交わらない心

交わる心

交わる心①

メッセージを送ったものの吉岡から返信がない。
鳴ってもいないのに何度もスマホ画面を開いては確認するを繰り返す。

既に打ち合わせに行ってしまったのだろうか。最悪居場所が分かれば会いに行けるが
、自分が行ったら邪魔になるんじゃないだろうかなんて思いながらも吉岡に会いに行きたくて悶々としていた。

闇雲に探す時間も充分にあるわけではなく、返事がなくちゃどうにもこうにも動くことが出来ない。教室でスマホを片手に呆然としているしか無かった。優作が吉岡のことに意識を集中させていると気づいたらクラスの女子達に囲まれていてギョっする。

「え、桜田くん綺麗」「絵に描いたような着物男子なんだけど」と一緒に写真を撮るように頼まれては、軽い撮影会になってしまい結局吉岡に会えずに午前十時になってしまった。

放送部のアナウンスと共に文化祭の開催が告げられる。
外のグラウンドでは露店の他に野外ステージが特設されているらしく、陽気な司会の声が窓の外から聞こえてきた。

吉岡と連絡が取れなかったことが気がかりだったが気持ちを切り替えて、喫茶店の準備に取り掛かる。

最初は客足がまばらであったが、昼を過ぎた辺りから徐々に混雑してくると室内の座席は満席だった。

SNSで何やら話が広まっているのか、自分が座席に飲食を運びに行くたびに「やっぱりー凄いカッコイイんだけどー」なんて騒がれては次に出てくる言葉は「一緒に写真撮ってくれませんか？」だった。

クラスの連中ならまだしも、何処の誰かも分からない女子と肩を並べて写真を撮るなんて
したくないので全て断る。

本当は男に話しかけられる方が嬉しいんだが、話しかけられるのは女子ばかり。

明らかに他校の制服を来た女子連中に長い時間、捕まったりしては断ってもしつこく連絡先を聞かれたりして、
なんとか國枝に助けてもらえたが優作の精神はすでに疲れ切っていた。