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繋がりたい
繋がりたい②
しおりを挟む「ついでだから切った……」
吉岡に不評であることを危惧していたが、犬の毛並みを撫でるかのようにワシャワシャと両手で頭を掻きまわされる。折角、整えた髪を乱されて「何んだよ」っと睨みつけると吉岡は高笑いした。
「だってさ、優が髪短いのすげぇ新鮮。つかサラサラ」
嬉しいような恥ずかしいような何とも言えない気持ちになったが頭から伝わる手にこんなに嬉しいと思ってる自分もいる。
「おい、やめろよ」
顔が熱くて胸がじくじくしてこそばゆい。
優作は吉岡の手を払いのけて、掻き回されてグシャグシャになった髪型を整えると
こうやって口角を上げながら触ってきてくれるってことは不評では無いんだと安堵した。
「なんか余計に王子感増した」
「王子感って·····。そんなつもりで切った訳じゃないけど」
「でも優は王子様気質じゃん?俺に飯奢らせるし?世話が焼けるし?」
吉岡は背もたれに手を掛けては頭上からニヤつかせながら見下ろしてくる。
「それはお前がいいって言うから。別に世話を焼かせたいからあんなことになった訳じゃねぇし.......」
少し上から目線の吉岡にイラッとしながらもムキになっていい返すと、吉岡は目に涙を浮かべ笑っていた。
「冗談、冗談。優をからかってみただけ」
「うわ、吉岡最悪」
こんな似たようなやりとり、前にもあったような気がした。俺が吉岡に冗談で色気のある言葉を言って吉岡が慌てるのが面白くて笑っていた時。
だけど今は完全に立場が逆になっている。
今そんなことを吉岡に出来るわけがない。
優作はあの時の自分を思い出しては、口元を両手で覆って隠す。吉岡を何とも思ってなかった時とはいえ、よくあんな事が出来ていたなと穴があったら入りたい気分になった。
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