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第9話 隠されていた謎のダンジョンを探索

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そこは決して高くない崖の間にあった。

 しかし、魔法によって巧妙に隠されている。もしも、ユウトが魔法使いでなければ、このダンジョンに気づくことはなかっただろう。

「何十年……いや、何百年も持続している隠蔽魔法。 それもダンジョンの入り口を隠すためだけに――――一体、この先には何があるのだろうか?」

 ユウトは想像する。もしも、この中で自分が死ねば――――

 きっと、その遺体は、このダンジョンと同様に数百年間も発見されることはないだろう。

 何か背筋に寒い物が走り抜けた。 しかし、それでもユウトは、魔法による封印を解く。

(それでも俺は冒険者だから――――隠蔽された古代のダンジョン。だったら行かない奴は冒険者じゃない!)

 覚悟を決めてダンジョンに入って行く。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 今も朽ちていない石畳みの道。左右の壁も滑らかな人工物。

 ユウトは探索魔法を使用する。 

 探索魔法と言っても、ただの魔力は広く周辺に飛ばすだけ。 

 それでも魔物が隠れていれば、奇襲を防げる。 不可解な空間があれば、罠や隠し部屋が発見できる。

(とは言え、長時間の魔力使用は自殺行為。明らかに怪しい場所で使用するだけ……怪しいかかの判断は、もう冒険者のカンだな)

 そうやって苦笑しながら進むと、曲がり角。 待ち伏せの可能性もある。

 探索魔法の使用結果は――――

(……いる。こいつは、ゴースト系の魔物だ。だが、こっちに気づいていない)

 身を屈めて、見つからないように魔物を観察する。

 鎧を着た騎士――――ただし、人間ではない。 その証拠に体は半透明。奥が透けて見えている。

 膨大な魔力の吹き溜まりがある場所で出現する魔物。 

(なら、この奥には……ダンジョンの奥には、魔法に関わる秘密が隠されている) 

 魔法使いであるユウトは、その価値に興奮を隠せない。 

(いや、ダメだ。今、気持ちを向けるには宝ではなく、目前の敵だ!)

 彼は隠れたまま、魔物に手をかざす。 やるなら奇襲。気づかれる前に魔法を――――

「詠唱 切り裂く風よ 疾風の如く敵をなぎ倒す剣となれ――――『風斬《ウェントゥス》』」

 魔法によって具現化させられた風属性の剣。 それが魔物の胸を貫いた。

 不意打ちであったため、魔物は反撃することも――――いや、ユウトに気づくことすら敵わずに倒れて、霧散していた。

「何百年も魔力が溜まっているはずが、強くない。なら――――この先に魔力を独り占めしている奴がいるのか?」

 ユウトはさらに警戒心を強めて進む。

 何体のゴースト系魔物を倒しただろか?  ソイツはいた。

(やはり半透明の騎士。 だが、体は明らかに今までの魔物よりもデカい)

 元になった古代の騎士が、デカい体を有していたのか? それとも、魔力の影響で巨大化したのか?

 どちらにしても、その立ち振る舞いは強者のソレ。 そして――――ユウトは見つかった。

 幽霊騎士は弓兵だったのだろう。 半透明の弓を構えると、矢を射た。

 それは剛弓の一撃。 まともに受ければ盾すら射抜かれかねない。

 だから、ユウトは盾を垂直に構えない。角度を付けて矢の威力を分散させた。

 すぐさま幽霊騎士は次の矢を弓に――――だが、ユウトが振る杖の方が速い。

「詠唱 我が手に宿る炎の力よ 今こそ力を見せて焼き払え――――『炎剣《イグニスグラディウス》』」   

 彼の腕から発射された炎が幽霊騎士に直撃。 今までのゴースト系魔物なら倒し切れた一撃ではあるが、目前の幽霊騎士は怯むだけ。

 与えれたダメージは十分と言えない。 それでも相手はこちらを――――ユウトを強敵と認識したのだろう。

 何かと取り出す。それは――――

「鈴? まさか――――召喚の魔道具か!」

 それを使用させるわけには行かない。

 彼が一番早く発動させれる攻撃魔法『風斬《ウェントゥス》』

 無詠唱で撃つも、幽霊騎士が鈴を鳴らすのが早い。

 地面には魔法陣。召喚されたのは同類――――剣を持った半透明の騎士たちが2体。 剣の魔物だ。

「1対3か。これ流石にまずいかもしれないな」とユウトは焦りを見せた。

「――――けど、対複数戦は苦手じゃない」

 次の魔法は――――

「詠唱 灼熱の炎よ、我が身を包み込み、敵の攻撃を跳ね返せ――――『炎壁《イグニスムルス》』 

 炎の防御系魔法。 炎の概念が付加された壁が出現する。

 しかし、ユウトの狙いは防御ではない。 真の狙うは敵の分断。

 召喚された騎士2体。その背後から遠距離攻撃を狙っていた幽霊騎士。

 ユウトは、その間に炎の壁を出現させたのだ。

 今、ユウトを攻撃できるのは、召喚されたばかりの剣の魔物2体のみ。

 後方の幽霊騎士は分断された事に気づいて、無理やり炎の防御壁を砕こうとしている。
 
 拳を叩きつけ、足で蹴り、サブウェポンらしき短剣で斬りつけている。

 しかし、ユウトの魔法は簡単に破壊できない。 簡単に破壊できるのなら、防御魔法ではない。

「さて、1対2なら良い戦いになる――――かな?」

 幽霊騎士と召喚された剣の魔物。その間に主従関係があるのかもしれない。

 主と分断され、取り残された事に怒りの感情をみせた
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