交わらない心

好きだから守りたい

好きだから守りたい①

「千晃くーん。こっちこっち」

週末の午後、楓さんに誘われて街方面の駅前の喫茶店に足を運ぶ。楓さんのお店の最寄り駅で週末だからか、人がごった返していた。
喫茶店に入ると右手窓際から自分を呼ぶ声が聴こえてきて声の方を向く。

窓際の奥の席で着物姿の楓さんが手招きをしていた。

店員さんに「1名様ですか？」と案内されたのを「1人来ているので」と躱すと楓さんの元へと真っ先に向かった。

「急にごめんねー。本当はゆっくりご飯でもと思ったんだけど急ぎだったから。出勤前しか時間が無くて·····」

「いいえ。僕も楓さんに久しぶりに会いたかったので良かったです」

俺は楓さんに一礼すると「座ってちょうだい」と楓さんに促されて楓さんの向かいの席に座る。千晃が座るなり声を出しながら大きなため息をつくと両頬を優しくプニプニと指で引っ張られた。

「はああああ。相変わらず千晃くん、可愛いくて触りたくなっちゃう」

今では楓さんがどういう人なのか分かっているし、連絡取り合う中だからスキンシップに驚いたりしないが、最初こんな風にされたとき襲われるんじゃないかと思うほどの恐怖心があったことを思い出す。

「あらヤダ。あたしったら、つい」

反応に困りながら楓さんにされるがままに苦笑を浮かべていると、楓さんがハッとしたように我に返っては「ごめんなさいね」と謝ってきた。そうしているうちに店員さんが水を置きにくると千晃はメロンソーダを注文する。

「最近の優ちゃんの様子はどう？」

店員さんが去っていったタイミングで楓さん二問われる。静かに珈琲を口にする姿は美しく、やっぱり優は楓さん似なんだと改めて関心した。