交わらない心

思わぬ再会

思わぬ再会④

向こうだって偶然だとしても未成年相手にあの場にいたことは不利なはずだ。
口止めでもされるんだろうか·····。

それにしてもあの瞳に見つめられるのは寒気がする。衝動的とはいえ、よくあの男に抱かれたものだと感心するほどだった。

「あぁ」

優作は深く深呼吸をすると水澤はその場から立ち上がり、教室を出ていった。
水澤が居なくなり、自分も後を追う為ように座席を立ち上がったとき、吉岡と目が合う。
眉尻を下げて表情から心配だと訴えてくる。

「吉岡、ちょっと行ってくる」
「あーうん。気をつけて·····」

赴任してきたばかりの教師に呼ばれるなんて普通じゃありえない。吉岡は自分と水澤との間に何かあることに勘づいてもおかしくなかった。そんな吉岡を気に留めながらも教室を出ると水澤の後について歩く。

階段を登り、四階の最上階へと到着すると
奥の教室の扉を開けて水澤が少し離れていた俺を待っていた。待っている男に急かされるように少し早歩きで辿りついてはその中へと入る。

折りたたみ式の繋げられたテーブルに
壁一面の本棚には教材であろう本が沢山並んでいた。見渡した本はどれも数学関連のものばかりだし、数学準備室なのだろう。

云わば、水澤の城だ。
すると扉がパタンと閉じられ、カチッと内鍵が閉められたような音がすると、水澤は両腕を組んで扉にもたれ掛かるようにして佇んでいた。