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隠せない心
隠せない心③
しおりを挟む「顔に出てるって…そんなつもりじゃ」
千晃は両手で自らの頬をぺたぺたと触ったり、引っ張って伸ばしたりして首を傾げる。
飯田から見て気づかれる程に自分はわかり易い表情をしているのだろうか。
それとも飯田が特殊能力でも持っていて俺の心も身体も丸裸に暴くことができるのか…。
そんなことを考えていたら急に恥ずかしくなり、「もしかして…飯田くん…キャッ、エッチぃー」と両手を交差して胸元を隠すと身を捩らせた。
三人の中では一番賢い飯田なら有り得なくもないが、半分冗談のつもりでおちゃらけると、「何言ってんだ」と言いたげに眉間に皺を寄せ、口元を歪められ直ぐに「冗談だよ」と訂正する。
「知ってる。どうせ俺の事超能力でも使って心読まれたとでも思ったんだろ」
「さっすがー。分かってるぅー」
勿論、飯田がその手の特殊能力を持っていないことは承知しているし、中学校からの馴染みからか、飯田とはこんな茶番は日常茶飯事で慣れたものだった。
「千晃ってさあ、桜田待ってる時の方が明らかに楽しそうだろ」
「ふぇ?」
本日2回目のふぇ?
優作を待っている時、楽しそうなのは否定できなかった。毎昼休みの楽しみでもあったし、忠犬の様にわんわんと彼の後ろについて歩くのは嫌じゃない。
それに、ここ最近は自ら構わないし、声を掛けても構って貰えないのは分かっているから少しばかり味気ない気はしていた。
そんな話をしていると、廊下を覗ける大窓越しに当の本人が横切ったのが見えた。
今から篠塚の所にでも行くのだろうか·····。
気になる·····。
「桜田通ったけど」
飯田も優作が廊下を過ぎた所を見ていたのか、窓の外を目線で指すと「行かないの?」とでも言うように訴えかけてきた。
「ちょっと·····行ってくる·····」
飯田に後押しされて、どうしても気掛かりだった千晃は席を立っては教室を出る。
勿論、優作を出るためだが具体的にどうするかなんて決まってない。ただ勢いで追いかけるまでだが、自然と足早になっていた。
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