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葵の嫌いなもの
葵の嫌いなもの 11-2
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葵は着実に自分の未来を見据えて行動に移している。あんなにクラスメイトから邪険に扱われて辛い思いをしている筈なのに、自分の意志は曲げずに強く生きていて、母親想いなところに益々惹かれていく。
「葵って親孝行だよな·····そう言えば、葵のお父さんは·····?」
葵から母親の話はよく耳にしていたが、父親の話は全くと言っていいほどしてこなかっただけに素朴な疑問だった。敢えて触れないようにしているのか、それとも偶々なのか·····。
問い掛けた途端に葵の表情が曇った気がして、もしかして葵の地雷を踏んでしまったのではないかと一瞬で察した亨は「別に話したくないなら·····」と告げたところで、葵が「実は·····」と目を伏せながら口を割った。
「僕、片親なんです。父は·····散々家族を蔑ろにした挙句に·····「俺はお前のことなんか好きじゃなかった、お前に好きだと言われたから付き合って結婚しただけだ。好きな人が出来たから」って母親と僕を置いて出て行ってしまったのが許せなくて·····。それ以来僕、自分の都合のいいように無責任な言い掛かりをつけて大切な人を傷つけるような人が大嫌いなんです」
前を見据えて澄んだ瞳にそう訴えられたとき、淡く熱を浮かされた心に冷水を浴びせられたように肝が冷えていくのが判った。
決して高揚しているわけではなくて、自分自身を見透かされたようなそんな気分。
今までの自分の行いは葵に自信持って話せるほど誠実な行いはしてこなかった。
好きだと言われたから付き合った。相手に対して好きだなんて感情はないから振られようとなんとも思わなかったし、挙句の果てに西田には「そんなに好きじゃなかった」と言い放って別れを告げたことが、正しく葵が嫌いだと言った父親そのものの発言。
亨はコンクリートに手を突いた右手の指を葵に気づかれないようにギュと握りしめた。
指に力を込めていないと葵に嫌われることの動揺で身体が震えて、全てを悟られてしまいそうだった。
「すみません·····こんな話しをしてしまって·····亨くんは反応に困りますよね」
「葵って親孝行だよな·····そう言えば、葵のお父さんは·····?」
葵から母親の話はよく耳にしていたが、父親の話は全くと言っていいほどしてこなかっただけに素朴な疑問だった。敢えて触れないようにしているのか、それとも偶々なのか·····。
問い掛けた途端に葵の表情が曇った気がして、もしかして葵の地雷を踏んでしまったのではないかと一瞬で察した亨は「別に話したくないなら·····」と告げたところで、葵が「実は·····」と目を伏せながら口を割った。
「僕、片親なんです。父は·····散々家族を蔑ろにした挙句に·····「俺はお前のことなんか好きじゃなかった、お前に好きだと言われたから付き合って結婚しただけだ。好きな人が出来たから」って母親と僕を置いて出て行ってしまったのが許せなくて·····。それ以来僕、自分の都合のいいように無責任な言い掛かりをつけて大切な人を傷つけるような人が大嫌いなんです」
前を見据えて澄んだ瞳にそう訴えられたとき、淡く熱を浮かされた心に冷水を浴びせられたように肝が冷えていくのが判った。
決して高揚しているわけではなくて、自分自身を見透かされたようなそんな気分。
今までの自分の行いは葵に自信持って話せるほど誠実な行いはしてこなかった。
好きだと言われたから付き合った。相手に対して好きだなんて感情はないから振られようとなんとも思わなかったし、挙句の果てに西田には「そんなに好きじゃなかった」と言い放って別れを告げたことが、正しく葵が嫌いだと言った父親そのものの発言。
亨はコンクリートに手を突いた右手の指を葵に気づかれないようにギュと握りしめた。
指に力を込めていないと葵に嫌われることの動揺で身体が震えて、全てを悟られてしまいそうだった。
「すみません·····こんな話しをしてしまって·····亨くんは反応に困りますよね」
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