交わらない心

誰だよそいつ

誰だよそいつ①

千晃は握った拳を額に当てて深くため息を吐いた。あまり干渉しすぎるのは良くないし、優作に意識させないように振舞ってるけど気持ちが前へ前へと止められない。

「千晃、桜田は？」
「水澤に連れてかれた」

意気消沈しているところに、飯田に話しかけられ顔を上げると辻本と一緒に自席に集まってきていた。

「えっなんで。あいつ今日来たばっかじゃん」

「優が·····授業中寝てて水澤に注意されたんだよ·····」
「そんなんで呼ばれるなんておかしくね？」
「うん·····」

辻本が驚くのも正しくその通り、たかだか担任の授業で寝ていたのを注意されただけで呼び出されるのは意味が分からない。

ただ一連の出来事を見ていた千晃が一つ気になることといえば、水澤が優作を見る目はどこか教師としてではなく、彼のことなら何でも知っているような、意地悪い目をしていた。

そして、突然聞こえてきた艶めかし優作の声。思い当たる節があるとすれば、優作が夜な夜な遊び歩いていることと関係しているような気がした。

今朝の首筋のキスマークを思い起こさせる。
千晃自身、優作に本当はこんな身売りをするようなことはして欲しくない。ただそれ以上に優作の心の傷は深いような気がして強くは言ってやれない。

それに彼に好意を伝えてしまった以上、あまり過干渉すぎてウザがられても嫌だった。