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優の秘密と亀裂
優の秘密と亀裂③
しおりを挟む「桜田っていえばさぁ。そんなよっしーの前で言うのもだけど、桜田の噂知ってる?」
「あー1年か2年が見たとかいう掲示板で噂になってるやつだろ?」
辻本がスマホの画面をスクロールさせ始める。
何のことを言っているのか全く検討がつかない千晃を他所に飯田が思い出したように話に乗っかってきた。
ゲームやアイドルのSNSを覗くことはあるが、自らアカウントを使って呟くことは滅多にない。
学校の掲示板の存在は知ってはいるが、そんなのを見たところで余計な個人の見解で繰り広げられる会話は
自分に不要な情報なので見てはいなかった。
でも、優作が何か書き込まれていると知って気にならない訳がなかった。
「そうそう」
「待って。俺、掲示板とか見ないから話全然、分からんないんだけど」
「所詮、噂だろ。千晃は気にしなくていいよ」
「これ」
「おい、辻本」
飯田が見せなくていいと言うように辻本の手を掴んだが時すでに遅しで、辻本は掲示板の画面を見せてきた。
「桜田が男連れて夜な夜なホテル街歩いてるって話。桜田がゲイはいいとしてそれは桜田が好きなよっしーとしてどうなのっていう.......」
どこの誰かも分からない匿名で本当か嘘かも分からない言葉達が次々と交わされている。
『あのかっこいい桜田先輩、男とキスしてんのみたぞ』だとか『俺はイチャついてホテル街歩いてるのみたw』とかしまいには『いっつも食堂で一緒にいるのって彼氏w?』と千晃のことまで書かれていることにショックというよりは怒りが込み上げてきた。
たかだかネット上の書き込みに心を乱されるなど馬鹿馬鹿しいが、人の不幸やゴシップに群がるハエ共が心底気持ち悪いと思うと同時に自分は優作のことを何も知らないのだと思い知らされた。
プライベートなんて全く知らない。
どんな家に住んでいるかは勿論、家族はいるのか。普段の休みの日は何をしていて、何が好きだなんて分からない。
学校にいるときの彼しか知らない。
それなのに一丁前に優のことが好きだなど、良く言えたものだった。
「まぁ何が本当か分からないけど、俺は千晃を応援するよ」
「あーあ俺、優のこと好きなのになんも知らないのが情けない」
飯田が慰めるかのように声をかけてくるが溜息が出る一方だった。
そういえば今朝、珍しく楽しそうに登校してきた優作。
なんで楽しそうだったのか聴かなかった。
否、きっと篠塚となんか嬉しいことでもあったんだと思って聴けなかった。
それから昼に屋上へ行ったきり教室に帰ってくることはなかった彼。ただ一瞬だけ、教室の前通った優作が朝の雰囲気と違っていたのを見た。こう、暗いような。冷めたような。
彼がどこへ行ったのかも何があったのかも知らない。
飯田たちより長い時間いるはずなのに何も知らないのが途端に虚しくなった。
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