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失った恋
失った恋③
しおりを挟むここまで来たら変に嘘をついたところでいずれ兼にバレる。
それなら一層のこと全て話してしまってった方が彼に誠実さを見せることができるんじゃないだろうか。
「ごめん、嘘ついた。兼の友達がい云うその日に会ってた人知らない人だし、前日に…寝たよ。俺の恋愛対象は男だし週末になると男と遊ぶなんてよくあることで·····」
「と·····友達にまでお前もホモなんじゃないのって言われて僕·····椿先輩に誤解されたらどうしてくれるんですかっ」
震えているのを分かるほど兼の両掌は強く握られ、顔を真っ赤にしている。
目を開いて兼を見るのが苦しいほど胸が締め付けられる想いでいた。
兼もやはり偏見のある人だったんだと思うとショックだった。
「ごめん。迷惑かけて…」
ただ謝ることしかできない。兼の願いを叶えてあげたかった。
傍で見守ってやれるだけでよかった。
「·····もう、いいです。では·····」
「待って…」
これ以上の深追いをしてはいけないことは頭で判っているのに、これで終わりにしたくない心は兼の手を掴んで引き止めていた。まだ決まったわけじゃない。もし0.01パーセントでも望みがあるなら·····。
「こんなことしてるけど俺さ、兼のことが好きなんだ。本当にどうしようもなく好きだから。兼が嫌だったらそういうのも辞めるしさ。だから椿なんかやめてっ·····」
掴んでいた手が振り払われた瞬間に左頬が痛んだ。
兼に頬を叩かれた。
優作は鳩が豆鉄砲を食らったように目を見開く。
「よくそんなこと言えますね。気持ち悪い。僕に近づかないでください」
瞳に涙を浮かべながら言い放つと兼は屋上から去ってしまった。
兼に叩かれた頬が痛む。初めて兼に触れられたのがビンタなんて笑えない。
笑えないのに痛みを辿って兼の温もりを探している自分が虚しい。
今まで適当に遊んで、付き合ったとしても振るほう。振られたなんて初めてだった。
その場に立っていることもままならなくなり、膝を抱えてしゃがんで蹲る。
泣きたいのに涙がでなかった。
俺なんかに本当に恋ができるわけなんかなかったのに馬鹿だよな。
苦しい、今すぐに忘れたい……。
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