に振った。
「……まだ、心の準備ができてないってことか?」
ケイデンは勢いよく頷いた。
「それじゃ2人で行くか?」
「あっ、はい」とオリビアはユウトの後ろをついて歩き始めた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「私たち、魔法使いであることを見込まれて、ケイデンさんは依頼を出したのに何だか複雑ですね」
「そうか? ケイデンにしてみたら、恋をした女性が見つかれば良いのあって、手段は気にしないと思うぞ」
「それは、そうですが……」とオリビアは、自身の言葉通り、複雑そうな表情だった。
「これは、冒険者としてのアドバイスだが、魔法使いは全てを魔法で解決しようとしたがる。でも、それに囚われちゃいけない」
「魔法に囚われていけない……」
「まぁ、ただの魔法使いである俺が《大魔導士》である君にアドバイスを送れる立場じゃないけどな」とユウトは自虐的に笑った。
「いえ、そんな事はありません! でも、どうしてですか?」
「ん?」
「ユウトさんなら、《魔法使い》から別の上位職業に移る事もできたのではないでしょうか?」
「ん~ どうだろうね」と彼は考えた。
上位職になるためには、その職業の者に弟子入りをする。
その実力を師に認められて、秘伝や奥義と言われる技術を学ぶ。
技術の伝授が終われば、冒険者ギルドによる正式な査定。
そうやって、上位職業として認められるのだが……
「結局、時間と金がなかったからなぁ……」とユウトは呟いた。
後衛職は危険が少ないからと言って、報酬の分け前を減らされた事があった。
その分、休まずダンジョン探索へ。 ミカエルたちが休日でも、ユウトだけは助っ人として、別パーティでダンジョンに向かう事も多かった。
「でも、今から大学《アカデミー》に入って《大魔導士》を目指してはいかがです?」
「今は金と時間ができたのは確かだが、今から大学か……」
ユウトは迷った。 長い時間、ダンジョンに挑んだ彼の戦い方は、本来の魔法使いの戦い方ではない。
さらに、魔法を使った接近戦の研究を独自で始めている。
彼が自称したがる《孤高特化型魔法使い》は上位職業の人々から見れば邪道の闘法になる。
「戦い方を矯正されるのは、ちょっとなぁ」とユウト。
それを理由に上位職業を断った。
「そうですか。残念ですね……《大魔導士》なら私でも推薦することができたのですけど」
「ん? 推薦って?」
「はい! 私は、冒険者として実地訓練を2年修めれば、大学《アカデミー》で教鞭を振るう事が決まっているので」
「そ、その歳で上位職業の指導側だったのか!」
ユウトは驚いた。 オリビアの年頃を考えれば、すぐに大学の長まで出世していくだろう。
ミカエルも、そんな子のスカウトに成功した時は、さぞ喜んだ事だろう。
(まぁ……そりゃ、大学の大幹部候補が来るなら、俺を追放するわな)
自虐的な苦笑をしながら、ユウトは目的に――――
「むっ! 其方《ソナタ》は有資格者ではないか! 奇遇ではないか!」
「奇遇って、ニクシア……私たちが有資格者の様子を見に来たの忘れたのですか?」
「――――それは本人を前に言う事ではないだろ!」
現れたのは、ニクシアとシルキアの2人組だ。
それも――――
「流れるように美しい金髪と美貌……露出の多い服」とニクシアの特徴を口にするユウト。
それはケイデンが探している女性と一致する特徴であった。
「なんだ。今は忙しい時間帯だぞ」
「そう言うなよ」とユウトは店主に、紙幣を握らせた。
「……何が知りたい?」
店主は情報屋の副業をしていた。
元冒険者である店主の元には、町の情報が自然と集まっている……らしい。
「昨日、今日で町であったスリ行為。犯人を捕まえた女性の情報を知りたい」
「……町の北側。その女性が宿を取っている」
「ありがとう。やっぱり困った時には店主だな」
「おだてても、何も出さねぇぞ」と店主は仕事に戻って行った。
「さて、居場所はわかった。ケイデンも一緒に行くか?」
しかし、彼は「……」と首を横に振った。
「……まだ、心の準備ができてないってことか?」
ケイデンは勢いよく頷いた。
「それじゃ2人で行くか?」
「あっ、はい」とオリビアはユウトの後ろをついて歩き始めた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「私たち、魔法使いであることを見込まれて、ケイデンさんは依頼を出したのに何だか複雑ですね」
「そうか? ケイデンにしてみたら、恋をした女性が見つかれば良いのあって、手段は気にしないと思うぞ」
「それは、そうですが……」とオリビアは、自身の言葉通り、複雑そうな表情だった。
「これは、冒険者としてのアドバイスだが、魔法使いは全てを魔法で解決しようとしたがる。でも、それに囚われちゃいけない」
「魔法に囚われていけない……」
「まぁ、ただの魔法使いである俺が《大魔導士》である君にアドバイスを送れる立場じゃないけどな」とユウトは自虐的に笑った。
「いえ、そんな事はありません! でも、どうしてですか?」
「ん?」
「ユウトさんなら、《魔法使い》から別の上位職業に移る事もできたのではないでしょうか?」
「ん~ どうだろうね」と彼は考えた。
上位職になるためには、その職業の者に弟子入りをする。
その実力を師に認められて、秘伝や奥義と言われる技術を学ぶ。
技術の伝授が終われば、冒険者ギルドによる正式な査定。
そうやって、上位職業として認められるのだが……
「結局、時間と金がなかったからなぁ……」とユウトは呟いた。
後衛職は危険が少ないからと言って、報酬の分け前を減らされた事があった。
その分、休まずダンジョン探索へ。 ミカエルたちが休日でも、ユウトだけは助っ人として、別パーティでダンジョンに向かう事も多かった。
「でも、今から大学《アカデミー》に入って《大魔導士》を目指してはいかがです?」
「今は金と時間ができたのは確かだが、今から大学か……」
ユウトは迷った。 長い時間、ダンジョンに挑んだ彼の戦い方は、本来の魔法使いの戦い方ではない。
さらに、魔法を使った接近戦の研究を独自で始めている。
彼が自称したがる《孤高特化型魔法使い》は上位職業の人々から見れば邪道の闘法になる。
「戦い方を矯正されるのは、ちょっとなぁ」とユウト。
それを理由に上位職業を断った。
「そうですか。残念ですね……《大魔導士》なら私でも推薦することができたのですけど」
「ん? 推薦って?」
「はい! 私は、冒険者として実地訓練を2年修めれば、大学《アカデミー》で教鞭を振るう事が決まっているので」
「そ、その歳で上位職業の指導側だったのか!」
ユウトは驚いた。 オリビアの年頃を考えれば、すぐに大学の長まで出世していくだろう。
ミカエルも、そんな子のスカウトに成功した時は、さぞ喜んだ事だろう。
(まぁ……そりゃ、大学の大幹部候補が来るなら、俺を追放するわな)
自虐的な苦笑をしながら、ユウトは目的に――――
「むっ! 其方《ソナタ》は有資格者ではないか! 奇遇ではないか!」
「奇遇って、ニクシア……私たちが有資格者の様子を見に来たの忘れたのですか?」
「――――それは本人を前に言う事ではないだろ!」
現れたのは、ニクシアとシルキアの2人組だ。
それも――――
「流れるように美しい金髪と美貌……露出の多い服」とニクシアの特徴を口にするユウト。
それはケイデンが探している女性と一致する特徴であった。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
奴隷と呼ばれた俺、追放先で無双する
宮富タマジ
ファンタジー
「レオ、お前は奴隷なのだから、勇者パーティから追放する!」
王子アレンは鋭い声で叫んだ。
奴隷でありながら、勇者パーティの最強として君臨していたレオだったが。
王子アレンを中心とした新たな勇者パーティが結成されることになり
レオは追放される運命に陥った。
王子アレンは続けて
「レオの身分は奴隷なので、パーティのイメージを損なう!
国民の前では王族だけの勇者パーティがふさわしい」
と主張したのだった。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
支援教師はリベンジする~秘められていたコーチングの力は支援系最強でした~
九戸政景
ファンタジー
魔王を倒した勇者が学長を務める学園で事務員として勤めていたティム・チャーチは恋人と親友に裏切られ、悲しみに暮れていた。そんな中、学長であるブレット・レヴィンにティムは倒されたはずの魔王であるマーシャ・オーウェルやその側近であるバート・ラーナー、更には魔王の四天王達と引き合わされ、ティムはマーシャが学長を務める学園での教職に誘われる。
伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です
カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」
数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。
ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。
「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる