交わらない心

なめめ

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俺はあんたのじゃない

俺はあんたのじゃない③

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半分呆れ顔の楓と呆気にとられた水澤を横目にみては、そそくさと店を出る。
周りのすれ違う人を掻き分け、一目散に駅まで歩いては、改札を通ろうとスマホを取り出そうと尻ポケットに手を入れる。

……ない。

いつもあるはずの物がないことに気がつく。
両サイドのポッケに手を当てるもあるのは自分の臀部の肉だけで、大事なものが入っていない。
ハッとしては、いつも楓の店の椅子に座る時、スマホはテーブルの上に置いていたことを思い出す。
今日は水澤から早く離れたいのが先行して、そこで忘れてしまったのだろうか……。

戻りたくないが、戻らないと家に帰れないだけに優作は深くため息をついては踵を返した。


「へぇー優作って友達少ないんだね。登録が楓さんくらいで驚いたよ。」

すると、声がしたかと思えば目線の先には水澤がスマホを弄りながら立っていて優作は心臓が止まりそうなほど喫驚した。水澤の手元には見覚えのある黒いスマホ。

「おい、それ返せよ」

そのスマホを差して水澤に声を掛けたが、奴は一向に返す気配がない。
別に見られて困るものはないが、他人に見られるのは気分は良くない。

「彼氏としては安心したよ。他の男と繋がってたりしたら気が気じゃないからさ」

「あんたの恋人になった覚えなんかないけど」 

水澤は鼻で笑うとこちらに向かってきてはスマホを渡してきた。
一瞬でも絡む手を不快に感じたが、戻ってきたことに安堵する。

「でも、そんな君が吉岡くんだけは仲良いみたいだね?クラスの女の子達が言ってたよ。あれはただの友達·····?」

昼の一件で水澤が吉岡のことをスルーするとは思ってはいなかったが、こんなに早く周りに聞きこんで
嗅ぎまわっている執念さに鳥肌が立つ。

「友達·····だよ·····」

自信をもって答えればいいものなのに、言葉が尻すぼみになる。
友達だし、吉岡もそう言っているけど改めて問われると自信がなくなる。
それは紛れもなく吉岡の俺に対する感情が少し違うからだ。

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