交わらない心

なめめ

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俺はあんたのじゃない

俺はあんたのじゃない①

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家にいると落ち着かない。
放課後、吉岡と別れた後に優作は私服へと着替えては楓の店へと向かう。
店に入るなり楓はカウンターで片手に煙草を持ちながら「あら、優ちゃん。おかえり」と出迎えてくれた。

楓の真正面の席に座り、一息つく。

「今日は学校行ったんでしょうね?」
「あぁ。だから何?」

普段行っていないのがバレバレなのか疑いの目を向けてくる楓。

「行ったんならいいんだけど。卒業だけはちゃんとしなさいよ」
「はいはい。つかお前、なんで吉岡に連絡先教えてんだよ」

「いいじゃない。千晃くん、優しいし可愛いし、誰かさんと違って素直だし」

「その誰かさんは目の前の奴に育てられたからこの結果だと思うけど」

「うわっ失礼ねー。いっその事、優ちゃんが千晃くんに落ち着いてくれたらあたしも安心なんだけどねー」

時折、煙草の灰を気にしながらも優作のひねくれた返答にも笑って返す楓。
優作は楓が放った言葉に動揺して出された果汁ジュースに口を付けた瞬間に喉に詰まらせた。

「げほ····はぁ!?それはない」
「またーお似合いだと思うけどね?」

そういう対象として好きとかじゃない·····。
確かに吉岡が他のやつといると胸がザワつくことが多くなったが、それは友達だからの嫉妬であって深い意味などある訳がない。

でも楓は人と沢山関わってる分、人に対する目利きには優れていた。
だから余程吉岡が良い奴なんだなと信用できる。

誰にも話せないからこそ楓には話せる。 
水澤のことも、楓に話せば気持ちの面で軽くなるような気がした。
今回のことは自業自得だけど、誰にも話せず自分で抱えるよりは·····。

「楓。こないださぁ、店に来てたスーツの·····」
「いらっしゃーい」

話を切り出そうとしたとき、後ろの扉からカランとベルが鳴る。
それに気づいた楓が扉の方を向くと笑顔で挨拶をしたのを見て、優作も振り返った。


まじか·····。
その人物を見た途端、全身が凍りついたかのように強ばり、緊張が走った。

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