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恋しい
恋しい②
しおりを挟む「優、待って」
全授業が終わり、HRが終わる。
優作は一日の終わりの終業のチャイムが鳴ると同時に教室を出ると背後から名前を呼ばれて立ち止まった。
自分の名前を呼んでくる奴なんて吉岡しかいない。しかし、振り返ることは出来なかった。 今、吉岡と話なんかしたら多分、ボロが出て助けを求めてしまいそうになる。
優作は心を鬼にしてそのまま歩き進めたが、バタバタとした足音と一緒に背後から気配を感じては、階段手前で手首を掴まれた。
「待ってよ」
吉岡が手首を掴んできている·····。
触れられて嬉しいのに浮ついてなんて居られない·····一刻も早く離してほしい。
「·····」
「何で俺のこと避けてんの」
「別に·····」
「俺が重いから?」
「違う·····」
一層のこと「お前が重い、近づくな」と言って突き放した方が吉岡の為にもなるなんて分かっているのに、強く突き放すことができない。
吉岡の落ち込んだ表情を見るのも吉岡に酷いやつだと嫌われるのも怖い。
「じゃあなんで」
本当は自分だって吉岡なんか避けたくない。
水澤とお前を関わらせたくないから·····なんて言葉が喉まで上がってきては寸前で飲み込む。
「お前には関係ない」
「そればっかじゃん。関係大ありなんだけど。優が俺のこと重いって思っていようが俺は優のこと大切に想ってるし、そんな奴が毎日暗い顔してるのは見逃せないんだけど」
「·····」
吉岡の口から心が踊るような言葉が次から次へと自分の耳に入ってくる。
大切に想ってるなんて言葉を聞いて喜ばない訳が無い。でも今は素直に喜べなかった。
自分が拒絶しても距離を埋めようとしてくる吉岡に根負けしそうになる。でもそんなことしたら水澤とのことに巻き混むことになるのに·····。
「分かった。じゃあ聞くけど、優って水澤と付き合ってんの?」
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