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別れ話
別れ話 10-8
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保健室を後にして静かに教室後方の扉から入っては教室中の注目を浴びているのを気に留めずに真っ先に窓際の自席へと向かった。
席へと向かっている途中で教壇に立っている男性教師が何度と呼び止めてきては、「どこへ行っていた」と叱咤してきたので、正直に西田に呼び出され、縺れ話をしていたとも言えず「具合悪かったので保健室で休んでました」と話すと教室内が一瞬だけどよめいた。
辺りを見渡すと俺と西田のことを面白可笑しく思っている奴らは仲間内で視線を合わせてはニヤニヤしている。
どうせ良からぬ憶測を立てているんだろう。
女子らは「やっぱり塩谷くんって·····」と前後の座席で口元に手を当ててひそひそとしているが、この静かな教室では本人に丸聞こえだった。
そんな不穏な空気を打破するように教師が大袈裟に咳払いをすると顔を顰めながら「今度から申請してから行くように」と釘を打たれては着席を促され授業が再開される。
多少の居心地の悪さを感じながらも、形だけ教科書を取り出しては窓の外を眺めながら今日のお昼のことを考えていた。授業が終わったら真っ先に葵に会いに行こう·····。
心浮つかせている中、静かにゆっくりと前の席の椅子がこちらへと引かれていることに気づくと、亨の机にピッタリと星野の背中がくっついてきた。聴こえるか聴こえないかの声音で「おい、しおやー」と囁かれる。
「お前気をつけた方がいいぞ。お前と西田のこと教員も怪しんでるらしいからさ」
一切振り向くことなく星野はそれだけ呟くと椅子が元の位置へと戻って行った。
星野は忠告のつもりで言ってきたのであろうが、そんなこととっくの昔に気づいている。
だから今まで上手く隠し通してきた訳だし、なんならたった今、お別れしてきたばかりだ。周りがにやけて面白がる程のことなど起こっていない。
途端に俺が別れ話を持ちかけて来ても、途端に縋りついてこようと必死だった西田の表情を思い出しては、寒気がした。
もう一生関わることのない女のことを考えるより葵のことで頭一杯にしたい。
亨はそう思い立つとスマホを机の下に取り出し、メッセージを打っていた。
授業中に送るなんて葵に怒られるかな·····。
「授業中はダメです·····」なんてあの控えめな声で·····それもいいな·····だなんて思いながらもタップする指は弾んでいた。
席へと向かっている途中で教壇に立っている男性教師が何度と呼び止めてきては、「どこへ行っていた」と叱咤してきたので、正直に西田に呼び出され、縺れ話をしていたとも言えず「具合悪かったので保健室で休んでました」と話すと教室内が一瞬だけどよめいた。
辺りを見渡すと俺と西田のことを面白可笑しく思っている奴らは仲間内で視線を合わせてはニヤニヤしている。
どうせ良からぬ憶測を立てているんだろう。
女子らは「やっぱり塩谷くんって·····」と前後の座席で口元に手を当ててひそひそとしているが、この静かな教室では本人に丸聞こえだった。
そんな不穏な空気を打破するように教師が大袈裟に咳払いをすると顔を顰めながら「今度から申請してから行くように」と釘を打たれては着席を促され授業が再開される。
多少の居心地の悪さを感じながらも、形だけ教科書を取り出しては窓の外を眺めながら今日のお昼のことを考えていた。授業が終わったら真っ先に葵に会いに行こう·····。
心浮つかせている中、静かにゆっくりと前の席の椅子がこちらへと引かれていることに気づくと、亨の机にピッタリと星野の背中がくっついてきた。聴こえるか聴こえないかの声音で「おい、しおやー」と囁かれる。
「お前気をつけた方がいいぞ。お前と西田のこと教員も怪しんでるらしいからさ」
一切振り向くことなく星野はそれだけ呟くと椅子が元の位置へと戻って行った。
星野は忠告のつもりで言ってきたのであろうが、そんなこととっくの昔に気づいている。
だから今まで上手く隠し通してきた訳だし、なんならたった今、お別れしてきたばかりだ。周りがにやけて面白がる程のことなど起こっていない。
途端に俺が別れ話を持ちかけて来ても、途端に縋りついてこようと必死だった西田の表情を思い出しては、寒気がした。
もう一生関わることのない女のことを考えるより葵のことで頭一杯にしたい。
亨はそう思い立つとスマホを机の下に取り出し、メッセージを打っていた。
授業中に送るなんて葵に怒られるかな·····。
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