101 / 101
Broken Flower2
Broken Flower2 ⑤
しおりを挟む
慎文さんに問われてしまった以上は、もう他人で押し通すことは不可能になってしまった。だからと言って正直に男との関係を話したくはない。
友達、先輩後輩?どちらにせよ、この男を自分の中のカテゴリーのどれにも位置づけをしたくはなかった。
「慎文さん、内緒にしててすみません。高校が一緒でその……大藪くんとは知り合いだったんです……」
葵の様子をチラチラと伺いながらも、慎文さんの返答に応えたのは男の方だった。亨が喋り出した途端に、過去のことを洗いざらい暴露されるのではないかと危惧していたが、彼が口にしたのは前者でも後者でもなく「知り合い」の四文字であったことに安堵する。友達でも先輩後輩程の深い中でもない単なる顔見知りの仲を示す言葉。
「そうだったんだあー。なんだ、早く言ってよー。葵くんって友達居ないって言うけどこの前も江藤くんとか言う子来てたよね。なら話、早いね。葵くんが着替え終わったらバトンタッチしようか」
「いや、そのまま慎文さんが彼に教えてあげてください…僕は配達の準備を手伝うので……」
亨の返答で納得した慎文さんだったが、思いもよらない変化球を投げられて
動揺しながらも必死に回避案を出した。この男と二人きりなど冗談じゃない。
男と過ごしたあの学校のことを思い出したくもない葵にとっては、何としてでも避けたかった。
「配達は俺がやるから任せてよ、いつも葵君に頼んでばかりだし。亨くんだって年近い子に教えてもらった方がいいでしょ?」
「お、俺は大藪くんが忙しいなら……慎文さんのままで……構わないです……」
前髪を摘まんで弄りながら、目線を泳がせて引き下がってくる男の傍らで「そんなこと言わないで、ね?」と何やら亨に目配せをして同意を求めている慎文さんに違和感を覚えていると慎文さんの念押しに根負けしたのか、男は小さく頷いた。
「葵くんもいいよね?」
そうと決まればというように男の肩を叩き、葵の元で近づいてきた慎文さんは同様に同意を求めてきた。本心では良くなどないが、露骨に嫌がるわけにもいかない。あくまでアルバイトに入った男なのだからこの先も関わらずにはいられないことは葵も頭で分かっていた。
表面上だけでいい、ただ業務を教えればいいだけ。私情を挟む必要などない。
葵は聴こえるか聴こえないか程の小さな溜息を吐き、「分かりました」と返事をした。
友達、先輩後輩?どちらにせよ、この男を自分の中のカテゴリーのどれにも位置づけをしたくはなかった。
「慎文さん、内緒にしててすみません。高校が一緒でその……大藪くんとは知り合いだったんです……」
葵の様子をチラチラと伺いながらも、慎文さんの返答に応えたのは男の方だった。亨が喋り出した途端に、過去のことを洗いざらい暴露されるのではないかと危惧していたが、彼が口にしたのは前者でも後者でもなく「知り合い」の四文字であったことに安堵する。友達でも先輩後輩程の深い中でもない単なる顔見知りの仲を示す言葉。
「そうだったんだあー。なんだ、早く言ってよー。葵くんって友達居ないって言うけどこの前も江藤くんとか言う子来てたよね。なら話、早いね。葵くんが着替え終わったらバトンタッチしようか」
「いや、そのまま慎文さんが彼に教えてあげてください…僕は配達の準備を手伝うので……」
亨の返答で納得した慎文さんだったが、思いもよらない変化球を投げられて
動揺しながらも必死に回避案を出した。この男と二人きりなど冗談じゃない。
男と過ごしたあの学校のことを思い出したくもない葵にとっては、何としてでも避けたかった。
「配達は俺がやるから任せてよ、いつも葵君に頼んでばかりだし。亨くんだって年近い子に教えてもらった方がいいでしょ?」
「お、俺は大藪くんが忙しいなら……慎文さんのままで……構わないです……」
前髪を摘まんで弄りながら、目線を泳がせて引き下がってくる男の傍らで「そんなこと言わないで、ね?」と何やら亨に目配せをして同意を求めている慎文さんに違和感を覚えていると慎文さんの念押しに根負けしたのか、男は小さく頷いた。
「葵くんもいいよね?」
そうと決まればというように男の肩を叩き、葵の元で近づいてきた慎文さんは同様に同意を求めてきた。本心では良くなどないが、露骨に嫌がるわけにもいかない。あくまでアルバイトに入った男なのだからこの先も関わらずにはいられないことは葵も頭で分かっていた。
表面上だけでいい、ただ業務を教えればいいだけ。私情を挟む必要などない。
葵は聴こえるか聴こえないか程の小さな溜息を吐き、「分かりました」と返事をした。
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる