Broken Flower

なめめ

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突然の…

突然の····· 12-17

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下校中の生徒達の視線を感じながらも瞼を閉じて、屈辱をぐっと堪えては江藤を前にし、頭を垂れる。

「大藪がまだお前のこと好きだと思ってんのか?めでたい奴だな」

葵ともう一度話をしたいが故の必死の願いも虚しく、頭上からおりてきた言葉は無情にも冷めていて、明らかに亨の願いを快諾してくれるような雰囲気ではなかった。頭を上げてみた江藤の表情は、亨のことを見下しているような薄ら笑みを浮かべている。

葵が未だに俺のことを好きでいてくれると思っているから頼んでいるわけじゃない。葵との間に生まれてしまった誤解を解きたかったからだ。
江藤の検討違いの解釈に虫の居所が悪くなる。

「葵の気持ちは葵にしか分かりません。だから俺が勝手に解釈していい話じゃない。だけど、少しの可能性でもあるなら。俺が葵のこと本気で好きだってことを伝えたいだけです」

こんな男に葵への気持ちを告白したところで、いない本人に伝わることなどないと分かっていても言わずにはいられなかった。亨が真剣に話す傍ら、江藤の表情は次第にニヤニヤと何がおかしいのか不敵な笑みを浮かべる一方で、気怠そうに摺り足で此方へと向かってくると、右肩を軽く叩かれた。

「俺さぁ、大藪のこと好きだったの。小学生んときからずっと。だから試験終わったら大藪と付き合うって話になってんだわ。だから邪魔しないでくんね?」

「え……どういうことだ?」
「どういうことって大藪とはもうそういう関係だから」

突然の江藤からの牽制に動揺と共に視界が揺れる。

葵と江藤が付き合う……?
あんなに葵のことを馬鹿にして虐めていた奴のどこがいい……?

江藤に脅されているのではないかと疑心暗鬼になりながら、待ち伏せを止めずにいると見せつけるかのように江藤と葵が指を絡ませて帰っていく後姿を見てしまった。あいつは良くて何で俺には話をすることさえもダメなのか理由がわからぬまま、ただだた指を咥えて眺めていることしかできない。

それから一度も葵と和解ができぬまま秋を越し、冬が過ぎ去り、葵は学校を卒業して行ってしまった。

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