交わらない心

なめめ

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交わる心

交わる心⑫

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「下にいるかと思ってた.......」

自分の座席にゆっくりと近づく。そこには腕を組んではどっしりと構えて座っている吉岡がいる。この先どう話そうか、どう話したら吉岡は自分のことを受け入れてくれるのだろうか。

「内心はあのまま優を避け続けたかったけど逃げるのはよくないと思って」

あれから飯田と辻本といたのは吉岡の意図的に自分を避けるための行動だと分かると寂しくなった。今の吉岡の言葉はどこか刺々しい。

さっきいつもと変わらない挨拶をしていたのにも関わらず表情が険しく変わる。

「昼のあれは何?」

回りくどい話はせずに直球で昼の出来事について訊かれる。

「あれは·····」

優は俯いては言葉を整理していた。
何と言われたら、あれは俺の本心。
吉岡の思いに対する本心、だけど言葉に詰まるのは、そのまま言ったところでこの前の二の足を踏むような気がして怖かったからだ。

「また優の冗談?」

そんな自分の言葉を待たずに次々と吉岡は自分に問いかけてくる。

「違う·····」

「俺、優に言ったよね?あんな場で告白なんかされたら断れないって。じゃあ、告白するって何。優には恥かかせたくなかったし。俺の気持ち知ってて弄んでる?」

吉岡は机に頬杖をついては見てくる視線が冷たく感じて直視ができない·····。
あの時の言葉を羅列しただけの吉岡。

誰かが見る中で振られる辛さを吉岡は少なからず知ってるから·····。
そして額のキス。確かにあんなコールをされたら、キスのひとつでもしないとあの場の雰囲気は壊してた。周りの空気だとかを気にする吉岡に自分の行動で余計に困らせてしまっていたと痛感する。

警察に詰め寄られてる容疑者のような気分になって居心地悪い·····。

だけど、告白は決してふざけていた訳じゃなかった。

「そういうつもりじゃない。あれはっ!俺なりの誠意とゆーか·····」

逸らしたくなる吉岡の視線を逸らさずに言う。自分の想いを相手に伝えるだけでも緊張して手が震えてくる。

「でも優、前に俺の事振ったよね?そんなことある?俺は全く優の好みには当てはまらない」

「好みじゃなきゃ.......好きになっちゃいけないのかよ.......。こないだだって俺は本気のつもりだったけど吉岡は冗談だって言うから.......あの場だったら信じてもらえると思ったんだよ·····」

吉岡は優作の言葉を聞くなり両手で頭を抱えては深くため息をついた。
吉岡を困らせてるのは分かってる。呆れるのも当然だと思ってる。だけど届いて欲しくて。
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