30 / 140
悟る想いと俺の初恋
悟る想いと俺の初恋⑥
しおりを挟む
黙々と問題を解いては、試験科目が終了し次の科目までの休憩時間になった。
優作は密かに後ろの男を意識して話しかけてくるのを待っていたが、「いいだあー」と言いながら友人であろう眼鏡の男を追いかけるように教室を出て行ってしまった。
先ほどの言動が新種のナンパであったら、隙間時間にでも男が口説きにくるかと思ったが、それも優作の思い違いに変わる。少しホッとしたような、久々の同年代との触れ合いに期待してガッカリしたような気持ちになる。
そんな試験も最後の科目を迎え、得意科目の数学だった優作は試験時間を余らせ、残り十五分は顔を伏せて眠りに着くほど余裕があった。試験終了のチャイムが鳴り、一斉に答案用紙が回収される。全ての答案用紙を集め終え、試験官の先生が出ていくと急に教室が騒がしくなり始めた。ほかの奴らは仲良いもの同士でテストの手応えについて話しているのだろう。手応えも何も勉強に関して自信しかない優作は他人と不安を分かち合うなんて傷の舐め合いみたいなものは要らない。
「君、ありがとう」
優作は筆記用具を筆入れに仕舞っていると後ろから肩を叩かれ消しゴムが視界に入ってきた。
男を意識していたのは最初の時間だけで貸していたことなどすっかり忘れていたので、不意の出来事に身体をビクリと震わせ、後ろを見遣ると平常心で満面の笑顔で渡された消しゴムを受け取る。
「ああ、どうも」
「俺、吉岡千晃。もし受かったらよろしくね」
また会うどうかも分からない奴によく自己紹介できるよなー…など関心していると、それだけを言い残して
男は颯爽と座席を立ち上がって行ってしまった。
自分に話し掛けてくるのは、大体色恋目当ての奴ばかりで感覚が麻痺してしまっていたのだろう。
どう考えたって受験しに来ているのであって、ナンパをしにきているわけじゃない。
自分の自意識過剰さに恥ずかしくなった。
でも初対面にも関わらずに、理解不能な言葉を言ってくるし、自己紹介してくる男が
優作にとって今まで出会ったことないパターンの人間なだけに面白くて控え目にお腹を抱えて笑った。
月日は流れ、無事に高校に受かり、入学式を終える。
クラス表を確認すると自分の爆笑へと導いた吉岡千晃という男も同じクラスだった。
だからと言って特別な変化が起こるわけでもなく、入学してからも優作の生活スタイルは変わることはなかった。
登校初日から偶に来たと思えば、すぐ帰ったりを繰り返す。
それほど優作にとって学校は退屈で居心地の悪い場所だった。
吉岡の存在は気になってはいたが、積極的に深入りしてまで仲良くなりたいとは思わなかった。
それに、吉岡はというとかなり社交的なのかすぐ友人を作っては特定の奴とつるんでいた。
いつも笑顔でいて誰からも親しまれそうな自分と正反対の男。
そんなある日、吉岡が階段で校内一の美女、椿に告白している場面を見つけた。
「あの、椿さん。俺、やっぱり椿さんのことが好きです。付き合ってください」
「ありがとう、ごめんね。君をそういう目ではみれないんだ。今までありがとう」
椿は顔色をひとつも変えず、そう言い放っては階段を降りていっていた。
吉岡はというと、突っ立ったまま動かない。
ただ直感的にこの吉岡という男なら自分の性癖に突っかかってくる男ではないように感じた。
それに周りの色目を使ってくる奴らと違う。今の告白現場で彼がノンケであることも確信した。
優作は好奇心から気がついたら彼に声を掛けていた。
優作は密かに後ろの男を意識して話しかけてくるのを待っていたが、「いいだあー」と言いながら友人であろう眼鏡の男を追いかけるように教室を出て行ってしまった。
先ほどの言動が新種のナンパであったら、隙間時間にでも男が口説きにくるかと思ったが、それも優作の思い違いに変わる。少しホッとしたような、久々の同年代との触れ合いに期待してガッカリしたような気持ちになる。
そんな試験も最後の科目を迎え、得意科目の数学だった優作は試験時間を余らせ、残り十五分は顔を伏せて眠りに着くほど余裕があった。試験終了のチャイムが鳴り、一斉に答案用紙が回収される。全ての答案用紙を集め終え、試験官の先生が出ていくと急に教室が騒がしくなり始めた。ほかの奴らは仲良いもの同士でテストの手応えについて話しているのだろう。手応えも何も勉強に関して自信しかない優作は他人と不安を分かち合うなんて傷の舐め合いみたいなものは要らない。
「君、ありがとう」
優作は筆記用具を筆入れに仕舞っていると後ろから肩を叩かれ消しゴムが視界に入ってきた。
男を意識していたのは最初の時間だけで貸していたことなどすっかり忘れていたので、不意の出来事に身体をビクリと震わせ、後ろを見遣ると平常心で満面の笑顔で渡された消しゴムを受け取る。
「ああ、どうも」
「俺、吉岡千晃。もし受かったらよろしくね」
また会うどうかも分からない奴によく自己紹介できるよなー…など関心していると、それだけを言い残して
男は颯爽と座席を立ち上がって行ってしまった。
自分に話し掛けてくるのは、大体色恋目当ての奴ばかりで感覚が麻痺してしまっていたのだろう。
どう考えたって受験しに来ているのであって、ナンパをしにきているわけじゃない。
自分の自意識過剰さに恥ずかしくなった。
でも初対面にも関わらずに、理解不能な言葉を言ってくるし、自己紹介してくる男が
優作にとって今まで出会ったことないパターンの人間なだけに面白くて控え目にお腹を抱えて笑った。
月日は流れ、無事に高校に受かり、入学式を終える。
クラス表を確認すると自分の爆笑へと導いた吉岡千晃という男も同じクラスだった。
だからと言って特別な変化が起こるわけでもなく、入学してからも優作の生活スタイルは変わることはなかった。
登校初日から偶に来たと思えば、すぐ帰ったりを繰り返す。
それほど優作にとって学校は退屈で居心地の悪い場所だった。
吉岡の存在は気になってはいたが、積極的に深入りしてまで仲良くなりたいとは思わなかった。
それに、吉岡はというとかなり社交的なのかすぐ友人を作っては特定の奴とつるんでいた。
いつも笑顔でいて誰からも親しまれそうな自分と正反対の男。
そんなある日、吉岡が階段で校内一の美女、椿に告白している場面を見つけた。
「あの、椿さん。俺、やっぱり椿さんのことが好きです。付き合ってください」
「ありがとう、ごめんね。君をそういう目ではみれないんだ。今までありがとう」
椿は顔色をひとつも変えず、そう言い放っては階段を降りていっていた。
吉岡はというと、突っ立ったまま動かない。
ただ直感的にこの吉岡という男なら自分の性癖に突っかかってくる男ではないように感じた。
それに周りの色目を使ってくる奴らと違う。今の告白現場で彼がノンケであることも確信した。
優作は好奇心から気がついたら彼に声を掛けていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる