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フラワー大藪
フラワー大藪 13-4
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「まあな。なかなかいないだろ?俺は一目ぼれした時から彼女一筋なわけよ。
だから予めレストラン予約しててさ、先に花束とプレゼントを預かってもらって、食事をしてケーキを出すタイミングで花束も一緒に渡したら感動するだろーなって思ったわけよ」
星野はこれから彼女と過ごすであろう誕生日のサプライズ計画をほくそ笑みながら話す姿は終始楽しそうだった。彼女の機嫌の為だとか、お詫びの為だとかで花束を渡していた過去の自分が恥ずかしくなる。
本来であれば大切な人への労いだとか感謝の意を込めて渡すものであるはずなのに。
自分ももう一度、大切な誰かに出会える日がくるならば·····。
星野の愛情深さに関心しつつも、そんな楽しそうな彼の手伝いができるのは幸せを分けてもらえたようで嬉しかった。星野は事前にリサーチしていたのか、
大学の付近に花屋があるというので彼の後についていく。
大学構内を出て、駅とは逆方向へと足を進めては少し歩いて中道に入ったところで、白や黄色、桃色など様々な花が遠目から存在感を示していた。
その様から明らかにその先に花屋があるのだと分かり、店の前であろう道路に白いワゴン車がバックドアを開けて停まっている。
周りはマンションやアパートに囲まれているからこんな所にお店があるなんて気が付かなかった。ましてや花屋など、余程のことがない限り用事はないし……花はある人を思い起こさせるから避けていたこともあった。
花屋を目前として「塩谷、センスあるんだから助けろよ?」なんてそわそわしている星野に適当に相槌を打っていると、店から大きなアレンジメントを抱えた一人の男が出てきた。
荷台に花を乗せ振り返った一瞬の顔を見て、亨の胸が強く締め付けられると同時に深く俯いては慌てて無言で星野のキャップを奪い取る。
「おい、なにすんだよ」
「黙って、お前の帽子貸して」
「なに、どうしたんだよ」
事情が分からず、何度も問うてくる星野を強引に黙らせては、ゆっくりと店の方へと近づいていく。帽子を深く被り、ツバの隙間から前方を再度確認すると荷台前に居る人物は紛れもなく、亨のかつて本気で好きでたまらなかった葵の姿があった。
「あの慎文さん、僕配達行ってくるのでお店、お願いします」
「了解、葵君。いってらっしゃい」
バックドアがパタンと閉められると、店の入り口で作業をしていた従業員の長身の男に声を掛けている。
だから予めレストラン予約しててさ、先に花束とプレゼントを預かってもらって、食事をしてケーキを出すタイミングで花束も一緒に渡したら感動するだろーなって思ったわけよ」
星野はこれから彼女と過ごすであろう誕生日のサプライズ計画をほくそ笑みながら話す姿は終始楽しそうだった。彼女の機嫌の為だとか、お詫びの為だとかで花束を渡していた過去の自分が恥ずかしくなる。
本来であれば大切な人への労いだとか感謝の意を込めて渡すものであるはずなのに。
自分ももう一度、大切な誰かに出会える日がくるならば·····。
星野の愛情深さに関心しつつも、そんな楽しそうな彼の手伝いができるのは幸せを分けてもらえたようで嬉しかった。星野は事前にリサーチしていたのか、
大学の付近に花屋があるというので彼の後についていく。
大学構内を出て、駅とは逆方向へと足を進めては少し歩いて中道に入ったところで、白や黄色、桃色など様々な花が遠目から存在感を示していた。
その様から明らかにその先に花屋があるのだと分かり、店の前であろう道路に白いワゴン車がバックドアを開けて停まっている。
周りはマンションやアパートに囲まれているからこんな所にお店があるなんて気が付かなかった。ましてや花屋など、余程のことがない限り用事はないし……花はある人を思い起こさせるから避けていたこともあった。
花屋を目前として「塩谷、センスあるんだから助けろよ?」なんてそわそわしている星野に適当に相槌を打っていると、店から大きなアレンジメントを抱えた一人の男が出てきた。
荷台に花を乗せ振り返った一瞬の顔を見て、亨の胸が強く締め付けられると同時に深く俯いては慌てて無言で星野のキャップを奪い取る。
「おい、なにすんだよ」
「黙って、お前の帽子貸して」
「なに、どうしたんだよ」
事情が分からず、何度も問うてくる星野を強引に黙らせては、ゆっくりと店の方へと近づいていく。帽子を深く被り、ツバの隙間から前方を再度確認すると荷台前に居る人物は紛れもなく、亨のかつて本気で好きでたまらなかった葵の姿があった。
「あの慎文さん、僕配達行ってくるのでお店、お願いします」
「了解、葵君。いってらっしゃい」
バックドアがパタンと閉められると、店の入り口で作業をしていた従業員の長身の男に声を掛けている。
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