Broken Flower

なめめ

文字の大きさ
上 下
76 / 101
突然の…

突然の····· 12-9

しおりを挟む
「葵、待って·····」

照りつける陽射しに汗を滲ませながらも、と遠ざかる背中を必死に追いかける。葵も長袖のワイシャツでかなり汗だくな筈なのに必死に走りつづけている。そこまでして俺を避けたいのかと心が折れてしまいそうになるが、ここで諦めてしまえば一生葵にちゃんと理解してもらえぬままだ。

西田のことは事実だとしても葵に対する想いは本物であること。金輪際、葵以外の人を愛するつもりはないこと、伝えたい。葵なら分かって貰えるとそう、信じたい·····。

何度も名前を叫びながらも呼び止めるがその声は本人の耳に届いてくれない。

背中を追いかけ、花壇から陸上部がハードル練習をしているグランドを横切り、校舎裏まで辿り着いた時、流石に耐力が消耗してしまったのか、葵が両膝をついてゼェゼェと息を荒立て、整えていた。もう逃げる体力は残されていないと諭した亨ははやる気持ちを抑えながらもゆっくりと葵に近づく。

「葵、話があるんだ。俺の話を聞いてほしい·····」

「ぼ、ぼくに·····近寄らないでくださいっ」

ほんのあと2、3歩進めば葵のその細い腕を掴める距離なのに、掠れそうな大きな声で近寄ることを拒まれてピタリと足を止めた。
汗なのか涙なのか、葵が地面と平行に顔を伏せて居て分からないがポツポツと雨のように水滴が落ちては粗粒砂の地面に滲んでいく。

「西田先生のこと·····正直僕は驚かなかったんです。貴方と西田先生にその様な噂があることは知ってました·····。でも、貴方と過ごして行くうちに·····それは嘘であって欲しいと思っていた自分がいたんです。だから貴方から気持ちが浮かれるような嬉しい言葉を貰った時は本当に嬉しくて、恋人のように振舞って貰えた数日は生まれて初めて生きてて良かったって思えたんです」

昨日の事のように葵と出会った時こと、ファミレスで奢って貰った日のこと、あの花壇で葵と心穏やかな時間を過ごしたことを想起しては胸が酷く締め付けられる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

男色官能小説短編集

明治通りの民
BL
男色官能小説の短編集です。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

甥の性奴隷に堕ちた叔父さま

月歌(ツキウタ)
BL
甥の性奴隷として叔父が色々される話

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...