交わらない心

なめめ

文字の大きさ
上 下
19 / 140
嫉妬心と恋心

嫉妬心と恋心③

しおりを挟む
高揚して余韻に浸っている姿を黙って隣で見ている事しかできない。

何か、声をかけなければならないのに『篠塚は優作を利用してるだけだよ』だとか
『篠塚は椿のことしか見てないから優が入ったって優が苦しむだけだよ』とか篠塚をひたすら否定する言葉がでてくる。

「優、良かったじゃん·····」

「あぁ…」

漸く振り絞って出てきた言葉は当たり障りのない言葉。
今までにないくらい生き生きとした表情をしている彼を見てこんな酷い言葉は出せなかった。
かといって千晃自身、盛大に祝う気持ちにもなれない。

篠塚が優を利用しているのがみえみえだから?これが他の人だったら自分はモヤモヤしなかった·····?

優作は赤面させて嬉しいはずなのに、言葉と表情が一致していない素っ気ない返事をしてみせた。
そんな恋をしている優作が皮肉にも可愛く思える。

優とのいつもの帰り道のはずなのに妙に空気が重たく感じながらも並んで歩いてはこの複雑な感情のやり場に困惑していた。多分、優自身は幸せいっぱいだから重たく感じているのは自分だけ。
他人の幸せにただ、嫉妬しているだけと思いたい。

帰り道、喋っているのは自分の方だし優作は相槌打つくらいで通常運転だ。彼の上機嫌以外は。
バスの停留所まで着き、優作と並んで待つ。


「優、こんなこと言うことじゃないけどさ、
あの子、優に興味あるんじゃなくて椿さんに興味あるんじゃないかな?」

優作の横顔を眺めながら、腹の底から沸き立つ黒い渦を自分の中に留めておくことが出来ず
ちょっとした意地悪心から問いかけてみた。
この問いに優作はなんて答えるだろうか。がっかりするだろうか。それともとっくに理解しているのだろうか。
全部の意識を彼の口元に集中し、答えを待つ。


「知ってる。そもそも初めてあったの告白現場だし」


やはり、感の鋭い優作は気づいていた。


「それに。可能性はなくても…兼に近づけるきっかけが出来たことは嬉しいから」
「そっか·····」

意外と控えめな返答が返ってきて驚いたと同時に虚しくなり、優作は本当に恋をしてるんだと身に染みては返す言葉が見つからない。こんな意地悪い質問をした自分に罪悪感を感じた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

フルチン魔王と雄っぱい勇者

ミクリ21
BL
フルチンの魔王と、雄っぱいが素晴らしい勇者の話。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...