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番外編

第50話 ニクシアの日常

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 ダンジョン『炎氷の地下牢』

 キング・ヒュドラを主《ボス》とする高難易度ダンジョンに部類される場所。

 しかし、隠された通路を見つけ、そこを抜けと別世界のようなダンジョンに変わる。

 その最奥にあるのは闘技場。 観客席は、広い。しかし、無人であることで虚しさを感じる。

 そんな場所で金属音。しかし、乾いた高音ではない。

 音の出所を探れば、闘技場の奥にある居住スペースに気づくだろう。

 小屋のような作り。しかし、中は異常な熱気に包まれている。

 熱しられ、赤く変色した金属を金槌で叩いて鍛えてるケンタウロスは1人。
 
 彼女の名前はニクシア。 今日は、黄金の鎧を脱ぎ捨て、趣味の武器づくりに情熱を注いでいた。

「今日はこのくらいか……」と彼女は鍛えた金属を水に入れて冷やした。

「さて……素材は少なくなってきたな」

 素材の残り数を数えた彼女は、外に出ると水で汗を洗い落とした。 それから――――

「狩るか!」と黄金の鎧で斧槍を手にした。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・  
  
 彼女が愛用する武器と防具は特殊な素材から作られている。

 その調達場所とは――――『炎氷の地下牢』の正規ルートを通り、ダンジョン最奥の場所。 キング・ヒュドラの出現場所となる。

「久々だな。悪いが狩られてもらうぞ。我の趣味のために!」

 寝ているキング・ヒュドラに奇襲を仕掛ける。 

 キング・ヒュドラは人馬の駆け足に目を開いた。しかし、もう遅い。

「問答無用!」と彼女は、怪物の首を――――9つ首ある中の1本を斬り飛ばした。

 この場所で1000年以上、生きてきた彼女は知っている。 キング・ヒュドラには攻撃の起点と言える首がある。

 そこを最初に斬り飛ばす事で、この巨蛇は大きく混乱をする。 人間言うなら、初動で武器を持つ腕を切断されたようなもの……

「あいかわらず、一度生まれた隙は立て直せないのか――――ならば、御免!」 

 加速して、飛翔。彼女は、巨蛇の体を軽々と飛び越えた。

「狙いは――――ここ!」

 着地と同時に狙っていた箇所――――キング・ヒュドラの尻尾に斧槍を叩き込んだ。

 尻尾を切断されたことで巨蛇は

「GIEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!?!?」と雄たけびを上げる。   

「うむ、では――――いただこうか」と切断した尻尾を抱え込むように持ち上がる彼女。

 痛みで怒り狂っているキング・ヒュドラであったが、ニクシアは見向きもせずに駆け出して主《ボス》の部屋から、飛びだして行った。

 残されたキング・ヒュドラは怒りをぶつける相手を失い、その場で暴れ始めた。

「よし、今日の出来はどうだ?」と住み家に戻った。 手にした報酬、キング・ヒュドラの尻尾を調べ始める。

 彼女以外は知らないであろう巨蛇の秘密。

 戦闘開始直後、僅かな時間で尻尾を切り落とすと、確定で特殊な素材を手に入れれる事ができる。

 その素材には、魔法を減退化させる効果がある――――つまり、彼女の装備は、この素材から作られているのだ。

「ほう……中々、立派な素材じゃないか。早くこれで新しい武器を――――」

「相変らず、変な趣味をしているのね」

 ニクシアは驚いた。 この場所は彼女の領域と言える。

 気づかれる入り込む事はできない。 しかし、それは人間――――冒険者に限る。

「なんだ、貴殿か。 珍妙な趣味と言うならば其方も人の事を言えぬはずではないのか――――シルキア」

 気配もなく侵入してきたのは、ニクシアの同僚と言える存在、シルキアだった。

 彼女は蜘蛛女《アラクネ》であり、別のダンジョンで魔導書を守っている。

 神々の遺産と言える魔導書を手に入れれる資格がある者――――有資格者に力を与える事が使命とされる使徒。 

 その1人――――そのはずだが……

「相変らず、ダンジョンの外に自由に出歩いているのだな。使命はどうした、使命は?」

「相変らず、堅物で心配性ですね。ダンジョンに異変があれば、すぐ帰還できる魔法が私たちにあるではないですか?」

「生憎だが、我は貴殿ほど気楽に使命を全うすることはできない」

「その割には、貴方もダンジョン内を好きに歩き回っているみたいですけど?」

「ぐっ! そ、それは……」

「わかりますよ。こんな場所に閉じこもって、外にでないのですから……でも、貴方の所に来たでしょ? 面白そうな有資格者が」

「……あの男か。たしか、名前は――――」

「ユウト・フィッシャー」

「あぁ、そういう名前だ。彼がどうかしたのか?」

「ちょっと町まで行って、彼の様子を覗いてみませんか?」
   
 彼女の、シルキアの提案にニクシアは驚いた。
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