86 / 101
フラワー大藪
フラワー大藪 13-1
しおりを挟む
「あ、あのっ塩谷くん。この監督好きだって言ってたよね。
凄く温かみのある表現をしてて、人だけじゃなくてその街の風景にもこだわってるから·····って。わ、私もっ好きなんだよね」
ふわりと揺れる灰色のウエディングドレスのような生地をあしらっている淡いベージュのスカートに白いパーカー。特別目立つわけでもない、服装通りの少し大人しめの柔らかい雰囲気を纏った彼女。映画同好会の帰り際、部室出て声を掛けられたかと思えば同級生で同好会仲間の雛森小春が映画雑誌を手にして亨の好きな監督の名前を指さして見せてきた。
少し遠く離れたところには彼女の友達であろう女子二人組が此方の様子を伺ってきている。背後でガッツポーズをしては何やら応援している姿をみせているので目の前の彼女は勇気を振り絞って俺に話しかけてきたのだろう。
一、二回だけ言葉を交わした程度で深く仲いいわけではないが、雰囲気は嫌いじゃない。
「へーそうなんだ。いいよね、この監督の作品。俺も持ってるよ、その雑誌」
亨が笑顔でそう雛森に返してやると、彼女の頬がたちまち桃色に染まり、「そっか」と小さく呟いては、その先の会話が続かない。きっと異性との会話に慣れていないのだと思わせる、緊張感にどこか懐かしさを覚える。
「雛森さんは何が好き?」
「わ、私は原作小説が映像化されたやつが好きで·····」
亨は持ち前のコミュニケーション能力でと相手の緊張を解こうと問い掛けると彼女は赤面した顔のまま、たどたどしくも会話に乗ってくれた。
狭い高校生活の中では知ることのなかった世界を大学へ進学して、半年。沢山知れるようになった。集団意識だとか人の妬み嫉みを直に受けることもなくなり、自分と馬が合わない奴は避けることで回避できる。
そして、男女隔てなくこうして好きなものを通して様々な人と触れ合い、様々な価値観を見出せるのは、純粋に楽しい。同じものを見ているはずなのに人によって見方が違うのも面白かった。
「あの、塩谷君。今度この監督の映画·····」
「おい、しーおや。何話してんだよっ」
雛森と映画の話に花を咲かせていると、聞き慣れたしゃがれ声と背後から体重を掛けられ、前のめりになる。振り向くと高校からの同級生である星野が雛森と俺を交互に見てはニタニタと笑みを浮かべていた。
凄く温かみのある表現をしてて、人だけじゃなくてその街の風景にもこだわってるから·····って。わ、私もっ好きなんだよね」
ふわりと揺れる灰色のウエディングドレスのような生地をあしらっている淡いベージュのスカートに白いパーカー。特別目立つわけでもない、服装通りの少し大人しめの柔らかい雰囲気を纏った彼女。映画同好会の帰り際、部室出て声を掛けられたかと思えば同級生で同好会仲間の雛森小春が映画雑誌を手にして亨の好きな監督の名前を指さして見せてきた。
少し遠く離れたところには彼女の友達であろう女子二人組が此方の様子を伺ってきている。背後でガッツポーズをしては何やら応援している姿をみせているので目の前の彼女は勇気を振り絞って俺に話しかけてきたのだろう。
一、二回だけ言葉を交わした程度で深く仲いいわけではないが、雰囲気は嫌いじゃない。
「へーそうなんだ。いいよね、この監督の作品。俺も持ってるよ、その雑誌」
亨が笑顔でそう雛森に返してやると、彼女の頬がたちまち桃色に染まり、「そっか」と小さく呟いては、その先の会話が続かない。きっと異性との会話に慣れていないのだと思わせる、緊張感にどこか懐かしさを覚える。
「雛森さんは何が好き?」
「わ、私は原作小説が映像化されたやつが好きで·····」
亨は持ち前のコミュニケーション能力でと相手の緊張を解こうと問い掛けると彼女は赤面した顔のまま、たどたどしくも会話に乗ってくれた。
狭い高校生活の中では知ることのなかった世界を大学へ進学して、半年。沢山知れるようになった。集団意識だとか人の妬み嫉みを直に受けることもなくなり、自分と馬が合わない奴は避けることで回避できる。
そして、男女隔てなくこうして好きなものを通して様々な人と触れ合い、様々な価値観を見出せるのは、純粋に楽しい。同じものを見ているはずなのに人によって見方が違うのも面白かった。
「あの、塩谷君。今度この監督の映画·····」
「おい、しーおや。何話してんだよっ」
雛森と映画の話に花を咲かせていると、聞き慣れたしゃがれ声と背後から体重を掛けられ、前のめりになる。振り向くと高校からの同級生である星野が雛森と俺を交互に見てはニタニタと笑みを浮かべていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる