1 / 140
プロローグ
プロローグ①
しおりを挟む
人の心は日々移りゆくものだ。
「あの、椿さん。やっぱり俺、椿さんのことが好きです。付き合ってください」
高校一年生の初夏。誰もいない放課後の静かな校舎内の階段の踊り場。彼女を呼び止めた俺は意を決して告白した。
第二校舎だから第三者に見られる心配もないし、邪魔されることもない。入学当初から学年一と噂され、親衛隊なるものまで出来ているという、椿理友菜に告白するには絶好の場所だ。
長く緩く巻かれた髪に人形みたいに大きくクリっとした瞳。
男たちは誰もがあの瞳に見つめられるのを憧れ、挑んだものも数知れない。
そして、今彼女の男心を揺さぶる潤んだ瞳を捕らえているのは紛れもなく俺だ。
無謀だと分かっていても、体育祭の委員会で彼女と一緒になり、彼女の愛らしい姿を至近距離で眺めているうちに意図も簡単に落ちてしまった吉岡千晃はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。
美少女だと陰ながら憧憬されている反面、小悪魔だという噂もある。
ドキドキを誘うようなボディタッチ。
仲良くなった途端に毎日返してくれるメッセージ。
期待させるような言葉。
自分は確実に彼女の恋愛対象になっていると信じて疑わなかった。
向かい合う彼女は一瞬だけ天井を仰ぐと両手指を前に組んで千晃の瞳を捉えるとニコリと柔らかく微笑んできた。
「ありがとう。君には悪いんだけど、君を男の子としてみたこと一度もないんだ」
彼女の柔らかい笑顔に油断していた。
自分は彼女にたった今振られた……。
状況の整理がつかないうちに彼女は「今までありがとう」という言葉だけ残して階段を下りていく。
遠ざかる背中に合わせるように一定のリズムを刻み、揺れる長い髪。
期待し、浮ついた心から奈落に突き落とされた気分になり、その場から一歩も動けない。
なのに彼女のうしろ姿は憎らしいほど綺麗で、輝きを放っていた。
高校に入って初めて訪れた春はあまりにも残酷で微かな期待をするものではなかった。
「あの、椿さん。やっぱり俺、椿さんのことが好きです。付き合ってください」
高校一年生の初夏。誰もいない放課後の静かな校舎内の階段の踊り場。彼女を呼び止めた俺は意を決して告白した。
第二校舎だから第三者に見られる心配もないし、邪魔されることもない。入学当初から学年一と噂され、親衛隊なるものまで出来ているという、椿理友菜に告白するには絶好の場所だ。
長く緩く巻かれた髪に人形みたいに大きくクリっとした瞳。
男たちは誰もがあの瞳に見つめられるのを憧れ、挑んだものも数知れない。
そして、今彼女の男心を揺さぶる潤んだ瞳を捕らえているのは紛れもなく俺だ。
無謀だと分かっていても、体育祭の委員会で彼女と一緒になり、彼女の愛らしい姿を至近距離で眺めているうちに意図も簡単に落ちてしまった吉岡千晃はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。
美少女だと陰ながら憧憬されている反面、小悪魔だという噂もある。
ドキドキを誘うようなボディタッチ。
仲良くなった途端に毎日返してくれるメッセージ。
期待させるような言葉。
自分は確実に彼女の恋愛対象になっていると信じて疑わなかった。
向かい合う彼女は一瞬だけ天井を仰ぐと両手指を前に組んで千晃の瞳を捉えるとニコリと柔らかく微笑んできた。
「ありがとう。君には悪いんだけど、君を男の子としてみたこと一度もないんだ」
彼女の柔らかい笑顔に油断していた。
自分は彼女にたった今振られた……。
状況の整理がつかないうちに彼女は「今までありがとう」という言葉だけ残して階段を下りていく。
遠ざかる背中に合わせるように一定のリズムを刻み、揺れる長い髪。
期待し、浮ついた心から奈落に突き落とされた気分になり、その場から一歩も動けない。
なのに彼女のうしろ姿は憎らしいほど綺麗で、輝きを放っていた。
高校に入って初めて訪れた春はあまりにも残酷で微かな期待をするものではなかった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる