交わらない心

なめめ

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隠せない心

隠せない心②

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行けると思ったのっ?って…。
辻本からの胸にぐさりと刺さる言葉を真っ向から受けて、内心落ち込んではいるが、気まずさからしらけるよりはマシだ。爆笑してくれた方がまだ救われる。
それくらいあの時の自分は無謀で、勘違い野郎の馬鹿野郎だった。

「そんなに笑わなくていいじゃん。あの時はマジだったの」

「よっしーってやっぱりおもしろっ。やべっトイレ我慢してたの漏らしそうだわっ」



目元の涙を拭いながら爆笑した後、飯田に「さっさと行ってこい」と手の甲で払われると颯爽と座席を立ち上がり、お手洗いのある方向へと走って行った。
確かにみゆゆしかり椿しかり、男の気持ちを誑かすような小悪魔な女性に惹かれる傾向はある。
どこをどう行き着いて優作へと恋の矢印が向いてしまったのか不思議ではあるけど、彼が恋を自覚し顔を真っ赤にしている姿は可愛らしいくて、抱き締めたくなる。

だっ抱きしめたくなる……!?

ダメだ……ダメだ…優には好きな人がいるし、そもそも俺が想ったところで彼のタイプでもなんでもない。
金魚の糞程度の存在。


先ほどの動画の続きを眺めながら、自分の中で咄嗟に出た言葉に驚いては首を大きく振り、自問自答を繰り返す。
ふと飯田の机に置かれたタブレットから視線を上げると飯田の視線はタブレットではなく、俺に向けられていた。

「桜田に振られでもした?」
「ふぁい?」

鋭く向けられた視線にそう問われて、自然と背筋が伸びたと同時に動揺で声が上擦る。

「いつも千晃、桜田待ってんのに最近俺らと一緒じゃん?」


優作が篠塚と連絡をとるようになってから、彼が学校に来ていても別々の行動をするようになった。
教室に来ても昼になるとすぐさま出て行く優作に挨拶程度はしても自ら声を掛けにはいかない。
それは千晃なりに出した最良の手段だからだ。

自ら関わろうとしなくてもこんな状態なのに、優と接してしまったら自分はどうなってしまうのだろうか。
篠塚の存在に嫉妬して、醜い姿を優に晒してしまうのであれば自分の気持ちに折り合いをつけるまで離れていた方がいい。

「いや…それはねぇ?優にも優の都合があるっていうか…」


「あー恋人ができたから相手にされなくなった感じ?」
「別に相手にされなくなったわけじゃないよ。いや、でも半分あってるのか…。いやいやいや、つか飯田喧嘩売ってる?」


問い掛けのニュアンスに鋭さを感じながら、的を射ているだけに完全に否定もしきれない。
飯田とて喧嘩を売る気など毛頭もないだろが、今の千晃には余裕などなかった。
かと言って辻本や飯田に軽々しく話せる話題でもない。


「別に。喧嘩を売るも何も千晃って分かりやすく顔に出るタイプじゃん。俺は気にしないけど、そういうマイノリティー」


そんなオランダ発祥のウサギの女の子のキャラクターのような頑な口でいることを心に決めていたのにも拘らず、
飯田はいとも簡単に千晃の心を見抜いていく。
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