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悟る想いと俺の初恋
悟る想いと俺の初恋⑥
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黙々と問題を解いては、試験科目が終了し次の科目までの休憩時間になった。
優作は密かに後ろの男を意識して話しかけてくるのを待っていたが、「いいだあー」と言いながら友人であろう眼鏡の男を追いかけるように教室を出て行ってしまった。
先ほどの言動が新種のナンパであったら、隙間時間にでも男が口説きにくるかと思ったが、それも優作の思い違いに変わる。少しホッとしたような、久々の同年代との触れ合いに期待してガッカリしたような気持ちになる。
そんな試験も最後の科目を迎え、得意科目の数学だった優作は試験時間を余らせ、残り十五分は顔を伏せて眠りに着くほど余裕があった。試験終了のチャイムが鳴り、一斉に答案用紙が回収される。全ての答案用紙を集め終え、試験官の先生が出ていくと急に教室が騒がしくなり始めた。ほかの奴らは仲良いもの同士でテストの手応えについて話しているのだろう。手応えも何も勉強に関して自信しかない優作は他人と不安を分かち合うなんて傷の舐め合いみたいなものは要らない。
「君、ありがとう」
優作は筆記用具を筆入れに仕舞っていると後ろから肩を叩かれ消しゴムが視界に入ってきた。
男を意識していたのは最初の時間だけで貸していたことなどすっかり忘れていたので、不意の出来事に身体をビクリと震わせ、後ろを見遣ると平常心で満面の笑顔で渡された消しゴムを受け取る。
「ああ、どうも」
「俺、吉岡千晃。もし受かったらよろしくね」
また会うどうかも分からない奴によく自己紹介できるよなー…など関心していると、それだけを言い残して
男は颯爽と座席を立ち上がって行ってしまった。
自分に話し掛けてくるのは、大体色恋目当ての奴ばかりで感覚が麻痺してしまっていたのだろう。
どう考えたって受験しに来ているのであって、ナンパをしにきているわけじゃない。
自分の自意識過剰さに恥ずかしくなった。
でも初対面にも関わらずに、理解不能な言葉を言ってくるし、自己紹介してくる男が
優作にとって今まで出会ったことないパターンの人間なだけに面白くて控え目にお腹を抱えて笑った。
月日は流れ、無事に高校に受かり、入学式を終える。
クラス表を確認すると自分の爆笑へと導いた吉岡千晃という男も同じクラスだった。
だからと言って特別な変化が起こるわけでもなく、入学してからも優作の生活スタイルは変わることはなかった。
登校初日から偶に来たと思えば、すぐ帰ったりを繰り返す。
それほど優作にとって学校は退屈で居心地の悪い場所だった。
吉岡の存在は気になってはいたが、積極的に深入りしてまで仲良くなりたいとは思わなかった。
それに、吉岡はというとかなり社交的なのかすぐ友人を作っては特定の奴とつるんでいた。
いつも笑顔でいて誰からも親しまれそうな自分と正反対の男。
そんなある日、吉岡が階段で校内一の美女、椿に告白している場面を見つけた。
「あの、椿さん。俺、やっぱり椿さんのことが好きです。付き合ってください」
「ありがとう、ごめんね。君をそういう目ではみれないんだ。今までありがとう」
椿は顔色をひとつも変えず、そう言い放っては階段を降りていっていた。
吉岡はというと、突っ立ったまま動かない。
ただ直感的にこの吉岡という男なら自分の性癖に突っかかってくる男ではないように感じた。
それに周りの色目を使ってくる奴らと違う。今の告白現場で彼がノンケであることも確信した。
優作は好奇心から気がついたら彼に声を掛けていた。
優作は密かに後ろの男を意識して話しかけてくるのを待っていたが、「いいだあー」と言いながら友人であろう眼鏡の男を追いかけるように教室を出て行ってしまった。
先ほどの言動が新種のナンパであったら、隙間時間にでも男が口説きにくるかと思ったが、それも優作の思い違いに変わる。少しホッとしたような、久々の同年代との触れ合いに期待してガッカリしたような気持ちになる。
そんな試験も最後の科目を迎え、得意科目の数学だった優作は試験時間を余らせ、残り十五分は顔を伏せて眠りに着くほど余裕があった。試験終了のチャイムが鳴り、一斉に答案用紙が回収される。全ての答案用紙を集め終え、試験官の先生が出ていくと急に教室が騒がしくなり始めた。ほかの奴らは仲良いもの同士でテストの手応えについて話しているのだろう。手応えも何も勉強に関して自信しかない優作は他人と不安を分かち合うなんて傷の舐め合いみたいなものは要らない。
「君、ありがとう」
優作は筆記用具を筆入れに仕舞っていると後ろから肩を叩かれ消しゴムが視界に入ってきた。
男を意識していたのは最初の時間だけで貸していたことなどすっかり忘れていたので、不意の出来事に身体をビクリと震わせ、後ろを見遣ると平常心で満面の笑顔で渡された消しゴムを受け取る。
「ああ、どうも」
「俺、吉岡千晃。もし受かったらよろしくね」
また会うどうかも分からない奴によく自己紹介できるよなー…など関心していると、それだけを言い残して
男は颯爽と座席を立ち上がって行ってしまった。
自分に話し掛けてくるのは、大体色恋目当ての奴ばかりで感覚が麻痺してしまっていたのだろう。
どう考えたって受験しに来ているのであって、ナンパをしにきているわけじゃない。
自分の自意識過剰さに恥ずかしくなった。
でも初対面にも関わらずに、理解不能な言葉を言ってくるし、自己紹介してくる男が
優作にとって今まで出会ったことないパターンの人間なだけに面白くて控え目にお腹を抱えて笑った。
月日は流れ、無事に高校に受かり、入学式を終える。
クラス表を確認すると自分の爆笑へと導いた吉岡千晃という男も同じクラスだった。
だからと言って特別な変化が起こるわけでもなく、入学してからも優作の生活スタイルは変わることはなかった。
登校初日から偶に来たと思えば、すぐ帰ったりを繰り返す。
それほど優作にとって学校は退屈で居心地の悪い場所だった。
吉岡の存在は気になってはいたが、積極的に深入りしてまで仲良くなりたいとは思わなかった。
それに、吉岡はというとかなり社交的なのかすぐ友人を作っては特定の奴とつるんでいた。
いつも笑顔でいて誰からも親しまれそうな自分と正反対の男。
そんなある日、吉岡が階段で校内一の美女、椿に告白している場面を見つけた。
「あの、椿さん。俺、やっぱり椿さんのことが好きです。付き合ってください」
「ありがとう、ごめんね。君をそういう目ではみれないんだ。今までありがとう」
椿は顔色をひとつも変えず、そう言い放っては階段を降りていっていた。
吉岡はというと、突っ立ったまま動かない。
ただ直感的にこの吉岡という男なら自分の性癖に突っかかってくる男ではないように感じた。
それに周りの色目を使ってくる奴らと違う。今の告白現場で彼がノンケであることも確信した。
優作は好奇心から気がついたら彼に声を掛けていた。
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