交わらない心

なめめ

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離れたい·····

離れたい③

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立ち込める煙と煙草の独特な香り。     

「僕が挑発したら顔真っ赤にして。あの後優作、襲われなかった?」

水澤が鼻で嘲笑う。吉岡を馬鹿にしたような笑い方に腹が立った。

「吉岡はそんなことする奴じゃない。」
「どうかな?今にも逆上して飛びかかってきそうだったけど?」

「逆上して人の首締めてくんのはあんただろ」

「人聞きの悪いなー逆上じゃなくて躾だよ。
優作のたーめ」

「俺はそんなのは好みじゃない」

「好みも何も僕は心配なんだよ。あーやって優作の周りをチョロチョロしてる虫ケラに横取りされたくないからね。  それにあんなに敵視されたらさすがに僕も見逃すなんてできないよ」

水澤の言葉ひとつひとつに腸が煮えくり返りそうになる。自分ならいくら侮辱しようが構わないが吉岡を虫ケラ呼ばわりするのはいただけない。

「ねぇ、優作。どうしたら吉岡くんは君のこと諦めてくれると思う?」

吉岡を煽っておいて諦めさせようとしてるなんて矛盾してる。だけど、ここで反論して水澤を刺激したらもっと吉岡に挑発だけじゃ済まないような気がして怖かった。

こいつの目的は俺だし、吉岡が俺の事を好きだったとしても俺さえ水澤の言う通りにすれば水澤も吉岡に目がいかなくなるんじゃないんだろうか·····。

ならば一層のこと郷に入っては郷に従え。
自分が我慢すれば……。

「俺が·····」

優作は強く拳を握ると俯いて震える声を振り絞る。束縛なんて嫌いだしこいつのいいなりになるなんて死んでも嫌だけど吉岡をこいつの手から守りたかった。

「俺が、あんたのもんになったら·····吉岡は諦めると思う……そしたら、あんたは吉岡に近づかない·····?」

水澤は煙草を吸い終えると吸殻を踏んづけては優作に近寄ってきた。

ニヤリと口角を上げて笑うと顔を右手で掬われ、見たくなくても目線の先が水澤になる。

「そーだね。優作はやっぱり賢いね」 

吉岡が絡んでなければ適当に突き放していた。悔しいけどこんな奴と付き合いたくなんかない。だけど、これで吉岡に迷惑がかからないのなら身を投げ出してもいいと思えた。

優しいけどどこか支配で塗れたその目。
水澤の手が頭に乗っかり優しく撫でられることに寒気がした。

吉岡のいつも撫でてくる感触と全く違う。
吉岡のは荒々しくてもどこか温かみがあって心地がいい……。

水澤の冷たい手が自分の頭を掻き回す度に
自分で選んだ道なのに吉岡に助けを求めたくなる。

この手じゃない、吉岡の暖かい手がいい。
こいつじゃない、吉岡の隣がいい。

好きでもないやつに触れられて、今まで自分がしてきたことを後悔した。

それは、俺は吉岡のことが·····好きだったなんて気づいてしまったからだ。






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