交わらない心

なめめ

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知り合い以上友達未満

知り合い以上友達未満④

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「これくらいで足りる?」


驚きで言葉を失っている、千晃に対してきょとん顔をして問うてくる。

「えっ?えっ?足りるも何も多いくらいだけど」
「あーじゃあいいや。まんまやるよ。いつも奢ってもらってるし」


単なる優作の気まぐれか、それとも本当にお詫びのつもりで渡してきているのか。
今までの彼の行動から、後者の考えは線は高確率であり得ない。

ならば気まぐれの線も無きにしも非ずではあるが、優作のことだから何か裏があるのではないかと
勘繰ってしまう。


「優。もしかして、カレーに毒でも入ってた?」

「はあっ!?なわけあるかよ。そんなこと言ったらお前の恋人の学食のおばさんに失礼だろ」

「確かにそうだけど…って恋人って」


優しい学食のおばさんに限ってそれでこそあり得ないし、あったとしたら大問題だ。
軽く冗談半分で言ってみただけだったが、思わぬ変化球を食らった。


「いっつも楽しそうに話してんじゃん」

「話してるけども…なんでそーなるかな。というか、恋人だって揶揄う優こそ、どっちが失礼だって話だよ」


必死におばさんとの関係を否定し、怒った千晃が余程面白かったのか、優作は口元を押させて控え目に笑う。
皮肉り合っていても優作からもらった初めての500円玉に特別感を感じて、千晃はそっと胸元の生徒手帳に挟んでしまうことにした。特に深い意味はないのにこんな喜々としてしまうのは、なぜだろうか…。


笑いがひと段落して、再び食事に集中する優作に時折目線を向けながらもスマホを弄って食事が終わるのを
待っていた。



「あの子いるね」

暫くして切り出したのは千晃の方からだった。
本当は自分から話題を振ってやるつもりはなかったが、匙を手にしながらも優作の意識が青年へと向いている
ことが嫌でも分かったからだ。顔を向けて視線を送ることを拒んでいても、目線は向きたいと訴えっているように
右の方へと瞳をキョロキョロと動かしている。このまま気づかないフリしてやり過ごそうと思っても、優作の仕草が気になって放っておくことはできなかった。

案の定、例の彼のことを話題にあげると眉がピクリと上がり、反応を示す優作が、痛いほど分かりやすくて皮肉にも可愛くみえてしまう。

「あの子って…?」

「優の一目惚れした子」

「…!?げほっ…げほっげほ…はぁ!?」

普段は何事にも関心が薄くて無表情であることの方が多いのに、手に取って分かるように動揺してる。





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