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優の秘密と亀裂
優の秘密と亀裂①
しおりを挟む「そういえば、桜田とどうなったわけよ」
放課後、飯田と辻本と駅前のファーストフード店で寄り道をすることになった。
真正面の飯田がフライドポテトをつまみながら問いかけてくる。
「どうって…別にどうもなってないよ」
特に進展があるわけでもなく、優作の様子を探りながらも当たり障りない会話をしているだけ。
好意を自覚してからというもの、彼を相手にするのに人一倍神経を使っている自分がいた。
「なになに、よっしー桜田くんとなんかあったの」
飯田との話の間を割るようにして、何も知らない斜め向かいの辻本が食い気味で
テーブルに乗り出してきた。辻本には俺が優作のことが好きなことを打ち明けてはいない。
この手の話は嫌悪感を抱く人が少なからずいるだけに慎重にならなければならなかった。
辻本なら大丈夫だと思うが、口にするのは勇気がいる…そんな言うか言わないか悶々としている
千晃を見て、飯田が唐突に「俺さー千晃のこと好きなんだよね」とボソッと呟いた。
予想外の告白に辻本が椅子から転げ落ちるほど体を仰け反らせて驚くと
「まじで言ってんの?」と顔を近づけて問うてきた。
飯田は辻本のオーバーリアクションとバグった距離感に溜息を吐く。
千晃自身も初耳の話で思わず後一口ほどのバーガーをトレイに落っことしそうになった。
「お前近いわ」
「じゃあ、もしかして、お二人さん付き合ってんの?」
「いや、付き合ってないし、知らない。え、ごめん。飯田は俺の事好きだったなんて気づかなくて…」
飯田からはそんな素振り一切なかったし、それどころか優作のこと好きだなんて打ち明けてしまった。
途端に申し訳ない気持ちになり、肩を竦める。わざわざ辻本のいる前で告白してくるほど飯田も悩んでいたんじゃないんだろうか…。どんな形でも気持ちを伝えられた以上、ちゃんと千晃の気持ちを返さなければと思っていると
「冗談だよ」と正面から声が聞こえた。
顔を上げて飯田に視線を向けると眼鏡のブリッジを押し上げて、口角を上げていた。
「本気にすんなよ。そして、辻本お前声でけぇーわ。…でも千晃は好きな人いるんだろ?」
飯田の問いかけによって漸く、彼の意図を察した。
優作のことについて打ち明けにくさを感じていた俺に自ら爆弾を放り投げたことによって辻本への衝撃を
抑え、緩衝材になってくれていたのではないだろうか。
話が二転三転することにイマイチ頭が追いついていないのか、「え、どういうこと?」と
俺と飯田を交互に見る辻本に、千晃は「辻本落ち着いて聞いてほしいんだけどさ」と意識を
こっちに向ける様に促す。
「俺さ…優のことが好きなんだよ」
両手を膝の上に置いて、辻本の顔を見ながら打ち明ける。
やはり改めて口にするのは恥ずかしくて、友達の反応が怖い。
緊張で今胃袋に収まったばかりのものを吐き出しそうになるのを堪え、辻本の反応を待つ。
「え?飯田がヨッシーのこと好きでよっしーは桜田君のことが好きってこと?」
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