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役に立ちたい
役に立ちたい③
しおりを挟む「急に連絡してくるから慌てて引っ張り出してきたんだから」
教室と同じ階にある家庭科室を借りて楓を呼び出し、着付けをお願いする。
楓だからもしかしたら女性用しかないかと
思っていたが男性物が一着だけあったらしく持ってきてもらった。
普段は着物だが、今日は急で呼び出してしまったからか、カットソーに細身のジーパン、乱れた長い髪を隠すように深々と帽子を被っている。
カジュアルな服を着ていても女にしか見えない楓。
明らかに仕事終わりで寝てましたと言わんばかりに欠伸をしながらも文句を言っては、着付けをしてくれた。
着付けが終わり、藍鼠色の着物に灰色に紺の線が入った帯。
我ながら似合っているなと思いながらも姿見を眺めていた。
吉岡が見たらこの姿をどう思ってくれるだろうか·····。
想像しては自然と顔が綻んでしまう。
楓はテーブルに寄りかかっては腕を組んではそんな優作の姿を見ていた。
「男物じゃなくてこの際だからあんたもこっちになってみたら?あたしに似て綺麗に仕上がるわよきっと」
「女装願望とかないから却下」
「そう?勿体ない。評判良かったら店で手伝ってもらおうと思ったのに」
サラッと楓の下で働かせられる発言をしてきた楓にゾッとしながらも改めて着物があって良かったと胸を撫で下ろす。別に楓なら嫌ではないけど、女装はしたくない。
「あんたにしては珍しくわね。学校行事に出たがらなかったじゃない」
「まぁ·····」
「もしかして千晃くんのお陰かしら?」
楓がくすりと笑う。
図星を当てられたが楓も知っているだけに、正直に話すのは恥ずかしい。
「·····気分だよ」
「千晃くんなら大賛成よ」
「はあ?別に俺は何も言ってないけど」
「だってそれ今、千晃くんに見せたいって思ってるでしょ」
「·····っ!!」
吉岡が好きだなんて楓に喋ってないのに一瞬で見破られて言葉にならないくらい驚く。
「何年親やってるとおもってんのよ。あんた伝えるなら素直に伝えなさいよ。あんた回りくどいとこあるから」
「うるさい。帰れ」
優作は楓の背中を力強く押すと家庭科室の扉を開けては教室から追い出した。
「もう、失礼ね」
扉を閉める時、楓からそんな声が聞こえたが扉に背を向け、息ついてると足音が遠ざかって行った。
しばらくしてから優作は楓がいないのを確認して教室へと戻る。
吉岡の姿を探したが、見渡す限り教室内には、いないようだった。
もしかしたらもう手伝いに行ってしまったのかもしれないけど、早く吉岡に見てもらって感想が聞きたい。
優作スマホを取り出し、吉岡にメッセージを送った。
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